攝津正が説く、山岡泰輔“飛躍のカギ” 屋外と苦手打者克服で真のエースへ

エースが考える「試合の逆算」

7月24日北海道日本ハム戦、2回表・中島卓也にセンターへの勝ち越し打を許す 【画像提供:パーソル パ・リーグTV マルチアングルVOD】

 好調なシーズンを送っている山岡だが、北海道日本ハム・中島卓也とは相性が悪く、9打数4安打、打率4割4分4厘と打ち込まれている。攝津氏も現役時代は千葉ロッテ・鈴木大地に対し、通算で4割1分7厘と打ち込まれ、苦手にしていた。一方で、当時は7番などを打つことが多かった鈴木を出塁させても、それ以降は下位打線に回っていくケースが多く、攝津氏本人としては次のような考えを持っていたという。

「苦手な打者は絶対にいると思いますが、ランナーがいなければそのバッターと勝負してもいいし、ランナー二塁だったら別に歩かせてもいいわけです。次の打者や状況にもよりますが、そこは割り切って考えていました」

 だが、中島の場合は9番を務めるケースが多く、その後は西川遥輝、大田泰示、近藤健介といった上位打線につながっていく。山岡は中島だけではなく、近藤にも打率5割4分5厘と捉えられている。

「そういうチームには大量失点をしてしまう可能性もあり、流れも悪くなってしまう。打順や1試合をどう逆算するかがポイントですよね」

 山岡は今季、日本ハムを相手に4試合に登板して1勝2敗、対戦防御率は4.32。もう一段上を目指すためには、避けては通れない課題と言えそうだ。実際に7月に唯一の黒星を喫したのも、7月24日の同カード。初回に苦手としている近藤のタイムリーで先制を許し、2回には中島にもタイムリーを浴びている。

屋外球場への「準備とアジャスト」

7月24日北海道日本ハム戦、近藤健介に先制タイムリーを許す。この試合、8奪三振をあげるも5回途中でマウンドを降り、黒星を喫した 【画像提供:パーソル パ・リーグTV マルチアングルVOD】

 山岡は京セラドーム大阪で防御率2.65、メットライフドームで0.00と、ドーム球場で比較的好投を見せている。しかし、山形でこそ防御率0.00だが、それ以外の屋外球場では防御率5.27と数字が悪くなる傾向が出ている。

 ホーム球場を得意とすることは投手にとって大きなアドバンテージになるが、苦手な屋外球場を克服するための対策も見つけておきたいところ。攝津氏は、自身の経験を踏まえた上でこう話している。

「外でやるのが一番しんどい今の時期で気をつけることは、やはりコンディショニングではないでしょうか。前日から水分を多めにとる、あまり冷房を効かせないといった、本当に細かいところだと思います。あとは、次が屋外球場だとわかったら、ずっと室内にはいないようにしていましたね。ドーム球場が本拠地の球団は屋外での練習がなかなかないですが、ホークスは(二軍本拠地の)筑後が屋外ですし、練習から慣れさせるところは意識していました」

 攝津氏は、コンディションを整えるという準備の面に加え、試合前後に行う技術面の対策に関しても、このような話をしてくれた。

「投げながら早めにフィーリングを合わせることが大事です。初回や2回の段階で、ある程度感覚をつかむ必要がありますね。それがおかしいままだと、思い通りに投げられなくなってしまいます。あとは、地方球場の場合もあるので、マウンドに早く慣れることに加え、球場にどういう風が吹いているのか、どちらに打球が伸びるのか、といった点は、試合前の打撃練習を見て確認していましたね」

屋外球場でも高い奪三振率を記録しているが、防御率5点台と苦手にしている 【画像提供:パーソル パ・リーグTV マルチアングルVOD】

 2017年は8勝11敗、18年は7勝12敗と、プロ入りから2年連続で2桁敗戦を喫し、なかなか貯金を作れなかった山岡。しかし、今季はここまで9勝3敗と、自身が掲げる目標通りに「貯金を作れる投手」への飛躍を果たしている。

 来季以降も貯金を積み上げる投手となるために。そして、投手陣を支える大黒柱となるために。今回の受賞を確かな自信に変えて課題を克服し、「真のエース」への成長を期待したい。

(データは8月10日現在)

構成:望月遼太/パ・リーグインサイト編集部
協力:データスタジアム株式会社



【動画】魔球レベル!? B山岡が『カット&縦スラ』無双!! (映像提供:パーソル パ・リーグTV)

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