伊藤美誠(卓球)が語る金メダルへの道 「感覚と、ひらめきを大切に」
試合をしながらのほうが新しい技を思いつく
試合中でも新しい技が思いつくという伊藤は「自分とは試合したくない」と断言 【岡本範和】
伊藤:練習でやったことのない技でも試合で思いついてパッとやってみるというような、感覚と遊び心のあるプレーということだと思います。だから練習も試合形式が好きなんですよね。ゲームをしながらのほうが新しい技を思いつくから。これって、練習でやり込んでできることじゃないと思うし、実戦でひらめいて、そこから戦い方の幅を広げていくのが自分にとっては自然になっています。
松田:試合中に新たな技を身につけるって、スゴイですね。対戦相手はやりづらいでしょうね。
伊藤:卓球は対戦相手のプレーを映像で見て事前の対策をするので、やりづらいと思います。私は自分と試合したくないです(笑)。
松田:技のバリエーションはまだまだ増えそうですか?
伊藤:それは無限ですね。今ある技術の質を上げていくとともに、ないものをプラスしていきたいです。それが自分の卓球の持ち味なので。
たくさん食べる、バランスよく食べる。それがパワーになる!
「お米」と大好物の「お肉」がパワーの源だ 【奥井隆史】
伊藤:もともと食べ物の好き嫌いがなくて、量もたくさん食べられるほうなので、結構バランス良く食べていると思います。海外ツアーを回っていても食欲が落ちることはないですし、試合当日の朝からモリモリ食べています。日本にいる時と違って食材は限られていますが、そんな中でもお米は必需品です。特に今シーズンに入ってからは母がワールドツアーに帯同してくれているので、滞在先のホテルでおにぎりにしてもらって試合会場で食べています。お米って、ものすごくパワーになります。
松田:お母さんが食事面のサポートをしてくれているんですね。
伊藤:はい、とても助かっています。味の素の管理栄養士さんも栄養指導をして下さっているので、そこで教えてもらったメニューを作ってくれます。おいしくてお腹いっぱいになるのに太らないんですよ。すごくありがたい。それに、試合の翌日の疲れも以前よりなくなったと感じています。
松田:国際大会では試合時間が不規則なことも多いと思いますが、食事や補食のタイミングは工夫しているんですか?
伊藤:試合前の練習から試合開始まで20分くらいあるので、その間におにぎりを1、2個食べて試合に臨みます。試合と試合の間がかなり空いて一旦ホテルに戻る場合は試合後と練習後に食事をとります。この時、栄養補給として「アミノバイタル®」も一緒にとって体力の回復に努めています。ちなみに今年の世界大会(※2)でも試合前におにぎりを3個食べて、チームのメンバーから「試合前によくそんなに食べられるね」って驚かれました(笑)。
松田:緊張して食べられなくなるようなことは全くないんですか?
伊藤:ないです。ずっと食べられます(笑)。
松田:それだけ食べられるということは内臓が強いんですね。それもトップアスリートに必要な才能の1つだと思います。
東京2020オリンピックでは「団体、個人の両方で金メダル」
充実の表情で東京2020オリンピックでの目標を語ってくれた伊藤(右) 【千葉格】
伊藤:「母体制」と呼ばれる練習環境と、定期的に行なわれているナショナルチームの合宿の両方がうまく機能していることが理由の1つだと思います。特に女子に言えることですが、普段は選手一人一人に専任コーチがいて、それぞれの練習拠点で練習をしています。そして、大会前になると味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)に集まって、1週間くらいみんなで練習をするんです。私も普段は大阪にいて、合宿のたびに東京に来ています。選手それぞれプレースタイルが違うので、いつも身近で練習を見てくれるコーチがいるのはとてもありがたいですし、大会の事前合宿では日本代表監督に指導していただけて、さらに選手同士のチームワークもできるので、すごくいいシステムだと思います。
松田:合宿はどれくらいのペースであるんですか?
伊藤:リオ2016オリンピック前よりも増えて、1カ月に1回ぐらいあります。そこでは選手が要望や考えを伝えると、それを監督やコーチたちが聞いて良い方法を提案してくれるんです。
松田:伊藤選手は自分の意見を言うほうですか?
伊藤:言うほうです。ちゃんと言わないと伝わらないし、伝えることでベストな練習環境が整うと思っているからです。
松田:17歳(編注:10月21日で18歳)でそう考えているのはすごい! 東京2020オリンピックがますます楽しみになってきました。ずばり、伊藤選手の目標を聞かせて下さい。
伊藤:東京2020オリンピックの団体戦、個人戦の両方で金メダルを取ることです。そのためにはワールドツアーでいい成績を出して世界ランクを上げて、日本人の女子選手の中で2番手までに入らなくてはなりません。そうしないと個人戦に出られないので(編注:卓球競技の出場枠は個人戦代表2人と団体戦のみ出場の1人で計3人)。
松田:オリンピックで金メダル2つですか。夢がありますね。ぜひ実現してください。
伊藤:ありがとうございます。楽しんでやっていきたいと思います!
(文中敬称略)
※1:全日本選手権
※2:世界選手権
※3:ワールドツアー・ジャパンオープン荻村杯
伊藤美誠(いとう・みま)
【千葉格】
松田丈志(まつだ・たけし)
【坂本清】
【味の素(株)】