初陣快勝の裏に「いぶし銀」の30代トリオ 森保ジャパンの若手を輝かせた名助演たち
個性の強い2列目の良さを引き出した1トップ
1トップで先発した小林は、2列目の選手たちとの連係には手応えを感じた様子 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
10分には室屋成の縦パスを受け、一瞬でターンをしてスピードに乗った。39分には遠藤のロビングパスを胸で落として南野のシュートを導き、後半15分にはスルーパスを繰り出して堂安のフィニッシュをお膳立てした。それらは、小林のクオリティーの高さを改めて証明するものだった。
ただし、自身のプレーについて小林は、青山と同様、満足してはいなかった。
「個性の強い2列目の選手たちとうまく関わりながらやれたと思う。あとは、逆に自分を生かしてもらう部分もこれからもうちょっと詰めていかないといけない」
たしかに、小林はこの日、シュートを1本しか放っていなかった。
システムが4−2−3−1だろうと、3−4−2−1だろうと、周りを生かすプレーはこの先も1トップに求められる重要な任務だろう。それをこなしたうえで、いかに自分のシュートシーンを作り出せるか――。
そのヒントは、開始早々の場面にあった。
1分に青山のスルーパスを引き出し、クロスを流し込んでいる。この日は青山がバランサーに徹していたから、ホットラインと言えるのは、この1本だけだった。しかし、中村憲剛のスルーパスを何度も受けてきた小林と、佐藤寿人に数えきれないほどのラストパスを送ってきた青山と、この2人の感性が合わないわけがないのだ。
青山と小林のホットライン開通――。これもまた、10月のパナマ戦、ウルグアイ戦に持ち越されたテーマのひとつだ。
森保監督から“特命”を受けていた守備の要
守備はもちろん、チームの盛り上げ役としてもやはり槙野の存在感は絶大 【Getty Images】
相手の攻撃陣をほとんど完璧に封じたうえでの完封勝利だったのだから、守備の選手としてこれほど気持ちの良いゲームはないだろう。
ほとんどの時間帯を相手陣内で過ごしていたから、ヒヤリとさせられるシーン自体が少なかったが、それでもわずかに迎えたピンチで危機察知能力を存分に働かせた。それが12分の場面だ。左サイドで佐々木翔が相手の突破を許し、切り返しからシュートまで持ち込まれたが、そこで身を投げ出して防いだのが槙野だったのだ。
「ああいうピンチは間違いなくあると思っていた。ピンチはみんなでカバーする。それも森保さんのコンセプトにありますから」
この日の槙野はほとんどノーミスだったと言っていい。鋭いアプローチでボールを奪い、カバーリングの意識も高かった。縦関係だった相手の2トップにはパートナーの三浦弦太、ボランチの青山と連係を取りながら対応し、相手FWをオフサイドポジションに置き去りにした。
もっとも、槙野はこの日、こうしたパフォーマンスと同じくらい重要な任務を指揮官から課せられていた。
「僕は自分のことよりも、周りの選手の良さを引き出すこと、チームに安定感をもたらすことを森保監督に求められていましたから」
そのため、トレーニング中には中島、佐々木、三浦と入念にコミュニケーションを取り、試合中にはコーチングを絶やさず、手をたたいて味方を鼓舞し続けた。
「若い選手たちが持っている良さを存分に引き出すための雰囲気作りを心がけました」と槙野は語ったが、コスタリカ戦の内容は、まさにそれが成功したことを証明するものだった。
槙野、青山、小林、GK東口順昭も含め、ベテラン勢が縁の下の力持ちとして、若く勢いのある選手たちのために舞台を整えた――。若いアタッカーたちが躍動したコスタリカ戦の内容は、そう表現することもできる。そして、それこそが代表チームのあるべき姿でもあるはずだ。
青山、小林、槙野、東口は、これまで代表チームにおいて脇役の色が濃かった男たちである。むろん、コスタリカ戦においても華やかなスポットライトを浴びたわけではないが、主役を担った若きアタッカーたちを陰で支え、“助演男優賞”並みの輝きを放ったのは、ベテランと呼ばれる年齢に差し掛かった30代の彼らだった。