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大谷はカーブをカウント球にできるか?
スプリング・トレーニングリポート(1)
2月24日(現地時間)、オープン戦初登板は2回途中2失点だった大谷
2月24日(現地時間)、オープン戦初登板は2回途中2失点だった大谷【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 2月23日(現地時間)からメジャーリーグのオープン戦が始まった。メジャーリーグの春季キャンプとオープン戦は「スプリングトレーニング」と呼ばれ、全30球団が15チームずつ、アメリカ南西部のアリゾナ州と南東部のフロリダ州に分かれてキャンプを張っている。アリゾナ州開催のオープン戦は「カクタスリーグ」、フロリダ州でのオープン戦は「グレープフルーツリーグ」と呼ばれ、シーズン開幕の直前まで、それぞれの州に拠点を構えるチーム同士でオープン戦を行う。


 このうち、日本人選手が多いのは「カクタスリーグ」だ。カブスに移籍したダルビッシュ有をはじめ、今季から渡米したダイヤモンドバックス・平野佳寿、パドレス・牧田和久、そしてエンゼルス・大谷翔平ら、日本人選手の大半はこの地で調整を進めている。

【データ提供:データスタジアム】

 カクタスとはサボテンのことで、各チームがキャンプを構えるフェニックス市周辺では至る所にサボテンが自生している。フェニックス市は砂漠気候で湿度が低く、1日の寒暖の差が激しい。さらに、2月下旬は最低気温が5℃程度、最高気温が15℃程度と例年に比べても冷え込んでおり、日中でも日陰はかなり肌寒い。

至る所に自生するサボテン
至る所に自生するサボテン【写真:データスタジアム金沢慧】

 今回、スプリングトレーニングでの取材機会を得た私は2月22日からアリゾナ州に入り、エンゼルスが拠点としているフェニックス市近郊の「テンピ・ディアブロ・スタジアム」を中心に、各球団のキャンプ地を巡っている。


 普段はデータスタジアムのアナリストとしてデータを用いた分析記事を書くことが多いが、今年のスプリングトレーニングではデータに加え、現地の様子を交えてリポートしていく。

現地でも高い大谷への注目度

 今年最も注目を集めている日本人選手は、当然ながら大谷翔平だろう。投手・大谷のオープン戦デビューとなった2月24日のブリュワーズ戦では、私を含めて日本の報道陣が大挙して押し寄せ、日本では生中継された。当日のスタジアムではユニホームだけでなく、ペナントなど、さまざまな「大谷翔平グッズ」がショップの最も目立つ場所で販売されており、注目度の高さを感じさせた。

【データ提供:データスタジアム】

 この日の大谷は打者7人に対して31球を投げ、その71.0%がストレートだった。中でも0ストライク時に93.3%と、最初のストライクをストレートで取りに来ていたことが分かる。


 ストレートでカウントを整える傾向はこの日に限ったことではなく、表のように日本時代の過去2年でも同様だ。160キロを超えるストレートでカウントを整え、追い込んだらスライダー、フォークも交える。これが大谷の基本的な投球スタイルだ。


 ただし、この日はそのストレートを思い通りには制球できていなかった。特に、初球でストライクが取れたのは2度のみと、各打者への入り方に苦労していた。試合後に「決め球は良かったけれど、カウント球には少し苦労した」と語っており、本人としても、早いカウントでどのようにストライクを稼ぐかは次回以降の課題と考えているようだ。

カウントを整えるのに有効なボールは?

【データ提供:データスタジアム】

 大谷より先に海を渡った先輩投手の例を見てみよう。上の表はダルビッシュ、田中将大、前田健太の日本プロ野球最終年と、メジャーリーグ1年目の0ストライク時の球種割合を比べたものだが、どの投手もスライダーを減らしており、カーブを増やしていることが分かる。滑りやすいといわれるメジャーリーグの球に対応できるように、また、パワフルなメジャーリーガーに対してタイミングを外す工夫として、日本時代から配球を変える傾向が見られている。


 日本時代のデータを見ても、大谷はダルビッシュらに比べてカウント球でのストレートに対する依存度が高い。2月24日の試合で2本の長打を浴びたように、コースが甘く、球速が落ちたストレートはメジャーリーガー相手だときっちり捉えられてしまう。その対策として、カウントを整える変化球は必要不可欠だろう。

【データ提供:データスタジアム】

 その中でも、カーブは注目の球種になりそうだ。「ストライクゾーンに投じられた球種の中では、日米ともにカーブが最も本塁打になる割合が低い」というデータも出ており、大谷にとって大きな武器となり得る球種だ。


 2月24日のカーブは1ストライクから投げた1球のみだったが、見逃しのストライクとなり、観客から大きな歓声が上がった。試合後の会見でも、カーブでストライクが取れたことは収穫だったという内容のコメントを出している。大谷は初回の投球練習時、2球目と3球目にカーブを投げたが、この時はいずれもうまく決まっていなかった。その意味でも、本番で投げた唯一のカーブでストライクが取れたことには手応えを感じていたようだ。


 大谷のストレートの球速はメジャーリーグの先発投手と比較してもトップクラスだが、ここまで見たように、カウントを整える球種の選択肢は少ない。日本時代同様に、追い込むまでをストレートに頼ると痛打を浴びる。まだ1試合ではあるが、それが浮き彫りになったオープン戦初登板だったように思われる。カウント球にどのような球種を使うのか。スプリングトレーニングで今後も試すであろう「カーブ」を注意深く追ってみたい。


※データスタジアム(株)の収集データ、およびSTATCASTのデータを使用

データスタジアム金沢慧
データスタジアム金沢慧

1984年生まれ、福島県出身。学習院大経済学部卒業、筑波大大学院体育研究科修了。データスタジアム株式会社ナレッジ開発チーム兼ベースボール事業部アナリスト。TVや雑誌などのメディアで野球データを生かしたエンターテインメントの製作に数多く携わっており、NHK BS1で放送されている「ワールドスポーツMLB」や「球辞苑」ではデータ解説役として出演。また、プロ野球のチームに対してもセイバーメトリクスの手法を用いた分析や、トラッキングデータの解析を行っている。大学で行われている講義やAI野球解説プロジェクト「ZUNO」の監修に携わるなど、さまざまな分野との連携も多い

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