MGCシリーズに見た女子の誤算と収穫 若手の活躍が再興の起爆剤となるか

折山淑美

23歳以下の若手が台頭してきた

22歳の松田瑞生(写真)ら若い世代がMGC出場権を獲得できたことは収穫の1つだ 【写真は共同】

 だが全体を通じての収穫は、MGC出場権獲得者6人中5人が23歳以下という点だ。

 1月の大阪国際女子では、昨年の世界選手権1万メートルに出場した松田瑞生(ダイハツ)が、初マラソン日本歴代3位の2時間22分44秒を出して優勝。また今回も16年リオデジャネイロ五輪1万メートル出場の関根が、初マラソンながらしっかり適性して可能性を見せている。

 また昨年の北海道マラソンを2時間28分48秒で制して女子MGC出場権獲得者第1号になった21歳の前田穂南(天満屋)も、1月の大阪国際女子では指導する武冨豊監督の「勝敗よりも25キロから飛び出すようなレースができるかが課題だったのでそれを試してみた」というように、終盤の失速を恐れずに勇気を持って飛び出すレースをした。松田にはかわされたが2時間23分48秒と自己記録を5分更新する好結果を出している。

 また今年度は間に合わなかったが、昨年12月の山陽女子ロード(ハーフマラソン)で1時間9分13秒で2位になった上原美幸(第一生命)や、1時間9分14秒で3位の一山麻緒(ワコール)、1時間9分21秒で4位の鷲見梓沙(ユニバーサルエンターテインメント)がマラソン挑戦の意向を見せている。上原はリオデジャネイロ五輪5000メートルと17年世界選手権1万メートルに出場し、鷲見は15年世界選手権5000メートル出場。一山も17年1万メートル日本ランキング5位のスピードランナーだ。

 トラックの第一人者の鈴木亜由子(JP日本郵政グループ)もマラソン挑戦の意志を表明しているだけに、これからどう動いてくるかも注目だ。

若手の安定性とベテランの奮起に期待

MGCを緊張感あるレベルの高いレースにするにはベテラン勢の奮起にも期待がかかる 【写真は共同】

 瀬古リーダーは「リオの時は2時間28分以内の記録を持って挑戦してくる選手が12人いたが、できればMGCも同じくらいか15人くらいまでにはなってほしい」と話す。そのためには松田や関根の活躍で勇気を与えられる新規挑戦組だけでなく、今回は結果を出せなかった実績のあるベテラン組が再度奮起することも必要になる。

 さらに今年度に結果を出した選手たちは、一発だけでなく良い結果を2回、3回と続ける安定性を身につけることも重要だ。

 19年9月以降に開催予定の選考競技会となるMGCには、自己記録2時間23分台以内の選手たちが10数人結集するような戦いになり、00年シドニー五輪、04年アテネ五輪の時のような、緊張感に包まれるような選考会になってほしい。

 今シーズンに見せた松田や関根の初マラソンでの好結果は、そんな状況を作り出すための起爆剤になるような可能性も持っていたと言えるだろう。

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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