元メタボ100kmマラソンに挑戦!(4)

【みんアス】

2019年5月19日(日曜日)に開催された『柴又100K 〜東京⇔埼玉⇔茨城の道〜』の大会レポートをお届けします。
四回目となる今回は50km〜75kmの様子をご紹介。“ここからが本当のウルトラマラソン”って?!

※リンク先は外部サイトの場合があります

 49kmの『五霞町ひばりの里』で休養十分、食事もしっかり摂れた私は再びコースに復帰しました。

 食後ということもあり、まずはのんびり走って胃腸を整えよう!

 そんな感じでエイドで作ったOS1とBCAA系をベースにしたスペシャルドリンクのペットボトルを片手に持ち、まさに“チンタラ”走っておりました。

 おおよそ7:00/kmあたりのペースだったと思います。

 皆さんもそうかもしれませんが、私は軽くでも食事を摂るとその後は胃が重くなりあまり急にはペースを上げられません。今考えれば30分も休憩をしないで15分くらいでエイドを後にして(まだ言ってる(笑))、15分ゆっくりコースを歩けば50km地点を午前中にクリアできたんだなぁと反省しております。

 今回この後も散々思い知らされるのは

 ウルトラマラソンはとにかく止まっているより歩く、歩くよりも少しでも走る

 これが大事だなと……。

 前に進んでいれば確実にゴールに近づいていく。

 こんな当たり前のことを信じられなくなるくらいここから徐々に過酷さを増していくウルトラマラソンなのでした。

 さてお腹もこなれたころようやく50kmを通過。

 50kmを5時間31分で通過しています。

 つまり休憩やらなんやらを挟んだおかげでスタートからの平均タイムは6:37/kmまでペースダウン。時刻は12時1分でした。6時半にスタートしてちょうど正午を1分回ったあたりで半分を通過したことになりますね。

正午の茨城県五霞町はとても良い天気(笑) 【みんアス】

 49kmのエイド手前から川沿いを外れ五霞町の一般道を5kmほど走ります。

 係員の人がポイントポイントで立って道案内をしてくれるのですが、このあたりまでくるといわゆる集団走ではなく、単独走。つまり周りにあまり人がいなくなります。

 一人で民家の間を走っていると時々「あれ? これ道間違えてないかな?」と不安になることも……。

 しかし実際は分岐点には必ず係員の人が立っていてくれて、まだ10mくらい前後にはランナーがいる状態なので迷うはずもないのですが、普段のレースでギャラリーもいない、周りにランナーもいないという状況をほぼ経験したことがないのでちょっと不安になりました。

 さらに数キロ走るといよいよこれから川沿いに戻って東京向きに方角を変えて走りますよ! と言わんばかりに“折り返し点”が現れました。

 さあ、ここをUターンすればあとは文字通り一歩ずつ東京に近づくことになります。

ご覧のように折り返し点で周囲にランナーがいません。 しかもとても良い天気で容赦なく太陽の日差しが照り付けます。 【みんアス】

 この頃のコンディションというと正直ちょっと疲れが溜まっていました。

 やたらと喉が渇くし、脚が重い。

 意識的に「ゆっくり行こう。半分は越えたんだからあとは帰るだけ」そう言い聞かせながら6:30/kmくらいでゆっくり走ります。

 とにかく60kmまで行ったら少し休憩しよう

 あれ? 休憩しよう?

 エイドでもないのに脚を止めることを考え始めていました。

 55kmを過ぎたあたりからやはり未踏の距離であることに加え、容赦ない暑さから疲労がかなり溜まってきていました。不思議とリタイアをしたいとは思いませんでしたが

 休みたい

 早くも55kmでそんなことを考えるようになっていました。

 景色を見たり、今までのランニング人生(というほど歴史はありませんが)を振り返ったり、そんな感じで頭をごまかしながら黙々と走ります。

 ようやく60kmを通過。
 6時間49分48秒→6:48/km

 やはり確実にペースが落ちていました。
 ペースを落としたのではなく落ちてきたのです。

 それでもこのペースをキープして次は65km、その次は70km!

 そうすれば、70kmを越えればあと30km!
 ちょっと先が見える気がしました。

 しかし60kmを越えたあたりから胃腸の調子が悪くなってきました。

 まず2.5kmごとに設けられているエイドでしっかり給水をしても走り出してすぐに喉が渇くように。

 そうです。胃腸の動きが悪くなり水分が体内に吸収できなくなってきていたのです。

 水を飲んでもスポーツドリンクを飲んでも喉の渇きが収まりません。

 そして吸収しないのに水分をどんどん摂るのでトイレが近くなります。

 ここからはほぼ2.5kmごとにトイレで用を足すようになりました。

 汚い話で恐縮ですが大きい方は出ないんです。

 お腹が多少痛くても、腹筋に力が入らないから出せないし出ない。

 小さいほうは膀胱がすぐに満タンになる感じで走っていて苦しい。

 だからすぐにトイレに行くんですが下腹に力が入らないのでちょっとじっとして出るのを待つ感じになっていました。

 暑い中走っていて水分がうまく摂れないのはなんとも苦しい。

 途中スイカやジュースなどエイドでいろんなものが出るんですが、もうスイカすら食べたいと思えない状況でした。一番近い感覚は夏バテですかね?

 多少脱水気味になりながらもあと40kmはある。ここはとにかく摂れるものは摂ろう。そう思ってとにかく携帯していたジェルを流し込みます。

 今回のウルトラマラソンに備えて携帯していた“Mag-on”

 脚攣り防止のマグネシウムも含まれたゼリーでカロリー、マグネシウム、カフェインが同時に摂れる優れもの。これを無理やり口に入れて飲み込んでは水でうがいをする。

 これを繰り返して先に進みます。

今考えればエネルギーゼリーの中でもかなり美味しいゼリーだと思います。レモン味なんかとても美味しかったはずなんですが……。 【みんアス】

 周りに人がいなくなり、数十メートル先には歩いている人がチラホラ。

 でも60kmくらいで歩いちゃうとこの先40kmをずっと歩かなければ先に進めない気がして、ここはもう少し走り続けようと心に決めました。

 ただし上り坂は歩く、そして70kmに到達したら少し歩く。

 この2回の歩きをご褒美にして70kmを目指します。

 その時一人のランナーが私を抜いていきました。

「お互い頑張りましょう! あとフル一本(あとフルマラソン一回分という意味)ですからね!」そう笑顔で私を抜いていった男性。

 あとフル一本って……。

 そっか、まだフルマラソン一回やるんだ、俺。

 さすがにちょっとくじけそうになりました。
 がしかし、さっき決めたばかりです。

 上り坂以外は歩かない。
 そして70kmまで行く、そしたら歩いてよし(なんだそれ(笑))。

 相変わらず水分はうまく摂れないし、正直もういわゆるランニングという感じではなくなってきていました。ただ脚を右左交互に動かしているだけ。

 でも不思議と「これちょっとおもしろいな」と思ったりもしていました。

 実はここ数年、ランニングがマンネリになってきていて、苦しい練習を放棄したり、フルマラソンもなんだかんだ言い訳を作っては途中でペースダウンしたり。そんな感じで走ることにあまり情熱を燃やせなくなっている自分がいました。

 いやはっきり言いましょう。
 ちょっと走ることに飽きて、嫌いになっていました。

 ところがまだ40kmも距離を残している中盤なのに身体が言うことを聞かない状態に陥った自分。そしてそれでも走ろう、ゴールまで絶対に帰ってやろう。あ、でもとりあえず70kmを目指すけど(笑)。とあの手この手で前に進むウチに

 人間の脚だけでどこまでいけるのか?

 これを今まさに体験している自分が面白くなってきたのです。(決して疲れと暑さで頭をやられたわけではありませんよ!)

 めったにこんな経験できるわけではない、そうだ今すごく壮大な実験に参加しているんだ(自分の身体でね)。そう思うと「どのくらいまで行くと人って倒れちゃうんだろう」というのに近い感覚が芽生えてきたのです(もうこの辺でやはりランニングバカなのかもしれませんが)。幸いにして脚はまだ攣っていません。疲れてはいるけれど、そんな感じでワクワクする気持ちも残っています。

 よし、この勢いで70kmを越えちゃおう!
 そこから先のことはその時考えよう!

 そんな感じで走り続け、70kmを通過しました。

 70kmの通過タイムは8時間17分38秒→7:06/km
 やはりガクっとタイムは落ちました。

 65kmから70kmの5kmは45分30秒もかかっています。

 とにかくトイレを見つければトイレ休憩。
 上り坂は歩く。

 これでこの5kmの間、止まっている時間がとても長くなり単純計算で1kmに9分もかかった計算になります。

 それでも自分の脚で70kmを走れたことにちょっと興奮しました。

 あとまだ30kmもあるのはもちろんですけど、「70kmってすごいな」そう単純にうれしくなったのです。

70km地点です。電光掲示板は時刻を指しているので14時47分ってことですね。朝6時半から走り出してもう15時前、よく走ったなぁ。 【みんアス】

 70kmを通過してご褒美にしておいた歩きを500mくらい入れました。

 そしてその間に49kmエイドからウエストポーチに常備していた“ボルタレンスプレー”で脚のケアをしようとふくらはぎや太ももにスプレーを噴射します。

 そして腰もちょっと痛かったので右手にスプレーをもって背中に向けてスプレーを噴射したその時!

 右肩が攣ってしまいました!

 脚を攣ることは想定していたのですが(攣らなかったけど)、まさか右肩が攣るなんて……。

 肩から上腕に激痛が走ります。
 腕が全く振れなくなり、さすがに立ち止まりました。

 しかし、まあ脚で経験しているように痙攣っていうのは数分はとてつもなく痛いけれど数分経てば収まるもの。ここは我慢するしかありません。左手で右手を支え、少し走ってみます。

 あ、無理だ。全然走れません。肩がズキズキ痛みます。しかしここが泣き所、攣って痛いところに“ボルタレンスプレー”をかけるべきなんですが、右手に“ボルタレンスプレー”をもったまま右肩を攣ってしまったので、患部にスプレーを噴射することができないのです。

 これはしばらく待つしかないな。

 そう思い立ち止まっているのも嫌なので、一歩ずつ慎重に歩きます。(ウルトラマラソンはとにかく一歩でも前に進むことが大事ですからね)

 数分経ってようやく痛みが治まり、また少しずつ走り出しました。

 次は77kmを目指そう!“77”で縁起がいいから、ではなくて、77km地点にはスペシャルバッグを預けてあり、お水やOS1、あとはおやつなんかを置いてあるのです。今更食欲もないのでおやつは食べられないかもしれませんが、そこまでたどり着けばなんか助かりそうな気がして(笑)。

 よし、走ろう!

 また一歩ずつ走り続けました。

 少し走ったあたりで往路で応援をしてくださったチャイナドレスの女性たちを発見!

「おかえりー! あと少しだ、がんばれー!」と大声援。

「かえってきたよ!」と、とりあえず笑顔にならない笑顔でハイタッチをしてその場を通過しました。

 速いランナーから関門ギリギリのランナーまでを往路も復路も応援していたとすれば彼女たちは10時間くらいはあの場所でチャイナドレスを着て声援を送ってくれていたことになります。本当にありがとうございました。

 ウルトラマラソンは声援がなければ本当に走れない過酷な戦いです。

 皆さんの笑顔に本当に救われましたよ!

 元気を若干取り戻した70kmから75kmの5kmは37分58秒までタイムを回復していました。普段の感覚からいえばとても遅いタイムです。1kmあたり7分35秒もかかっています。しかし、途中歩いたり、肩を攣ったりして立ち止まったことを思えば少しペースを回復できていたんだと思います。

 あと25km。

 まだ25kmなはずなのに、もう残りは25kmって思えてきました。

 このあと77kmでしっかり休憩して、もう一度頑張って走ればゴールできる。

 ようやくゴールを意識する距離までたどり着いたのでした。

 つづく
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