堂安律、若いチームを結果でけん引 「厳しい時に救うのがエース」を体現

中田徹

堂安が「もう一つ秀でているもの」とは

味方とのコンビネーションを築くことで、チーム戦術のユニットに昇華させた。これも堂安の秀でているものの一つと言える 【Getty Images】

 胸のすくようなゴール、鮮やかなテクニック、意表を突くパス、果敢なドリブルでファンを魅了している堂安だが、もう一つ、彼が秀でているものがあると思う。それは味方とのコンビネーションを構築していくうちに、チーム戦術のユニットに昇華させてしまったことだ。

 昨季から堂安は、右サイドでSBのデヨファイシオ・ゼーファイクと縦の関係を築いていた。センターFWのミモウン・マヒ(登録はMF)とは、お互いを常に探しながら、即興的なコンビネーションでチャンスを作り合っていた。右サイドの堂安が、左サイドのジャンゴ・ワーマーダンに鋭く蹴り込むサイドチェンジは、一瞬で試合の展開を変えた。最近は、MFサミール・メミセビッチ(登録はDF)から堂安に、頻繁に縦パスがシンプルに入るようになった。

 堂安が培った味方とのコンビネーションは、今やトリオの域に達している。NAC戦では、堂安、ゼーファイク、マヒがトリオの関係を頻繁に作った。この試合で決めた堂安のゴールも、トリオの連携によるものだった。

 NAC戦のスタメンを見ると、フローニンゲンの4バックの内、ゼーファイク、ジュリアン・シャボット、ティム・ハンドヴェルカーが20歳。セントラルMFのリュドヴィート・ライスは18歳。サイドハーフの堂安が20歳。トップ下のアイディン・フルスティッチは22歳と非常に若い。MFトム・ファン・デ・ローイは19歳、DFアミール・アブサロムが21歳と途中交代の選手もフレッシュだった。

 まるでリザーブチームのような構成のチームがシーズン・スタートに失敗し、多くの批判を浴びながらプレッシャーに打ち勝った。チームも個も上昇気流に乗っている。だから、今のフローニンゲンは見ていて面白いし、シンパシーを感じる。

化ける可能性を秘めた選手、監督がいる

 そして、忘れてならないのはバイス監督自身が36歳に過ぎないということ。よくぞ、首脳陣は我慢して、バイスを引っ張ったと思う。

 まだ16位。若いチーム故に、再び不振に陥れば崩れる可能性もあるにはある。だが、ここを乗り越えられれば、化ける可能性を秘めた選手、そして監督がいる。堂安律は、そんなチームでプレーしている。

 NAC戦後の堂安のコメントは「『厳しい時に救うのがエース』というのが、やっと体現できてきている」と頼もしかった。若くしてエースになれば責任感が生まれる。プレーだけではなく、チームを引っ張る堂安の姿勢が、フローニンゲンに化学反応を生んでいる。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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