仲の良さとベンチの賑やかさはピカイチ HCに聞く、○○はうちがNo.1 FE名古屋編

大島和人

飛躍に向けて、機は熟しつつある

ギャレット・スタツらを中心としたインサイドの力強さがFE名古屋の強みだ 【(C)B.LEAGUE】

 愛知県には名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、シーホース三河、三遠ネオフェニックスという3つのB1クラブがある。ファイティングイーグルス名古屋は豊田通商のバスケ部をルーツとするB2クラブで、JBL2部、NBDLと2部暮らしも長く、陰に隠れる存在だった。

 しかし2016−17シーズンは中地区2位、17−18シーズンは中地区1位という成績を見れば、FE名古屋がB1昇格を目指せる地力を持っているのも分かる。「5000人収容のアリーナ」というB1の規定を満たせず、B1ライセンスはまだ得られていない。しかし、レギュラーシーズンの集客は初年度の1試合平均888人から、昨季は1605人とジャンプアップ。観客数の増加はプロクラブとしての地固めができている証明で、飛躍に向けた機は熟しつつある。

 渡邊竜二ヘッドコーチ(HC)がリーグNo.1と誇るチームの強みは「選手間の仲の良さ」だ。彼はこう説明する。

「選手同士がお互いに気を使い合える。逆に言うと、我の強い選手がいないというのも1つの特徴です」

おおよそ半数が「サラリーマン経験」を持つ

 チームには社会人経験のある選手が多く、チームのおおよそ半分が、かつてはオフィスでスーツを着ていたという。そういった経験、カルチャーがプロとして生きている部分はあるだろう。

 渡邊HCも「社会人として、ふさわしい行動をする。ふさわしい態度を取るということはチームの方針としても、みんなで言い聞かせています」と明かす。

 ただ、彼らがおとなしい、退屈な集団かというと決してそうではない。川辺泰三アシスタントコーチ(AC)が推したNo.1はベンチのにぎやかさだ。FE名古屋のベンチは川辺AC、坂東武幸マネジャーらの盛り上げもあり、よく声が出る。

 また、1階席ベンチ対角から、積極的に声を出しているグループの声援も、チームの盛り上がりに一役買っている。

 渡邊HCは彼らへの感謝をこう口にする。「試合を追うごとに(ファンが)熱くなっているのはわれわれも感じています。そういった後押しもあって、われわれのベンチがにぎやかになっているのかもしれません」

 昨季のFE名古屋はリーグ最高の3ポイントシュート成功率を誇り、当然そこを武器にしていた。しかし今シーズンは、シューターの福澤晃平が茨城ロボッツに移籍し、飛田浩明も負傷で出遅れている。チームとして、過去2シーズンとは違う取り組みも必要だろうし、他クラブの陣容を見ても、過去2季と同等の結果を残すことは容易でない。

渡邊HC「B1昇格はリーグ加入時からブレない目標」

 一方でギャレット・スタツ、ジョシュ・ホーキンソンのいる強力なインサイドは健在だ。渡邊HCは今季のプランをこう説明する。「インサイドを生かすためにも、走るバスケットを考えている。速くボールをプッシュして、そういった中からインサイドの飛び込みであったり、インサイドをおとりにしたアウトサイドだったり。速いバスケットに持ち込みたいと思っています」

 渡邊HCはこう言い切る。

「目標はもちろんリーグ優勝。B1昇格はリーグに入ったときから、ぶれない目標です」

 B1ライセンスを得るためのアリーナの建設は、クラブのオーナー、自治体などの動きが必要であり、慎重に進めなければならない。ただ、それについて渡邊HCは意気込む。

「アリーナの整備はわれわれ(現場)ではできないことですが、しっかり良い成績を残すことは、絶対に影響が及ぶと思っています。ライセンスがどうなろうと、まず勝ち続けることを目標にやっていこうと話をしています」

 FE名古屋はコート内だけでなく、ベンチ、客席も含めたすべてに勢いを感じるクラブだ。このエネルギーが良い形で未来につながることを願いたい。
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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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