豪州を苦しめたコロンビアの両SB 多彩な攻撃に対し、日本はどう対処する?

タカ植松

出色の動きを見せていた左SBのモジカ

左SBのモジカは、果敢な攻め上がりからコロンビアの好機を演出 【Getty Images】

 オーストラリアは超攻撃的な相手両SBの裏のスペースを使いたかったが、それがまったくできなかった。というのも、右SBのジョシュア・リズドン(WSW)とサイドハーフのマシュー・レッキー(ヘルタ)、左SBのアジス・ベヒッチ(ブルサスポル)、この試合では左サイドで先発したアンドリュー・ナバウト(浦和レッズ)といった面々が、相手の運動量豊富な両SBと、それに連動した多彩な攻撃への対応に追われて、なかなか自分たちの形に持ち込めなかったことに起因する。本来であれば攻め上がって前線にボールを供給する役目のリズドン、ベヒッチの両SBが守備に追われて攻撃に絡めなかったのだから、ゴールは遠かった。

 サッカルーズの攻撃の生命線とも言うべきサイドアタックが機能しなかったのは、コロンビアの両SBが2人で13本のクロスを上げたのに対して、オーストラリアの2人はわずか3本という数字に如実に表れた。また、左右のアウトサイドにたまにボールが入ってもフォローがなくボールを奪われるシーンが続き、特に左サイドのナバウトは良いところなしに終わった。

 日本に置き換えれば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が誰を起用するかは定かではないが、例えば右サイドなら本田圭佑、久保裕也、左なら原口元気、乾貴士といった選手がしっかりボールを保持して攻めの起点を作り、コロンビアのSBの攻め上がりを抑制して、そこに両SBが有機的に絡んで攻め上がっていくという形が必要になってくる。

 この日のコロンビアで出色の動きを見せていたのが、左SBのモジカだ。フランス戦ではフランク・ファブロ(ボカ・ジュニアーズ)が同ポジションで先発したことを考えると、まだ絶対的な選手ではないのだろうが、この日の動きはとにかく素晴らしかった。すさまじいほどの運動量で左サイドを攻守に駆け回り、有効なクロスを前線に何度も供給した。日本では順調にいけば右SBの酒井宏樹がマッチアップすることになるが、もしこの対決が実現すれば、両者のせめぎ合いは見応えがあるものになりそうだ。

本田圭佑と中島翔哉の存在が鍵を握る?

ユベントスで活躍するクアドラード。W杯本番には万全で臨んでくるはず 【Getty Images】

 攻撃陣ではフランス戦できっちりと結果を示したファルカオとハメス・ロドリゲス、両エースの存在感が、オーストラリア戦では打って変わったように希薄だった。その分、前線ではカルロス・バッカ(ビジャレアル)の積極性が際立った。また、後半からファルカオに変わって入った若いミゲル・ボルハ(パルメイラス)は、後半だけでPKを含む5本のシュートを放つなど、どんな形からでもゴールに迫るアグレッシブな姿勢が数字にも表れた。ボルハはファルカオやバッカとは違ったタイプの選手だけに、そのフィニッシュの精度が高まってくると、攻撃陣にさらなる厚みをもたらす貴重な駒になりそうだ。

 そんな攻撃陣で忘れてはならないのが、コロンビア代表の金看板の1人として要警戒の“韋駄天”フアン・クアドラード(ユベントス)。今回は、恥骨炎の手術からの回復を優先するということで選出外だったが、ユベントスでは31日にミラン戦で交代出場し、いきなり決勝点を挙げる活躍を見せるなど、完全復活は間近。コロンビアの戦力的な上積みは大きいだけに、ますます日本にとっては厄介な相手になってくる。

 オーストラリアのCBは、現時点でのファーストチョイスであるトレント・セインズベリー(グラスホッパー)とマシュー・ヤーマン(水原三星ブルーウィングス)のペアが欠場。本職ではないマーク・ミリガン(アル・アハリ)とミロシュ・デゲネク(横浜F・マリノス)という24日のノルウェー戦後に監督にやり玉に挙げられた2人で臨んだが、この日は相手のミスに助けられ、何とか無失点で乗り切った。日本のDF陣は総じてオーストラリアのそれよりも質は高いので、豊富な運動量を持ち、連動した動きの中でポジションチェンジを頻繁に行うコロンビアの攻撃陣に対して、マークの受け渡しなどに気を付けて対応できれば、大量失点というイメージは描きにくい。

 とはいっても、全体を見渡しての彼我(ひが)の戦力関係では相手優位は動かない。となれば、とにかくミスでボールを奪われないこと。そして、少ないチャンスを確実に生かすことが大事になる。これらの当たり前のことは、日本にとって何かの折に問題として出てくる宿痾(しゅくあ)でもある。本番で極力その症状を出さないようにするならば、豊富な経験を持つ胆力のある選手を起用するか、恐れを知らない若者をぶつけていくかのいずれもが必要となる。前者では本田、後者では中島翔哉。この2人が鍵になるのではないかという気がする。

 日頃、サッカルーズを追う身としてオーストラリアとコロンビアの対戦を見ての所感を記したが、これが祖国・日本のファンがW杯であいまみえるライバルの現況を知り、日本のW杯ロシア大会の可能性を探る一助になれば本望だ。

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著者プロフィール

1974年福岡県生まれ。豪州ブリスベン在住。中高はボールをうまく足でコントロールできないなら手でというだけの理由でハンドボール部に所属。浪人で上京、草創期のJリーグや代表戦に足しげく通う。一所に落ち着けない20代を駆け抜け、30歳目前にして03年に豪州に渡る。豪州最大の邦字紙・日豪プレスで勤務、サッカー関連記事を担当。07年からはフリーランスとして活動する。日豪プレス連載の「日豪サッカー新時代」は、豪州サッカー愛好者にマニアックな支持を集め、好評を博している

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