国内コース休止で苦難の日本スケルトン 第一人者・高橋が懸念する若手への影響

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韓国は強化策が実り金メダル獲得

金メダルを獲得したのは地元韓国のユン・ソンビン。同種目ではアジア人初のメダルとなった 【写真は共同】

 対照的なのが韓国のスケルトン事情だ。2011年に平昌五輪開催が決定すると、大韓協会の旗振りで一気に強化。金メダルを獲得したユン・ソンビンは2位を1秒以上引き離す圧倒的な滑りで、またキム・ジスは6位入賞と、スケルトンを初めてから5年前後という転向組の2人が結果を残した。この競技ではこれまでアジア人のメダル獲得すらなく、歴史的な快挙と言えるだろう。

 以前は韓国でもスケルトンは人気競技とは言い難い状況だったが、両選手の躍進で注目度が急上昇中。この日も定員1000人の「アルペンシア・スライディングセンター」ゴール地点には立ち見の観客が出るほどで、金メダルの瞬間は地鳴りのような歓声に包まれた。

 屈強な肉体を誇るスケルトン選手は女性にも大人気だ。なんとかその姿を写真に収めようと、移動する選手に合わせてスマホ片手の女性も集団で追う。金メダルを獲得したユンのファンだという韓国人の女子大学生は、「これからはCMとかにもいっぱい出そうですね」と、その人気ぶりを教えてくれた。

 絶好調の韓国スケルトン界。「今回の結果は次の世代への後押しにもなると思う」と語るのは6位入賞のキムだ。スパイラル休止のニュースは韓国にも届いているようで、競技の継続的な発展のために「日中韓などでアジア大会を行ったりして、活性化していくことが何より重要でしょう」と私案を披露した。

第一人者の涙を次世代へ

1月の世界ジュニア選手権で5位に入るなど今後の活躍が期待される宮嶋 【写真は共同】

 アジアで稼働するコースはこれで唯一、平昌のアルペンシア・スライディングセンターのみ。会場の盛り上がりを尻目に、高橋は「スパイラルだって今もこのポテンシャルを持っていると僕は思っています。どこのコースも経営状況が楽なところはない。各国がアイデアを出しながら何とかやっているわけで、日本も独自のアイデアもそこに組み込んでいければ」と悔しそうな表情で話す。

「いろいろなアイデアは僕も提案させてもらっていますけど、連盟などの方々も当然持っていると思います。ただ、まずは何をするにしても意識統一。どこを目指すのか、どのような協会にしていくのか、どういう選手を育てるかという明確な目標を立てて、そのために何をしていくのか。若い選手の不安を解消するためにも、単純ですけどそういう組織体制を作っていかないと」

 日本スケルトン界のあり方について、第一人者としてあふれる思い。最後に「僕は選手ですからとにかく結果を出して、環境がこう変われば結果はもっとこうなります、ということを訴えていきたかった。五輪はそのための絶好の機会だった」と唇をかんだ。高橋が思わず流した無念の涙は、次世代に引き継がれる。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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