連載:輝きを取り戻した男たち

秋吉亮が過ごした不本意な2年間 復活を誓う中、突然のトレード通告

前田恵

4年目のシーズン、右肩の違和感で離脱

WBC侍ジャパンのメンバーに選ばれ、順風満帆なプロ野球人生を過ごしていたが、4年目のシーズン、右肩の違和感で途中離脱を余儀なくされた 【Getty Images】

 17年には、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する侍ジャパンのメンバーにも選ばれ、中継ぎで6試合に登板した。チームに戻れば前年同様、クローザーとしてブルペンに連日待機。順風満帆に、4年目のシーズンが始まろうとしていた。

 ところが、である。6月30日の阪神戦(甲子園)、9回2死二、三塁の場面で、秋吉は右肩に違和感を覚え、マウンドを降りる。翌日検査を受け、下された診断は右肩甲下筋の肉離れ。1軍のマウンドに戻ったのはシーズンも終盤にさしかかろうかという、8月29日のことだった。

「結局それが次の年まで響いて、去年はもうひとつ状態が戻りませんでした。1軍と2軍を行ったり来たり。良い状態で投げるのが一番ですが、チーム状況によっては、良い悪いにかかわらず投げなければいけないときもある。悪いときでも悪いなりにしっかり抑えるのが、リリーフの仕事。悪いから打たれた、ではしょうがない。だけど去年は、肩がよくなって上がったら、またちょっと状態が悪くなって打たれて……の繰り返しでしたね」

 プロ入り後、秋吉の1軍での登板数はこうだ。14年61試合、15年74試合、16年70試合。17年は離脱するまで29試合、約2カ月後に戻ってまた14試合に投げた。18年も35試合に投げている。リリーフ――特に中継ぎを務めると登板数はどんどん増え、いわゆる“勤続疲労”がささやかれるようになる。

「リリーフは1年間投げたら、どうしても試合数が60、70になってしまう。そのへんはキツイです。だけど、それでもケガをせずにずっと投げているピッチャーもいます。そこはトレーニングの仕方などもあるはずなので、僕もしっかりトレーニングを行なって、ケガをしない体を作るのが一番だと思いました」

リリーフは自ら勝ち取るポジション

「リリーフの僕にとって、登板数とホールド数、セーブ数、防御率は勲章のようなもの」と、飾らない言葉で、そのやりがいを語ってくれた秋吉 【スリーライト】

「リリーフは自分で行って、勝ち取るポジションだから」と、秋吉は言う。毎日ブルペンに控え、「行け」と言われればいつでもマウンドに上がれるよう準備する。チームが勝っていようが負けていようが、ランナーがいようがいまいが、たいていは人があまり行きたくないような場面で、マウンドに上がるのだ。そこで抑えても打たれても、翌日には頭を切り替え、次の試合に臨まなければならない。そうして積み重ねてきた3年間。その登板数とホールド、セーブ数、防御率は、秋吉の財産であり、勲章だった。

「それなのに、ケガで2年間、不本意なシーズンを過ごした。同じ轍(てつ)を踏まないためにも、トレーニング、ケア……何かを変えなければいけないと思いました。まずは痛めた箇所のトレーニング、そして、その周りの筋肉のトレーニングですね。それから柔らかさを出すためのトレーニングは、かなり気にしてやるようになりました。僕の投げ方からいって、柔らかさがないと投げ切れない。筋肉が固まってしまうと、腕も上がりにくくなって、そこからケガにつながると思うので。今まで以上にしっかりやるよう、投げたあとのインナートレーニングを含め、今も欠かさず続けています」

 18年12月10日、秋吉はその年の契約更改に臨んだ。2年連続の減俸は、承知の上だった。だが球団からは、別の話もあった。それが北海道日本ハムファイターズへのトレードである。

「2年間、ヤクルトで結果を残していなかったから……3年間やってきたといっても、仕方ないですよね。でも、やはりチームを替わるのは――ヤクルトを離れるのは、ちょっと寂しかった。ただ一方で、これを機に何か気持ちを新たにできるのかな、という思いはありました」

 翌日、ヤクルトと日本ハム両球団から、2対2のトレードが正式に発表された。

(企画構成:株式会社スリーライト)

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著者プロフィール

1963年、兵庫県神戸市生まれ。上智大学在学中の85、86年、川崎球場でグラウンドガールを務める。卒業後、ベースボール・マガジン社で野球誌編集記者。91年シーズン限りで退社し、フリーライターに。野球、サッカーなど各種スポーツのほか、旅行、教育、犬関係も執筆。著書に『母たちのプロ野球』(中央公論新社)、『野球酒場』(ベースボール・マガジン社)ほか。編集協力に野村克也著『野村克也からの手紙』(ベースボール・マガジン社)ほか。豪州プロ野球リーグABLの取材歴は20年を超え、昨季よりABL公認でABL Japan公式サイト(http://abl-japan.com)を運営中。

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