普段、感情をあらわにすることはない。練習中はじっと選手たちを見つめ、選手たちと一定の距離を保つ。それが監督としてのあるべき姿だと、学んだからだ。

「たとえ正しいことでも、しょっちゅう言うと逆に伝わらない。ここだというタイミングで言えるようにしたい」と心に決め、それと同時に「そこにいるだけで、選手たちが『せなアカン』と思えるような存在でいたい」と監督としての理想像を語る。

――多くの若手選手たちがプロに入ってくると思いますが、そこから成長して一軍で活躍するような選手に特徴はありますか？

　これは僕の考えですけど、やっぱり自分で何でもできる選手。自分で考えて、自分で行動して、自分で練習する選手というのは間違いなく伸びます。逆にやっぱりウジャウジャ言っていてはダメ。誰がという訳じゃないですけど、そういう選手の横にはヨシヨシしてくれる人がいて、コーチに「お前ちゃんとしろ！」と言われても、「俺のことが嫌いなだけでしょ？」っていう考えになりがち。僕がそうだったんで間違いない（苦笑）。

　でも、自分でできる選手というのは、物事を全部受け止めて、自分で考えて、自分で練習する。己がダメだったら己の責任と思える選手が成長して、活躍できるんだと思います。

――チームの全体練習に参加しているだけでは、なかなか成長できない？

　プロですから、練習するのは当たり前です。考え方ですけど、どれだけ自分を背負って取り組めるか。みんなでワイワイガヤガヤやっているだけでは練習しているとは言えない。もっと自分と向き合って、自分で考えてやらないといけない。

　加えて、周りの声に耳を傾けることも時には必要だと思います。迷った時に「僕、どうですかね？」と聞くことは大事です。でも、いつも聞いてばかりではダメ。僕自身のルールで指導する側が「1割」と言いましたけど、選手の方も周りに聞くのは「1割」でいい。残りの「9割」は自分で考えて自分でやる。それが大事だと思います。

――ここ数年、ロッテはドラフト1位で将来有望な高校生を指名して、今、彼らは二軍でプレーしています。期待することは？

　素材がいいからドラフト1位な訳であって、僕も含めて誰しもが期待しています。ただ、体も心もまだ完成していない。朝起きて、ご飯を食べて、時間通りに行動して、しっかりとあいさつをする。まずは一人の人間として、日々成長していくこと。まずは、そういった部分の指導が大切になる。そういう意味では、僕自身の役割も「先生」の方が近いかもしれない。考え方が幼稚なままだったら絶対に一流にはなれない。まずは、野球選手として成長するための骨格をしっかりと作ってもらいたい。

――若手選手たちと過ごす日々の中で、今後の目標、「今岡二軍監督」の未来像は、どのようなものでしょうか？

　もちろんこの先のことは僕が決めることではありませんけど、一軍で、井口監督の側で一緒に戦いたいとは思います。欲を言うなら、今二軍で頑張っている選手たちとともに優勝したいですね。

　優勝というのは一度味わったらそれだけで意識が変わる。僕がそうでしたから。星野監督の時に優勝したら、そこから途端に言うことが変わりましたから。「俺も立派なことを言うようになったなぁ」って（笑）。そして自然と「2位じゃダメ」になるんですよね。最下位ばっかりのチームが2位になると満足かもしれませんけど、一度優勝を味わうと、もう2位じゃダメだと勝手に思うようになる。そうなるとチームは変わる。だからこそ、勝たないとダメ。じゃあ、勝つためにどうするか。それを常に考えることです。

　選手は周りに「なんかやってくれそうやな」と思わせたら勝ち。日々の生活、練習の中でいかにそう思わせるか。それは指導する側も同じ。お互い様です。われわれも日々、どういう姿勢で野球に取り組むか。選手がいろいろと考えていたとしても、「俺の方が考えとるんじゃ！」と言えるようにする。「あの人に言われたら仕方ない」と思われるように、覚悟を持って毎日を過ごす。朝起きた瞬間から、常に野球のことを考える。日々、勉強して、感じて、選手に負けないように自分を律すること。それが目標です。

――最後にマリーンズの若手選手たちにメッセージをお願いします。

　明るい未来しかない！　そのために今、頑張れ！　言いたいことは、もうこれだけです。未来を見据えて、しっかりと「今」に取り組んで欲しい。

（取材・構成：三和直樹／ベースボール・タイムズ）