プロ野球OBが語るトレードの舞台裏 ドタバタ移動に「怪文書」も!?

ベースボール・タイムズ

西山氏「日頃の取り組みが大事」

高卒2年目でトレード移籍。その後は広島で長きに渡って正捕手を務めた西山氏(左) 【写真は共同】

 自分の意思とは異なるところで決まるトレード。体だけではなく、心の整理、準備にも時間を要するが、それでも「大きなチャンス」と西山氏は語る。

「出番がなくて行き詰まっていた選手にとって、トレードは間違いなく大きなチャンスですよ。今までとは違う緊張感の中で、本人も気持ちを新たにやれるし、新しいチームの首脳陣たちが新しい目で見てくれるということも大きい」

 実際、西山氏は広島に移籍した後、チャンスをつかんで結果を残し、本職だった捕手に再転向してからさらにチーム内での存在感を高め、1994年、96年とベストナイン&ゴールデングラブ賞を受賞する活躍を見せた。「僕にとってはいいトレードでしたね」と振り返る西山氏は、巨人でのコーチ経験も踏まえ、出番の少ない選手たちにアドバイスを送る。

「選手たちに伝えたいのは、各球団の編成の人たちも含めて、人は必ず見ているということ。1軍で出番をもらえなくても、2軍でしっかりと地力をつけていけば、他のチームからでも声がかかるし、いざ声がかかった時にすぐに活躍してチャンスをものにできる。逆にそこで結果を出せなければ『単に力がなかっただけ』と判断をされる。チャンスを生かせるかどうか。日頃の取り組みが大事になる」

中根氏「すごくプラスになった」

 新天地での入団会見に「近鉄百貨店でいいスーツを作ってピシッと決めて臨んだ」という中根氏は、持ち前の勝負強い打撃ですぐさま貢献し、移籍初年度のリーグ優勝&日本一に貢献。移籍3年目の2000年には自己最高の打率3割2分5厘をマークするなど、古巣を見返す活躍を披露した。

「本当に心機一転でしたね。近鉄にいた最後の方は怪我もあって、自分の中で『もう終わりだな……』というぐらいの感じだった。そういう中でトレードされて、もう一回頑張ろうって思ったし、実際にそこから頑張れましたからね」

 成績だけではない。チームが違えば、周囲の環境もガラリ変わる。他の球団でのプレーを経験することを、中根氏は「絶対にプラスになる」と語る。

「本当に勉強になった。いろんな野球選手を間近に見れて、『へぇ〜、こんな練習をしてるんだ』とか、それこそ『セ・リーグの応援ってこんなんなんだ!』って思いましたし、違う野球を経験したことはその後の自分の人生において、すごくプラスになったと言える。もっといろんなチームでプレーしてみたかったですよ」

 トレードは、その選手の人生を大きく変える。「吉と出るか凶と出るかは本人次第」というのは間違いないところだろうが、同時に中根氏が「横浜は(法政)大学時代に土地勘があったし、同じ年にちょうど(近鉄時代に同僚だった)阿波野(秀幸)さんも加入して、いろいろとアドバイスをもらった」と振り返るように、新天地での環境、タイミングも成功への一つのカギになるだろう。

 果たして、今年のトレード組がこれからどのような活躍を見せてくれるのか。トレード経験者の意見も追い風に、成功者が増えれば増えるほど、さらなる“市場盛況”となるはずだ。今年の「移籍成立」は、まだあるのか。期限は、今月31日までだ。

取材・文:三和直樹(ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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