ヤクルト坂口の新たな挑戦 慣れない守備も「ありがたい」
ファースト守備は中学生以来
今季はファーストでの先発する機会も多い坂口。守備については「日々少しずつでも前進していけたら」と語る 【写真は共同】
つまり外野の3つのポジションに、レギュラークラスの選手5人がひしめくことになる。そこで首脳陣が打ち出したのが、坂口のファーストでの起用だった。オリックス時代には4年連続でゴールデングラブ賞に輝いた名手にとっては、まさに晴天の霹靂(へきれき)。しかも、ファーストを守るのは中学生以来となれば、なおさらだろう。
それでも坂口は、試合に出るためにはポジションにはこだわらなかった。「自分にとってもバリエーションが増えるチャンスだし、そういうものを与えていただけるというのは、プレーヤーとしてはありがたいこと」と、難なくこれを受け入れた。
本来なら正一塁手の畠山和洋が万全の状態ではなかったため、開幕戦に「6番・ファースト」で出場した坂口は、ここまで30試合中23試合にファーストで先発。ファーストの練習に取り組んだのは春季キャンプの途中からであり、4月3日の広島戦では自身の失策が失点につながることもあったが、準備期間の短さを言い訳にはしない。
「期間が短いからとかは言い訳にならないと思うんでね。試合に出るためには与えられた仕事というのがあるわけで、なんとか迷惑をかけない程度にはうまくなりたいという思いはあります。そんなに簡単に慣れたらもともとの内野手に失礼やと思うし、そんなに簡単に慣れるポジションでもないと思うんで、日々少しずつでも前進していけたらいいなと思います」
坂口を「向上心が強いよね」と評するのは、土橋勝征内野守備走塁コーチ。「今まで十何年も内野なんかやったことなかったのにね。頑張ってるよ、彼は」と、日々の努力を怠らないその姿勢を称える。
「継続することが一番大事」
その坂口の目には、4年ぶりに復帰した小川淳司監督の下で「変革」を目指す現在のチームは、どう映っているのか。
「変わろうとしてますし、変わってきているとも思います。ただ、変わろうとしているからとか、変わってきたからとかで、始めて何カ月かですぐに変われたら何も苦労することはないと思うので……。やっぱり何事も継続することが一番大事だと思いますし、継続してみんなが変わろうという意識を持ち続けることが、ゆくゆく変化につながっていくんだと思っています」
ゴールデンウイークの最後は、小川監督がことあるごとに口にしている「執念」を体現したようなサヨナラ勝ちで締めくくったものの、この9連戦は3勝6敗。4月30日以降は、昨年の定位置だった最下位に沈んでいる。だが、ヤクルトの「変革」もまだ道半ば。坂口が言うように、そう簡単に変われたら苦労はない。
社会人出身の新人・松本直樹や高卒2年目の古賀優大にスタメンマスクを被らせ、やはり高卒2年目の梅野雄吾を先発に抜擢(ばってき)するなど、チームの底上げを見据えた積極的な若手の登用も目立つ。これからも勝つことも負けることもあるだろうが、大事なのはそれをどう糧にしていくかだ。