イチローの2018年が開幕 復帰の第1打席、鳴り止まぬ大歓声

丹羽政善

開幕前日「こんなギフトがあるなんて」

マリナーズ復帰後の第1打席はファーストゴロだった 【写真は共同】

「途中から入ってきてけがをして――という選手に対する扱いではないですからね、これは。僕が20歳のとき、仰木監督がそういう思いにさせてくれたんですけど……それに近い感覚があるね、これは。この判断は……。びっくりしました」

 一言一言、イチローはかみしめるように言葉を継ぐ。覚悟もしていただけに、実感がこもる。

「まず、このセーフコ・フィールドに立つことが大きな目標でしたから、途中からはね」
 だからこそ、こんな言葉が漏れたのだろうか。

「こんなギフトがあるなんて思いもよらなかったですから。こんなにこう、人の思いに応えたい、というような気持ちになったことなんて、久しぶりだなと思いますね」

 実は、仰木監督から、「自分のやることをやれ」と言われた時も、「この人のために頑張りたいというか、そういう思いが芽生えた」と振り返ったが、今回も、周囲のサポートも含めて自分に向けられた期待を読み取った時、その思いに応えたい、そんな気持ちが、心をよぎったのではないか。

さざ波のように立ち上がるファン

 そうした経緯を経て迎えた29日の開幕――。イチローの心が、再び動いたとしても不思議はない。

 試合前のセレモニー。9番打者ということもあって、イチローは野手の最後で呼ばれたが、その影がセンターの大型スクリーンに映し出されただけで、歓声が上がった。

 復帰初打席は3回無死。2083日ぶりにマリナーズのユニホームを着てセーフコ・フィールドの打席に入ると、さざ波のようにファンが立ち上がり、やがて球場全体に広がると、声援が調和する。

 奇しくも5年半前、ヤンキースにトレードされた直後の打席も、セーフコ・フィールドだった。あの時はファンが立って拍手を送ると、イチローは2度、深々と頭を下げた。

 前回は別れ。今回は再会。現象そのものは同じでも、まるで意味合いが違うそれをイチローはどう背中で感じ取ったのか。

 立ったままイチローの打席を見つめるファン。場内に鳴り響くイチローコール。捕手がなかなか座ろうとせず、時間を取ったが、イチローがそれに応えることはなかった。

 そこには果たして、どんな思いがあったのか。

 イチローの2018年が始まった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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