【全日本プロレス】伝統と革新で彩られた全日本CCの歴史 18年はノア丸藤初参戦などで期待感大

高木裕美

宮原は三冠王者としてのCC優勝目指す

鶴田、ハンセン、三沢といったレジェンドに並ぶためにも、三冠王者としてCC優勝を目指す宮原健斗 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 こうして歴代優勝者の名前を挙げてみると、いかに全日本マットが激動の時代を駆け抜け、歴史と伝統と革新のはざまで揺れてきたのかが分かるだろう。一時期は「チャンピオン・カーニバル」とは名ばかりの、寄せ集め的な顔ぶれとなっていたこともあったが、今年のCC出場者は、全員が「チャンピオン経験者」。他団体の大物選手も多数エントリーし、これまでにない顔合わせが見られる新鮮さと、熱戦・好勝負への期待感で、プロレスファンの中では、早くも話題沸騰中だ。

 Aブロックの最注目は、新三冠ヘビー級王者・宮原健斗だろう。宮原は16年、17年も三冠王者としてCCに出場していながら、2年連続で決勝進出すら果たせず。その上、所属選手ではない外敵に優勝をさらわれる結果となっている。これまで、三冠王者としてCCを制覇したのは、鶴田(91年)、ハンセン(92年)、三沢(98年)、ベイダー(99年)、小橋(00年)、天龍(01年)の6選手のみ。このそうそうたる顔ぶれに並ぶためには、徹底的にマークされている状況の中、リーグ戦で並み居る強豪を撃破し続けなければならない。

 天王山となるのは、4.15福岡・博多スターレーンでの前々王者・石川戦と、4.22愛知・名古屋国際会議場での前王者ジョー・ドーリング戦だろう。石川とは昨年、5.21後楽園と8.27両国国技館の2回、三冠王座を賭けて対戦し、1勝1敗。ドーリングとは、今年3.25さいたまスーパーアリーナ(コミュニティアリーナ)で戦ったばかりで、宮原が17分34秒、シャットダウンスープレックスで三冠王座を奪取している。この2選手に加え、さらに同ブロックには、前世界タッグ王者のボディガー、KAIENTAI−DOJOの火野裕士、DRAGON GATEの鷹木信悟といった、屈強な肉体派レスラーもエントリー。下克上に燃える若手の野村直矢や、現世界タッグ王者の崔領二も、少しでもスキを見せようなものなら、一気呵成にかみ付いてくること確実で、宮原にとっては、一瞬たりとも気を抜けないシリーズとなりそうだ。

ノア丸藤がCC初参戦 4.25後楽園で秋山と激突

今回の注目はノア丸藤のCC初参戦。4.25後楽園での秋山との対決は第注目だ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 Bブロックの最注目は、プロレスリング・ノア所属で、今回が初参加となる丸藤正道だろう。丸藤はかつて三沢の付き人を務め、98年に全日本でデビュー。00年に共にノアに移籍し、GHC4大タイトル(+α)をすべて獲得するなど、エースとして成長した。また、08年には古巣・全日本で世界ジュニアヘビー級王座も獲得。ノアでは「グローバル・リーグ戦2015」で優勝しているほか、12年、16年には新日本の「G1 CLIMAX」にも参戦経験があり、シングルリーグ戦の戦い方自体は熟知している。

 過去に3度もプロレス大賞で年間最高賞を獲得(06年対KENTA、08年対近藤修司、16年対オカダ・カズチカ)している“ベストバウトメーカー”丸藤との絡みは、どれも刺激的になりそうだが、やはり、もっとも気になるのは秋山との公式戦(4.25後楽園)だろう。丸藤はノア時代、04年10月に秋山から場外リングアウト勝ちでグローバル・ハードコア・クラウン(白GHC)を奪取。そして、06年9.9武道館では完璧首固めで勝利し、GHCヘビー級王座も戴冠している。その後、秋山は12年末にノアを退団して古巣・全日本に移籍し、13年には新社長に就任。その大胆な外交手腕と若手の育成術で団体の人気をV字回復させつつあるが、ノアを守る丸藤としては、正直、おもしろいはずがない。9.1東京・両国国技館での自身のデビュー20周年記念大会を成功させるためにも、過去の因縁を振り切った上で、全日本で栄冠をつかみ、ノアへの大きな手土産をGETしたいところだろう。

 Bブロックにはほかにも、諏訪魔、ゼウス、KAI、吉江豊、ヨシタツ、ディラン・ジェイムスといった顔ぶれも参加。意外と1度しか優勝経験のない諏訪魔、2年前は準優勝で涙を飲んだゼウス、13年は準優勝のKAI、2年ぶりのエントリーで全日本マット定着を狙う吉江、元米WWEスーパースターのヨシタツ、かつてはジェームス・ライディーンの名でZERO1マットを席巻した現世界タッグ王者のジェイムスらの奮起にも期待大。また、一度は「卒業」を宣言しながら、今回、2年ぶりのエントリーを決意した秋山の「覚悟」も見届けたい。

 これまでも数々のドラマを生み出してきた春の祭典。過去の因縁や選手の関係性を思い起こしながら楽しむもよし、この機会に他団体の選手に目を向けるもよし、難しいこと抜きに選手のパワーやテクニックを堪能するもよし。動画配信サービス「全日本プロレスTV」で全大会の配信も行われることから、約1カ月間、バラエティー豊かな顔合わせを思う存分味わうことができそうだ。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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