山崎康晃、DeNAを最後方から見つめ続け チームが苦境の中で自ら課す役割

日比野恭三

頭と体の不一致が、悲劇を生んだ

4月25日の阪神戦、痛恨の逆転3ランを浴びチームの連敗を止められず 【(C)YDB】

 チームの苦境。ブルペンの柱だった選手たちの不在や不振。そうした状況で迎えたのが、25日の阪神戦(横浜スタジアム)だった。

 DeNAが今永昇太、阪神が岩田稔の先発で始まった試合は、接戦となった。9回を迎えた時のスコアは3対2で、DeNAの1点リード。実に11日ぶりのセーブシチュエーションで、山崎の出番がやってきた。

 チームはこの時点で7連敗中。山崎の登場とともに、ほとんどのファンが「ようやく勝てる」と確信に近い感情を抱いていたはずだ。

 ところが――。

 先頭の梅野隆太郎にいきなり四球を与えると、次打者のバント処理を自らミスしてピンチを広げてしまう。その後2アウトを取り、打席にはルーキーの近本光司。待ち望んだ勝利は目前だった。

 148キロのストレートにうまく合わせた近本の打球は、無情にも、左翼席ポール際に飛び込んだ。逆転3ラン。痛恨の敗戦だった。

 1点差の場面、先頭打者を四死球で歩かせるのは絶対に避けるべきことだと重々わかっていた。バント処理のミスにしても、「普段は当たり前にやっていることができなかった」。

 頭と体の不一致が、悲劇を生んだ。

「梅野さんに苦手意識があるわけではないけれど、ぼくがハマスタでの阪神戦で分が悪いっていうのは頭に少しありました。あのフォアボールは、勝負に行けてなかったということだし、気持ちに迷いがあったんだと思う。絶対に(四球を)出したくないと思っているのに、出している。ぼく自身の気持ちの動きに、体が勝手に反応したというか、直結したんだと思う。完全にぼくのミスで負けた試合」

 鉄壁と思われていたリリーバーたちの不振や離脱。負けが込むうちに沈みがちになるロッカールームの空気。ファンの胸に募りに募った勝利を渇望する思い。最後方から定点観測し続けてきた山崎だからこそ見えるものがあり、考えることも多かった。その結果、久しぶりにクローザーに手渡された勝ちのバトンは恐ろしく重かった。

三浦コーチの言葉を肝に銘じて

三浦コーチ(写真左)には「3人で終わらせろ」と言われている。山崎もその言葉を肝に銘じる 【(C)YDB】

 根を張る大樹のように不動であろうと努めていたつもりでも、周囲のうねりに耐えかね、心は微かに揺らいでいた。あの日、勝利まであと1つのアウトが取れなかった理由は、そこにあったのかもしれなかった。

 4日後、29日の巨人戦で、「10」まで伸びていた連敗は止まった。山崎も3セーブ目を挙げ、悪い流れはひとまず断ち切れた。

 5月に入ってからチームは上昇気流に乗り始めているが、山崎が稼いだセーブ数は、シーズンを通してもまだ5つだけだ。

 山崎は言う。

「体は元気なのに、ちょっと重たいっていうか。自分のセーブ数がどうこうじゃなく、チームが勝てない難しさがあって、そういう気持ちの部分からつながってきてるものだと思う。三上さんとよく話してたんですよ、『1年の間に3回くらいは疲れる時期ってあるよね』と。その1回目が今年はもう来てるのかなって気はしますね。後輩のこともあったり、先輩がいなくなったり……周りの環境がすごく動いている状況の中で、気持ち的にもフィジカルも、ちょっと左右されてるのかなって。軸を持ってやらなきゃいけない立場でもあるし、まずは夏まで、誰かがどっしりしてないといけない。過去4年の経験を無駄にしないで、いま何ができるのかを考えながら過ごしていきたい」

「動きがあり過ぎて余裕がなかった4月、5月」を経て、ここから流れを変える役目を担いたいと26歳は考えている。

 先発のマウンドに立つわけではない。野手の代わりに打つわけにもいかない。できるのは、クローザーという自分の仕事のクオリティを上げていくことしかない。

「チームがいい流れにいくようなきっかけをつくることを意識している。9回をどう抑えるかがぼくのやるべきことなので、次の試合に投げるピッチャーがすんなり入っていけるような締め方、そのクオリティをいまは追い求めています。コーチの三浦(大輔)さんには、『3人で終わらせろ』といつも言われてるんです。冗談ぽく言われるけれど、結構本気だと思う。どんな形であれ、3人で終わるのはいい締め方だし、翌日の試合に影響するってこともこれまでやってきてわかっているので。三浦さんの言葉を肝に銘じてマウンドに立っています」

「現状を認めて、前に進んでいくしかない」

「ここから、ぼくも成長していきたい。ブルペンとしても、ピッチャー陣としても」。山崎はその思いを持ってマウンドへ上がる 【(C)YDB】

 山崎は、5月13日に右ひじのクリーニング手術を行った三上と顔を合わせる機会があったという。「『大丈夫、大丈夫』って、元気そうに笑ってました」。その笑顔に安心する思いが芽生えた一方で、リハビリに入る三上がすぐには戻ってこられない現実もたしかなものになった。

 救援陣が踏ん張り切れない試合が目立つ今シーズンのDeNA。残すところ約100試合、これからも厳しい局面は何度もやってくるだろう。

「うちはセ・リーグでいちばんリリーバーがそろっているなとぼくは思ってたし、開幕前、ラミレス監督もそういうふうにおっしゃっていた。『こんなはずじゃなかった』という思いは、ブルペン陣にもあると思う。そこに関してはもどかしい部分がありますけれど、現状を認めて、前に進んでいくしかない。真っすぐ向き合って、弱さを認めないといけない。ここから、ぼくも成長していきたいなと思います。ブルペンとしても、ピッチャー陣としても」

 昨シーズンのセーブ王は、三上が離れたいまも、キャプテンやリーダーと名乗るつもりはないという。

 揺れる船を海底で繋ぎ留める錨のように、ブルペンあるいは投手陣全体に安定をもたらす――。自ら課したその務めをどう果たしていくのか。目に見える結果にどう表れてくるのか。

 2019年の山崎康晃が生む有形無形の影響力に、目を凝らしておきたい。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ、記録は5月19日終了時点)

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著者プロフィール

日比野恭三

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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