F1スペインGPで見えた勢力図 メルセデスが一歩リード、名門は迷走

田口浩次

高速向きのマシン、低速向きのマシン

トロロッソはハートレー(写真)が完走。ガスリーはアクシデントに巻き込まれてリタイアとなった 【写真:ロイター/アフロ】

 ここまでは今シーズンの勢力図を分析してきたが、次にマシン毎の特性があると言われている得手不得手について分析したい。例えば、昨シーズン、マクラーレン・ホンダは明らかにホンダPUが遅いと言われつつも、マクラーレンはモナコやシンガポールといったストリートコースでは、それなりの結果が出ていた。それはストリートコースではPUの差が少ないからだというのも、一つの事実ではあるのだが、それ以上にシャシーの特性が低速サーキット寄りなのか、高速サーキット寄りなのか、という潜在的なマシンキャラクターによるものが大きい。

 このマシンキャラクターというのは曲者で、マシンをデザインするデザイナーやエンジニアたちは、別に高速サーキット向けマシンや低速サーキット向けマシンを作りたいわけではない。誰もが満遍なく速いマシン開発を目指すのだが、なぜか出来上がったマシンにはキャラクターがある。これはエンジニアやデザイナーに聞いても、答えは同じだ。しかし、不思議なことにデザイナー毎に何故か低速に強いマシンに仕上がったり、高速に強いマシンに仕上がったりと個性が出る。つまり、デザイナー自身も見えていない部分で、マシンにキャラクターを与えているのだ。

 その一例として挙げられるのが、2009年のベルギーGP。ベルギーGPはイタリアGPと並び、比較的ドラッグが少ない高速セッティングにするコース。高速セッティングにも関わらず、低速コーナーでそれなりにマシングリップが出せるマシンが速い。そして、この09年はブローディフューザーと呼ばれる、床下を抜ける空気でダウンフォースを生むレギュレーションの穴を見つけたブラウンが圧倒的な速さを示し、そこにウイリアムズ、トヨタ、レッドブルが同じように抜け穴を使って追いかける展開だった。にも関わらず、ポールポジションはフォース・インディアが獲得。また、同じ09年のイタリアGPでも、フォース・インディアが予選2位につけていて、この年のフォース・インディアは明らかに高速サーキットでパフォーマンスを発揮するマシンキャラクターだった。

 逆にストリートコースのモナコGPを振り返ると、16年、17年と、まるで戦闘力がなかったマクラーレン・ホンダは、このモナコではQ3に入っていて、同じストリートコースのシンガポールGPでも、昨シーズン2台がQ3に入った。明らかに低速サーキットで実力を発揮するマシンキャラクターだったと言える。

サーキットとマシンの特性から見える有利不利

 こうしたマシンキャラクターはモナコGPやイタリアGPといった極端な特徴のコースで見えてくるのだが、本来マシンキャラクターに合っていないコースでも、それなりに走れることがコンスタントにポイントを獲得できる条件となってくる。

 そして、このスペインGPで、マシンキャラクターをある程度判断する材料として使えるのが、予選ベストセクタータイムだ。これは、サーキットを3分割し、それぞれのポイントでタイム計測するデータ。スペインGPの場合は、メインストレートが長く配分されたセクター1は比較的高速、高速コーナーと中低速コーナーを組み合わせたセクター2、そして低速コーナーとシケインが組み合わされた明らかに低速となる部分が多いセクター3と分かれている。

 このセクタータイムで、セクター1よりセクター3で順位が大きく落ち込んでいれば、より高速向き、逆にセクター3よりセクター1の順位が大きく落ちていれば、より低速向きと読み取れる。それを踏まえて予選セクタータイムを見ると、ハースのマシンはセクター1の方が明らかに速く、マクラーレンやレッドブルのマシンはセクター3が明らかに速いといった特徴が見えてくる。

 こうしたマシンキャラクターを分析することで、サーキット毎によりどのチームが有利なのか展開が読める。そうした予想をする楽しみ方も、F1をより深く楽しむ方法の一つかもしれない。

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