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大谷の速球とスライダーの球速差に注目
スプリング・トレーニングリポート(2)
ブリュワーズとの練習試合で8奪三振と存在感を見せた大谷
ブリュワーズとの練習試合で8奪三振と存在感を見せた大谷【写真は共同】

 MLBのスプリングトレーニングでのオープン戦は、ほとんどが現地時間の13時過ぎに開始する。ただし、マイナー選手中心の「Bゲーム」と呼ばれる練習試合は別で、午前中に行われることもある。大谷翔平“投手”の2戦目となった3月2日(現地時間)のブリュワーズ戦も、午前10時開始の「Bゲーム」だった。


 場所は、アリゾナ州フェニックス市の「メリーベール・ベースボール・パーク」。大谷が登板する影響で急きょ有料試合となったようで、球場入口の金属探知機の門をくぐり抜けると、メディアにもスタッフからチケットが手渡された。この日の午後に予定されているブリュワーズvs.マリナーズ戦のチケットだったが、これで午前の練習試合を見ることができるようだ。


 練習試合のため特に国歌斉唱やセレモニーはなく、試合は静かに始まった。すでに報じられている通り、大谷は3回までを投げ切り、打者12人に対して8奪三振と存在感を見せた。

大谷の持ち球と球速は?

【データ提供:データスタジアム】

 奪三振ショーを披露したこの日は、前回登板よりスライダーを増やしていた。初登板時は得意のスライダーが2球だけで、2球とも右打者の外角低めに引っかかる球だったが、この日は52球中17球がスライダーだった。0ストライクから投げた4球でいずれもストライクを取れており、課題の「カウントを取る変化球」に、まずはスライダーを試しているようだ。

【データ提供:データスタジアム】

 前回のリポートではカーブ、今回はスライダーに注目しているが、そもそも大谷はどのような球種を持っているのか。データスタジアムによる分類では、大谷の持ち球は「ストレート、カーブ、スライダー、フォーク」となっている。日本プロ野球1年目はチェンジアップ、2年目の5月まではカットボールも投げていたが、それ以降はほぼこの4球種のみだった。


 そして、この4球種を2017年の球速順に並べ替えると「ストレート(155.5キロ)、フォーク(142.8キロ)、スライダー(131.2キロ)、カーブ(117.0キロ)」となる。ここで注目したいのが、ストレートとスライダーの間にある24.3キロの球速差だ。

【データ提供:データスタジアム】

 大谷のストレートとスライダーの球速差は、大きいのか? それとも小さいのか? 17年の日本プロ野球のデータをもとに、ストレートとスライダーの球速差を他の投手と比べてみよう。上の表は17年のNPBでストレートとスライダーの両方を投げた投手の球速差を2.5キロ刻みで分けたものだ。


 大谷は右から2つ目の赤い部分に入る。ストレートが圧倒的に速いことも影響しているが、25キロ近く差がある投手は少なく、24.3キロはかなり大きいものだと分かる。大谷のスライダーは、ストレートとの球速差が大きい「緩い」タイプとなる。

理想とするのは故・ヘルナンデスのスライダー

大谷が理想と語るのはフェルナンデス(故人)のスライダー。データ上はカーブとして計測されている
大谷が理想と語るのはフェルナンデス(故人)のスライダー。データ上はカーブとして計測されている【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 過去のインタビューによると、大谷の理想としているスライダーは16年9月にボート事故で亡くなったホセ・フェルナンデス(当時はマーリンズ)のスライダーだという。

【画像提供:データスタジアム】

 そこで、Statcastでフェルナンデスの球種を見てみると、そもそもスライダーという球種の分類がなく、あるのは「カーブ」だ。カーブの平均球速は135.6キロ、ストレートの平均球速は154.5キロなので、その差は18.8キロとなっている。

【画像提供:データスタジアム】

 球速だけでなく、Statcastの特徴である「変化量」のデータからも見てみよう。Statcastでは回転数などのデータが収集できるが、もっとも注目したいのはどの方向にどの程度曲がったかを示す「変化量」だ。変化量にはいくつかの基準があるが、過去のデータと比較できるように、PITCHf/xというシステムの基準に合わせて算出されている。


 上のグラフでは、縦軸に「球速」を、横軸に「横方向の変化量」を表している。横方向の変化量とは、どれだけボールに横回転がかかっていて、スライド方向(右打者に対して外角方向)、もしくはシュート方向に曲がったかを表したものだ。


 ひとつの点は1球を表している。フェルナンデスのストレート(水色の点)の多くは150〜160キロの球速帯にあり、すべてシュート方向に曲がる球筋であることが分かる。一方、カーブ(ピンクの点)は130〜140キロの球速帯で、ほぼすべてスライド方向に曲がることが分かる。


 Statcastの導入によって、球種がどのように変化しているのかという情報が分かるようになっている。大谷の登板データはまだ計測されていないが、果たして、スライダーは本人が理想と語ったフェルナンデスのカーブのような変化をしているのだろうか。Statcastによる、スライダーの「変化量」に今後注目していきたい。

データスタジアム金沢慧
データスタジアム金沢慧

1984年生まれ、福島県出身。学習院大経済学部卒業、筑波大大学院体育研究科修了。データスタジアム株式会社ナレッジ開発チーム兼ベースボール事業部アナリスト。TVや雑誌などのメディアで野球データを生かしたエンターテインメントの製作に数多く携わっており、NHK BS1で放送されている「ワールドスポーツMLB」や「球辞苑」ではデータ解説役として出演。また、プロ野球のチームに対してもセイバーメトリクスの手法を用いた分析や、トラッキングデータの解析を行っている。大学で行われている講義やAI野球解説プロジェクト「ZUNO」の監修に携わるなど、さまざまな分野との連携も多い

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