清宮幸太郎の後継者が挑む最後の夏 野村大樹率いる早稲田実の陣容は!?

清水岳志

エース雪山を中心に充実の投手陣

昨年のセンバツでは先発も経験した池田。球速もアップし、エース雪山をバックアップする 【写真は共同】

 そしてあえて加えるなら、和泉監督は1年前にピッチャーの青図も描いていた。今年もエースナンバー「1」を背負うのは雪山幹太。昨年の夏から名門のマウンドを守っている。この雪山に関しても昨年春の関東大会は捕手で、投手にコンバートされたのは夏前。主戦として西東京の決勝まで奮闘した。今年の春の都大会、準々決勝の関東一戦。4番、プロ注目捕手の石橋康太を真っ向勝負で2三振を奪うなど貫禄もついた。「ストレートの質が違う。重くなりましたし、球速表示以上のキレで三振が取れる」と野村。エースというプライドを背負ってゲームを作る。

 ほかの投手陣も下級生の時から登板して経験を積んでいる。長身から投げ下ろす右上手の池田徹はストレートの球速が2年時よりも5キロ伸びたという。石井豪も左腕からのストレートに威力が増した。同じく左の赤嶺大哉も1年から場数を踏んでいる。また春はケガで投げなかったが、球速140キロを出す2年の伊藤大征も復帰。先発してゲームを作れるだろう。和泉監督は「打撃の昨年と違って今年は投手のチーム。経験者がいて、成長してる。下級生の時は恥もかいて、それがいい財産になってる。枚数がそろってきた」と春に話していた。

 野村も「タイプの違った投手陣で、スピードも130キロ台の後半から140キロ出るようになった。みんな完投能力もある。得意球が違うのでリードしていて楽しい」と捕手の時に語っている。

打線のキーマンは2番・野田

 そして、その楽しみは2年の捕手・長谷川航太に引き継がれることになった。今年の春に配置換えの構想があったようだが、長谷川がケガをして6月上旬になったようだ。野村は捕手より、守備の負担の軽いサードの方が打撃の結果がいい、という和泉監督の皮算用もありそうだ。

 内野の要、ショートには昨年からのレギュラー野田優人。セカンドにはサードから江本達彦が回る。外野陣はセンターの横山優斗は1年から出ている熟練者。レフトに茅野真太郎、ライトに打撃を生かして生沼弥真人が入る。

 打線は1番に足を生かせる茅野、2番の野田でチャンスを広げたい。「野村と野田が機能すればうちの打線になる」と和泉監督が言うように野田はキーになる。クリーンアップは生沼、野村、ファースト川原峻が順当な並びか。6番に江本、7番は春にクリーンアップを打った横山。8番の長谷川は春の都大会、日大鶴ケ丘のプロ注目右腕・勝又温史から代打でヒットを放つなど力はある。投手の雪山は昨年は2番や5番を打った怖いバッター。9番に入れば上位に切れ目なく回る打線だ。控えに回る斎藤恵太は秋に4番を打ったし、板谷竜太、舘祐作、毛塚悠伸も春の公式戦に出場した。

第1回出場校が狙う節目の甲子園出場

 部員が93人と増えた。近年では例のない大所帯を率いる野村キャプテンも青図を描いているはずだ。チームのキャッチフレーズは「一闘勝笑(いっとうしょうしょう) 挑戦者であれ」。1に拘り、1位を目指す。最後は勝って笑おう。

「自分はつなぐことしか考えてません。今年は昨年以上に、みんながつなぐ意識が強い打線。そして経験豊富でここまでそろった投手陣もそんなにないと思います」

 第1回の全国大会に出場している早稲田実。節目の年だ。100回目の夏の真っ青な空に監督と主将の、いや、93人の描いたそれぞれの予想図は完成するだろうか。西東京大会の初戦の相手は早大学院。兄弟対決だ。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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