「言い訳にした障がい」から東京の主役へ 杉野明子を変えたパラバドとの出会い

久下真以子

パラバドミントンが抱える課題

杉野は静かに、しかし熱く、「競技人口を増やすためにも、金メダルを目指したい」と目標を話した 【スポーツナビ】

 パラバドミントンのルールは通常のバドミントンと同じく、1ゲーム21点方式で2ゲーム先取。ネットの高さも同じだが、障がいにより、大きく車いすと立位に分けられる。車いすではWH1とWH2。立位では、下肢障がいのSL3とSL4、上肢障がいのSU5、低身長のSS6とあわせて6つのクラスに分類され、数字の小さいクラスほど障がいが重くなる。また、WH1からSL3までのクラスは、コートの半面で戦う。

 優勝した11月の世界選手権で杉野はSL3クラスのインド人選手とダブルスを組んだ。特に女子の競技人口が少ないパラバドミントンでは、固定のペアを組みにくいのが現状。大会ごとにペアが変わることも多く、ほとんどコンビ練習をこなせないまま選手たちは試合に臨んでいる。これでは、健常者バドミントンのような「オグシオ」「タカマツ」のように固定ペアの名前は生まれない。

「基本はペアを固定したほうが2人での経験値も上がるので本来はそうあるべきだと思う。でもパラバドミントンではそうはいかないのが現状なんです」

 この状況を打開するには、競技人口の増加が重要課題なのだ。

個人、そして競技として見据える目標

 昨年9月、2020年の東京パラリンピック正式競技にパラバドミントンが採用された。

「競技人口を増やすためにも、自分が盛り上げられる立場になりたい。採用されたからには、金メダルを目指したいですね」

 新たに大きな目標ができた杉野は、自分の武器である、“攻めの姿勢”をさらに磨いていく。苦しい局面でも果敢にスマッシュを打つのが、彼女の魅力。また、課題も明確だ。手首の力の入れ方から生み出す、柔らかいショットの研究。体作りにも一層力を入れており、インナーマッスルをもっとうまく使えれば無駄な体力や筋力がいらなくなる、と客観的に自分を見据えている。

「2年しかないのではなく、2年もある。マイペースに自分ができることを積み重ねていきたいです」

 パラバドミントンの発展のため、一番いい色のメダルを取る―――彼女の目は、ビルの眼下に広がる東京の景色をまっすぐに見つめていた。

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著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

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