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モドリッチがポニーから軍馬になるまで
紆余曲折の末に輝いたW杯最優秀選手

荒波を乗り越えてW杯ファイナルへ

ロシアW杯では3度の延長戦、2度のPK戦を勝ち抜いて決勝へ
ロシアW杯では3度の延長戦、2度のPK戦を勝ち抜いて決勝へ【Getty Images】

 そんな今大会だって、必ずしも順風満帆だったわけではない。最初の2試合は素晴らしいパフォーマンスで計2ゴールをたたき出した。2−0で勝利したナイジェリア戦ではPKを、アルゼンチンを3−0で一蹴した試合では見事なロングシュートをたたき込んだ。しかし、ベスト16のデンマーク戦ではチーム全体が精彩を欠き、延長後半11分に勝負を決定づけるPKのチャンスを得るも、大役を任された主将モドリッチのシュートはデンマークの守護神カスパー・シュマイケルの好守に阻まれた。これは致命的な失敗に思えた。だが、それでも強靭(きょうじん)な精神力を発揮し、PK戦では今度こそシュートを沈めて、チームを勝利に導いた。


 再びPK戦に突入したベスト8のロシア戦でも、確実にPKを決めた。そして迎えたイングランドとの準決勝では、いつにないほどモドリッチらしさが戻っていた。中盤でタクトを振るい、ハーフタイム以降はイングランドを完全に圧倒して延長戦の末に2−1で勝利した。さらに涙をのんだファイナルでさえ、モドリッチは間違いなく存在感を発揮していた。

「何より非常にいい奴なのさ」

どこか悲しげではあったが、最優秀選手賞を「誇らしく思う」とコメント
どこか悲しげではあったが、最優秀選手賞を「誇らしく思う」とコメント【Getty Images】

 奇妙に思われるかもしれないが、モドリッチは指折りの世界的MFにしてはゴール数とアシスト数が物足りない。理由は明白である。彼の真骨頂は、得点の2手前、はたまた3手前の仕事にあるのだ。まさに“攻撃の起点”と呼ぶにふさわしい選手である。さらに、決してボールを失わない類まれなテクニックを有しながら、献身的な守備もいとわず走り回ってくれる。あの体格で走り続けるため、マドリードでは「ポニー」の愛称をつけられた。


「モドリッチは間違いなく世界有数のMFだ」と、レアル・マドリーの元監督であるカルロ・アンチェロッティは語ったことがある。そして、このように要約した。


「素晴らしいテクニックを持ち、試合の流れも読めるし、何年もかけて築き上げた強いメンタリティーがある。何より非常にいい奴なのさ」


 W杯決勝戦の後、モドリッチは肩を落としつつも、どこか誇らしげだった。


「僕らは胸を張るべきだ。全てを出し切ったし、僕らの方がいいチームだったのだからね。不運なゴールで負けたに過ぎない。こういうことは起こり得るんだ。何もかもフランスに味方したようだった。僕らは今大会の自分たちの戦いに誇りを持つべきなんだ」


「今は複雑な感情だが、仕方ないと思う。あと一歩のところだったから、余計に辛い。大会期間中、僕らをサポートしてくれたファンに感謝を伝えたい。彼らのことを思うと申し訳ない気持ちになるね。それから、大会最優秀選手に選ばれたことも誇らしく思うし、チームメートに感謝したい。彼らなくして、僕が選ばれることはなかったからね」


 18年、レアル・マドリーでチャンピオンズリーグを制し、クロアチア代表でW杯決勝の舞台に立ち、大会MVPにも輝いたモドリッチ。その姿は、ポニーというよりも、むしろ軍馬にさえ見えた。


(翻訳:田島大/フットメディア)

ブラディミール・ノバク/Vladimir Novak

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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