西野監督「隠している部分もある」 国際親善試合 パラグアイ戦後の会見

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まったく出していないものも当然ある

「完成度を問われれば、正直なところ(満足感は)まったく感じていない」と西野監督 【写真:ロイター/アフロ】

──後半途中から2トップにしたようだが、その狙いは? その後、香川をトップ下に戻したが、判断の理由は?

 岡崎と武藤の関係をどう捉えるか。それと香川真司のポジション。できれば武藤と岡崎を2トップ的なポジションで、ディフェンス時は少し縦関係にして(使いたかった)。そうなると香川が中盤のボックスの右になる。それは状況に対応して、と考えていました。武藤を右に出して、4−2−3−1で香川のトップ下。1−1の状況で、これはオフェンシブに2トップ(にしたい)というところで、追加点が入って2−1になったので大迫(勇也)を投入。得点を狙いにいくシフトを考えて、その際に香川は右のサイドに出しました。岡崎は状態のこともあってあまり長く引っ張りたくなかったので、原口(元気)を入れて、香川を(トップ下に)戻した。状況がきっ抗していた中で(点を)取りにいく瞬間に入れ替わったので、そのまま入れましたけれど。どうしても香川は、サイドに出すとディフェンスの負担が大きくなるのでどうかなと考えたんですけれど、オフェンスに対しての積極的なシフトチェンジで、多少リスクがありましたが右に出してから戻しました。

──3試合が終わったが、コロンビア戦に向けて練習試合を組む予定はあるか。それからいろいろなオプションを試してきたが、コロンビアのコーチングスタッフ(編注:この日はコロンビア代表のコーチを務めるエステバン・カンビアッソが客席にいた)が視察に来ている中で、試すことと隠すことのバランスをどう考えているか?(飯尾篤史/フリーランス)

 今日までの3試合で、常にテストのためシステムもキャスティングも変えています。スイス戦からガラッと変わったメンバーを見て、(彼らが)どう捉えたかというのもあります。リスタートでも、まったくやっていないところは当然、隠したいですし。コロンビアとすれば捉えづらい日本を見ているのではないかと思います。まったく出していないものも当然あるわけなので。

 すべてはコロンビア戦に向けて、オープンにできる部分と、出したくない部分というのはあるわけなので。ただ、こういう厳しいゲームの中で、トライしたい部分、リスタートを含めて隠している部分もあるんですが、そういう中のものは、これからチーム内でさらに詰めていきたいと思います。(練習試合については)まったく予定にないです。

──スイス戦での前線と守備でのギャップは解消されたか。また3バックと4バックを試しているが、4バックにより手応えを感じているのか?

 ディフェンスのメリハリ、攻撃から守備に切り替わったら無条件にボールに対するディフェンスをかけようと(している)。かかっている部分と、(マークを)はがされた部分の中で、2つ目のポジションをどう取るかというところで、前と後ろの意識のズレがあった。

 今日は岡崎と香川がディフェンスに入る、2人の良いコンビネーションの方向付けのチェイシングやプレスのタイミングが前半は良くて、ロングボールを引き出せていたので、その分、修正もできた。はがされた状況の中で、自エンドに全員がスプリントで戻ってブロックを作る。岡崎のそういうディフェンスに対する意識というのは、非常に精度が高い中でやれている、はっきりした方向付けができる。

 そこからプレスをかけられるというところで、前後のDFとの意識はしっかり合っていたと思います。はがされて、全員が自エンドに戻って、という時間帯もありましたし。決してそれが悪い状況ではなくて、コロンビアを考えたら、おそらくボール保持をされる時間帯も考えないといけない。そのへんは非常に修正できたし、前線の意識は後ろと合っていたと思います。

(システムについては)今日も6枚(交代の)カードがあった。パラグアイはリードされるとパワープレーを仕掛けてくるスタイルがあるので、それで(相手の)ベンチを見ていたんですけれど、(パワープレー要員が)入ってこなかったのでそのままにしましたが、最終ラインに1枚入れることも考えました。パラグアイがセンターに出してくれば、残り10(分)でも3−1の状況で逃げられる、安定させるための5バックというのも考えていました。本戦になっても、そういうケースもある。ただ長谷部(誠)と吉田(麻也)には「今日はノーチャンス」と伝えていました。向こうも動いてこなかったのでそのままにしましたが(4バックと3バックの)併用は考えていますし、4バックで結果が出たからということではなくて、(3バックも)持っておきたいオプションの1つです。

岡崎、香川、乾は「連動してやれていた」

ゴールを決めた乾と言葉を交わす西野監督 【Getty Images】

──山口蛍をキャプテンに選んだ理由は? それから昌子源と植田直通のコンビは代表では初めてだが、その評価は?(宇都宮徹壱/フリーランス)

 山口のキャプテンは、私が本人に伝えない中でミーティングで指名しました。その時の選手のリアクションが、乾と昌子と本田(圭佑)が「うっ」という表情をした瞬間がありましたが(苦笑)、「異議はあるか?」と聞いたらなかったので。彼は(キャプテンの資質が)十分でないかもしれません。(代表では)そういう経験もないし。ただ間違いなく、彼はそういう立場で、そういう役割をチームの中で果たさないといけない選手だと思いますし、そういうことになれば間違いなく果たしてくれるリーダー性は十分に備えていると思います。異議があったらどうしようと思いましたが、なかったので。

 センターバック(CB)に関しては、自分のチーム(鹿島アントラーズ)でやっていますし、あうんの(呼吸という)ところもあるし、距離感もコーチングを出さなくても(保てる)というところもありますし、チャレンジとカバーの意識も高い。これが、このレベルで通用するかしないかというところでやってみて、CBの2人はある程度、自信を持てたんじゃないかと思います。

──スイス戦後、チームの完成度については「パラグアイ戦が終わってから」と言っていた。今日の試合を経た上で、完成度はどれくらいだと思うか。また、本番までに思い描くチームに間に合うという自信はあるか?

 完成度を問われれば、正直なところ(満足感は)まったく感じていないです。やはり、もっともっと選手の良さを引き出した上で、可能性が高い完成形があるんだろうと思っています。それを目指さなければいけないんですけれど。

 段階的には、ガーナ戦で従来やっていないシステム(3−4−2−1)をトライさせて、将来そういう対応をしないといけないというゲームがあり、スイス戦ではガーナ戦を踏まえて、強豪は強豪にどうやってディフェンスと攻撃をしていくのか、という中で修正をわずかな時間の中でかけて、(ボールを)取った瞬間の守から攻への切り替えの部分。ガーナ戦でミスが多かった、そういう切り替えの瞬間を修正できて、なおかつアタッキングサードの狙いを取れて戦えた。

 少しずつ段階的な修正がチームの中でとれて、勝利をつかめた。非常に成長というか、チームのステップアップを感じてはいるんですけれど、完成形と言われると、おそらくもっと高いものを急激に求めていかないといけない。でも彼らは、そういう代表選手の中では、劇的に変われる瞬間というのは今日の勝利や、ある程度ステップアップしている感じとれるならば、コロンビア戦に対してまた違う成長の角度が感じられるかもしれない。それを求めていきたいと思います。

──試合前に「高いレベルでの新しい可能性を探りたい」と言っていたが、それは何だったか? それと得点の瞬間、あまり喜んでいる様子が見られなかったが?

 その(得点の)瞬間は、次のことを考えていましたね。乾については、スパイクのことで冗談を言っていたので、一言だけ言いましたけど。今日、可能性を探りたいと思ったのは、チームのポイントとしてフォーカスした「アタッキングサードで点が取れない」「じゃあ、決定機をどうしたらいいか」ではなくて、チャンスをいかに増やしていくか、意識をどう高めていくか、選手1人1人のポジションをどう考えていくか。その修正をかけた中で可能性を発揮できるかというところを求めていました。それに応えてくれた選手たちの可能性にも満足しています。

 それと同時に、選手1人1人、岡崎、香川、乾といった選手たちが、今までキャンプで積み上げてきましたけれど、今日のゲームでどの程度のパフォーマンスがとれるかというところは一番、それも高いレベルでパフォーマンスを出してくれれば、という期待は非常にありました。けがとの戦いもありましたが、彼らが良い状態で出てくれればいいなと。それも予想以上に、良いパフォーマンスを出し切れて、連動してやれていたので、グループとして戦えたというのは収穫というか、非常に満足しています。

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