好調の仙台は過去2シーズンと何が違う? 仕込みが功を奏し、開幕ダッシュに成功
戦い方の幅が広がり、野津田ら新戦力も躍動
昨季の途中にチームに加わった野津田は主力として活躍中 【(C)J.LEAGUE】
既存選手はより高い濃度で基本戦術を体に染み込ませ、そしてそこに戦術に合った新戦力が加わったことで、戦い方の幅は広がった。たとえば昨季の途中に加わった野津田岳人は、仙台では前所属のサンフレッチェ広島時代に主戦場としていたシャドーのポジションでプレーしている。「ポジションとしてはやり慣れているところ。ただ、ここ(仙台)での動き方など、新しく身に付けることも多かった」。野津田はプレーエリアがそれまでよりも広くなるという変化を受け入れ、主力として活躍している。さらに今季は、ボランチでもプレーすることが増えた。
また、今季より加わった阿部拓馬は「最初は動き方のところで、まだしっくりとはいかなかったけれど、試合を重ねるごとにイメージが合ってきている感触があります」と話す。自身の武器である力強いドリブルを生かしながら、周囲との連係で自身のゴールや味方のお膳立てといった仕事を果たすようになった。
そして、流動性の高いポジショニングの基本となる“立ち位置”も、3−4−2−1と3−5−2を使い分けるようになった。今季の開幕戦となった柏レイソル戦では3−5−2で試合をスタート。前半は攻撃面でぎこちなさはあったものの、中盤のバランスを整理してインサイドハーフが前進しやすくなるよう修正した後半は、相手を押し込んで1−0で勝利した。
続く第2節のFC東京戦では、3−4−2−1でスタートしたが、相手の中盤と4−4−2とのかみ合わせが悪かったことから、途中で3−5−2にシステムを変更。「ピッチ内の選手でも話し合いましたし、監督の指示もあって変えました。ゲームの中で修正できたことは、去年からの大きな進歩でした」。そう石原直樹が話すように柔軟性を見せたチームは、この試合も1−0で制した。「昨季のように自分たちのことでいっぱいになっていた状態から、相手にも目が向いて、対応できるようになってきた」と、渡邉監督はチームの進歩を感じている。
連戦でも今までの戦い方を貫けるか
川崎戦では守備の中心である大岩を欠くも、相手のシュートを4本に抑え、無失点で切り抜けた 【(C)J.LEAGUE】
仙台はこの日程の中でも、まずまずの戦いぶりを見せている。第6節の浦和レッズ戦では序盤の失点が響き今季初黒星を喫したものの、試合の流れをつかむと、主導権を握って相手を押し込んだ。浦和には昨季の同時期に、相手への対策として3−5−2を採用して挑んだが、機能性を欠き0−7の大敗を喫した苦い経験がある。
前述の川崎戦では、前年のJ1王者との戦いにもかかわらず、守備の中心である大岩一貴を出場停止で欠く苦しい状況だったが、代わって出場した常田克人を組みこんだ布陣が機能。相手をシュート4本の無得点に抑え込んだばかりか「大きなボールに逃げてしまった」と相手の鬼木達監督が悔やんだように、相手の機能性を削ぐ戦い方ができていた。昨季は川崎相手に2−0からの逆転負けを喫するなど、公式戦4度の戦いで1勝3敗と苦い経験をしたが、「われわれの成長を示せたゲーム」と渡邉監督は胸を張った。
間違いなく、成長は示せている。その一方で、この2試合は昨シーズンと比べて内容としては良かったものの、勝てなかったこともまた事実だ。だからこそ、仙台のスタイルにはまだまだ成長や発展の余地がある。試合ごとに出る課題と向き合い、選手が入れ替わっても基本的な戦い方を実践する部分は忘れず、相手への対応など変えていくべき部分では改良を重ねていくことで、仙台はさらに成長を続けるだろう。