すでにチーム100盗塁突破! 阪神2軍が『超積極的』に生まれ変わる

岡本育子

けん引するのは新人コンビ

「レッドスター」赤星憲広の背番号53を受け継ぐドラフト4位ルーキー・島田。矢野2軍監督が名指しで絶賛する場面も 【写真は共同】

「島田もやっと、ここにきて思いきりのいい走塁になってきた。熊谷ほどの思いきりがなかったし、スライディングも弱かったけど。16日の三盗なんか見事だった。意識はどんどん浸透していると思う」
 
 矢野監督の口から名前が出た、ドラフト3位ルーキーの熊谷敬宥と4位の島田海吏がけん引したといっても過言ではない。まず熊谷が5月中旬にリーグ断トツの20盗塁を決めて1軍へ昇格すると、開幕を1軍で迎えながら4月初めに抹消された島田が追い上げ、ついに1個差まで迫った。7月1日現在、熊谷20、島田19、さらに江越大賀が15と阪神勢がリーグ上位を独占している。

 島田は言う。

「熊谷の数字は、あまり気にしていません。逆に僕はまだまだ足りないと思います。失敗も多いので」

 5月に入ってから量産できている要因は?

「スライディングの強さですね。今はスピードを保ったまま滑れています」

 矢野監督が絶賛した三盗とは先月16日、中日戦の5回に板山祐太郎と決めた重盗。三塁へ滑り込んだ島田も「多分アウトのタイミングだったのがセーフと言われた。自信になりました」と振り返る。
 
 そして「技術以外でも、絶対に決めてやる!という気持ち。迷ったらダメですね。成功している時は気持ちが強い。そこは追求していきたい」と語り、「一日でも早く上で野球ができるように頑張ります!」と気持ちを新たにした。

 一方の熊谷は、自身が1軍滞在中に追い上げてきた島田に「ズルいっすよねえ!」と笑ったあと「それは冗談ですけど、僕はこっちでアピールしたいです」と同じく決意表明。2人そろって甲子園を駆け回る日も近いだろう。

シーズン最多記録は156個

 藤本敦士2軍守備走塁コーチに、『超積極的』というテーマが選手にもたらした変化を聞いてみた。

「今までは盗塁のサインが出て漠然とスタートを切っていたようなところもあったけど、どうすれば決められるかと考えてバッテリーの癖や動き、配球を読んだりして準備することが増えた」
 
 たとえアウトになっても次の一歩につながる?

「それは2軍だからできること。ここで100盗塁を超えているからって、100パーセント1軍で通用するわけじゃない。でも練習でやっていることを試合でトライして失敗しても、そこから話し合える。スタートが遅い! あれは行けた! と怒るんじゃなくて」と藤本コーチ。今は「盗塁のサインが出たとこで、やっと来たか! 待っていました! いらっしゃい! という状態。準備が浸透した」と効果を実感することも多い。
 
 ちなみにウエスタン・リーグのシーズン最多盗塁は13年のソフトバンクが記録した156個。驚異的な数字だが、その時は60試合の時点で88個。今季の阪神は同じ試合数を消化して98個と上回っていた。さらに警戒が厳しくなる中、そこを突破してこそレベルアップができると、監督やコーチは期待をかける。すべては1軍で活躍するために――。

(取材協力:スポーツニッポン新聞社大阪本社)

2/2ページ

著者プロフィール

兵庫県加古川市出身。プロ野球ナイター中継や、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって30年以上。ウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それから阪神の2軍を取材するようになり、はや20年を超える。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント