甲子園出場の霞ケ浦が重視する体のケア「選手を壊したら何にもならない」
「球数の基準は絶対に超えないようにしています」
「選手を壊したら何にもならない」と語る高橋監督 【yell sports 茨城】
私学でもエース級の投手を2人擁すことは難しい。でも、われわれはそこを意識してチーム作りを行っています。
――近年、プロ野球に進む投手も輩出しています。技術の指導はもちろんのこと、肩や肘のコンディション面もかなり意識されているのでは?
投手にとって一番大事なのは肩甲骨の可動域。肩甲骨が動かなくなれば肩に負担がかかるし、内側靱帯にも影響を及ぼします。また、上腕二頭筋が固くなれば、筋は引っ張られるので、筋肉の付着部が悲鳴をあげてしまう。そうならないように、初動負荷の機械を導入し、そして肩甲骨体操と股関節体操を入念に行うようにしています。
基本的に中学生では1週間に250球、高校生では1週間で500球以下というのがアメリカでの基本数値となっています。そこを絶対に超えないようにしていますし、実際、そんなに投げさせていません。ウチの場合、1週間で380から400球といったところですね。
――実際、今年の夏の大会はどのぐらいの球数となりましたか?
茨城大会では鈴木が28イニング、山本が23イニングと投げ分けることができました。本来なら、そこに福浦太陽という投手も加わる予定だったのですが、けがをして投げることができませんでした。福浦がいれば、3分割できたと思います。
かつては6試合を1人のエースが投げ切るのが普通でした。でも、肩は消耗品ですからね。前回、甲子園に行った時も綾部翔(横浜DeNAベイスターズ)というエースがいましたが、県大会を通して14イニングしか投げていません。その年は5人の投手で投げ分けることができていました。そこは考えながら投球させています。
「選手を壊したら何にもならない」
少なくとも甲子園を本気で狙って県大会で準決勝以上に進むチームの投手が高校で終わるという感覚が僕にはありません。どの子もさらに上のレベルで活躍して、将来的にはプロになりたいという希望があると思っています。なので、鍛えることも大事ですが、選手を壊してもいけない。そう考えて指導をしています。
――無理をさせず、コンディションを整えることが結果的に良い結果に結びつくということですね。
そうだと思います。基本的に私は選手を壊したら何にもならないと考えています。なので、コンディションづくりを重要視しています。今回、ある主力選手はけがで夏の大会に出場することができませんでした。そのことに関して責任も感じてはいますが、本人にももっと自覚を持ってもらいたいという話をしました。ウチはコンディションに関しては、かなり意識して注意深く取り組んでいます。
当然、アクシデントもあります。そればっかりは仕方ありません。ただ、今回のその選手に関してはストレッチ不足だったり、体のケアに手を抜いてしまうようなことがあったと思います。投げる時は一生懸命でも、その裏でケアをする大切さを欠いたからけがをしてしまったと私は思っています。なので、その点については、彼を責めました。やるべきことを怠った結果です。今後も彼は野球を続けるので、ここでしっかり自覚することができれば、同じことはないと思います。
――やはり1人1人の意識が必要だということですね。
ウチの場合、ケアの部分も練習メニューに入れて取り組んでいます。それを一生懸命やったか、手を抜いたかの違いです。すべては自分の体に返ってきます。われわれも選手のことを見てはいますが、常に全員を見ることはできません。なので、自分で意識を高く持って取り組まないといけない。けがの多くには理由があります。ちゃんとケアをすればするだけ、けがのリスクは下がります。そこが一番大切だと思います。