G大阪の電子チケット実験、利点と課題 高額転売問題の救世主になるか?

碧山緒里摩

キャッシュレス決済のハードルも課題に

スマホはもちろん、セブン銀行移動ATMでも手数料無料でチャージが可能 【碧山緒里摩】

 だが、ICカードが入った面を端末にうまく当てることができず、入場に手間取っている来場者も散見された。2次ゲートのスタッフは「自身の慣れの問題もある」と断りつつ、「お客さんが飲食物を持っていると、リストバンドがうまく当らず、端末のOKサインがなかなか出ない時がありました。個人的にはQRチケットが一番、次にリストバンド、三番目が紙チケットの順番でチェックしやすいです」と感想を語った。

 このリストバンド型電子チケットはプリペイド機能を持ったICカードが挿入されているため、スマホやこの日スタンバイしていたセブン銀行移動ATMでチャージすれば、スタジアム内外でのショップでキャッシュレス決済できるのが1つの売りとなっている。そのため当日は2000円で500円分多くチャージするプレゼントのキャンペーンを用意したものの、キャッシュレスで買い物を楽しんだ観客の数は限られた。

 G大阪の選手と並んで撮影したような写真がキーホルダーになるマーケティングフォトブースでワンタッチショッピングを体験した男性サポーターは「僕は普段からSuicaやLINE Payを使っているので、買い物にはこのリストバンドを使いますね。一度チャージするだけですから、楽でいいと思います」と利便性を語った。

 親子連れのサポーターも「ポイントもたまるし、便利になるならやろうかな」「売店で細かいお金を持たなくていいなら考えようかな。待つ時間も少なくなりそうだし」とチャージを検討していた。ただ、チャージを検討するのと実際に行動に移す間に1つの壁があったのも確か。スタジアム内外のキャッシュレス化をいかに進めていくかという課題も、今回浮き彫りになった。

キャッシュレスゾーンを作るアイデアも

 ただ、ぴあの大下本氏は「このパッケージをこのままどこかへ持っていってやるわけではありません。今回の実証実験で課題を見つけ、解消していきます」と、課題は織り込み済みだという。

 ぴあ・東出隆幸上席執行役員は「今日は来場者への事前告知をあまりしていなかったこともあり、チャージをする人が少なかったという反省もあります。今後、スタジアムサービスプラットフォームの利用を促進するための仕掛けも必要になってくるでしょう」と先を見据える。三井住友カード・神野雅夫執行役員も「ショップや売店でキャッシュレスゾーンを作って、お客さんに並ばずに済むメリットなどを提供してもよかったのかもしれません」とアイデアを披露した。

実用化は2020年、高額転売問題解決の救世主に

11月24日のホーム最終戦でV・ファーレン長崎を2−1で下し、9連勝を飾ったガンバ大阪 【(C)J.LEAGUE】

 また、ぴあ・東出氏はチケットの高額転売問題の解決にも期待を寄せる。「電子化することで、誰が、いつ、どのような状況でチケットを持っているかということも把握できます。1人が大量にチケットを購入することを抑制したり、ぎりぎりまで席番表示を公開しないようにすれば、高額転売の抑止にもつながるはずです」と力を込めた。

 パナソニック・井戸正弘執行役員は「2020年の実用化を目指しています。Jリーグ全クラブへの導入、スポーツを含めたエンタメ業界に進めたい。顧客の満足度を高め、ビジネス化を促進していきたい」とキッパリ。

「例えば、東京五輪では8万人のお客さんをいかに早く会場に入れるかという課題があります。また、いかに来場者を早く出すか。パナソニックスタジアム吹田の混雑緩和を考えた時、駐車場の予約管理、モノレールの駅やエキスポシティとの連携も必要になってくるでしょう。たとえば、エキスポシティと連携し、クーポンを発行して、食事や買い物を楽しんでもらえば、混雑緩和とビジネス拡大の両方につながります。スタジアムを中核としたスマートシティ化を進めていきたいと思います」と、今後の構想を明かした。

 25年国際博覧会の開催地が大阪に決まったこの日、1970年に万博が行われた地に集った2万7806人は、20年以降のJリーグ観戦の新たなスタンダードをひと足早く体験したと言えよう。そして2年後には、さらに進化したスタジアム体験が待っていることだろう。

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