三浦弦太に感じる若さゆえの伸びしろ 日本代表にこの選手を呼べ!<G大阪編>

下薗昌記

G大阪からは昨年A代表デビューを果たした三浦弦太の名を挙げたい 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 編集部から届いた「日本代表にこの選手を呼べ!」というお題目に推薦する選手について、非常に頭を悩ませた。

 昨年12月のEAFF E−1サッカー選手権には鹿島アントラーズと並ぶ最多6人の代表選手を送り込んだガンバ大阪ではあるが、現状ではヴァイッド・ハリルホジッチ監督がチームから今後、新たな選手を招集する可能性は極めて低いと言わざるを得ないだろう。

 それゆえに、本稿では「“ワールドカップ(W杯)ロシア大会に行く”日本代表にこの選手を呼べ!」というテーマとして、三浦弦太の名を挙げたいと思う。

アジリティーとフィードが魅力

 昨年5月のキリンチャレンジカップで初招集され、12月のE−1選手権でA代表デビュー。ロシア行きの切符は全く確保されていない22歳ではあるが、筆者が三浦を推す理由はその伸びしろと年齢にある。

 長谷川健太前監督の誘いを受けて、G大阪を新天地に選んだ昨年1月、三浦が掲げていた目標は「開幕までにベンチに入る」。しかし、高い身体能力を生かした個の対応と、ビルドアップのセンスに長けた若者は、ハリルホジッチ体制下で代表経験のある丹羽大輝(現サンフレッチェ広島)を押しのける格好で、開幕から定位置を確保。リーグ戦はもちろんのこと、自身にとって初となるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも、そのポテンシャルの高さを随所でのぞかせた。

 チームは2年連続のグループステージ敗退に終わったが、三浦は江蘇蘇寧(中国)戦で5000万ユーロ(約65億円)で獲得されたといわれる元U−20ブラジル代表のアレックス・テイシェイラともスピード勝負で互角以上に対応。「Jリーグではいないレベルのアタッカーと戦える。ACLは楽しい」と言い切った。

 ハリルホジッチ監督が三浦の存在をロックオンしたアウェーのJ1第2節・柏レイソル戦では変則的な右センターバック(CB)を担当し、「ガンバキラー」でもあるクリスティアーノを完封して見せた。183センチとさほど上背があるわけではないが、外国人選手にも振り切られないアジリティーと、「縦に速いサッカー」を標榜するハリルジャパンにうってつけな好フィードを持っているのが三浦の魅力である。

CBとして成長する余地を大きく残す

清水時代の主戦場は右SBだったが、現在はCBとして成長する余地を大きく残している 【(C)J.LEAGUE】

 もっとも、経験値や実績において吉田麻也や槙野智章らレギュラー陣にはまだまだ、及ばないのも事実ではある。だが、三浦には若さゆえの伸びしろが隠されているのだ。

 世代別代表の常連で、リオデジャネイロ五輪世代でもある三浦だが、CBとしてシーズンをフルに戦ったのはプロ入り5年目だった昨年が初めてのこと。

「チームの成績は良くなかったが、個人的にすべての試合に出られたのはよかった」(三浦)

 前年の2016年シーズンは清水エスパルスでJ2のリーグ戦29試合に出場していたものの、右サイドバックを主戦場としていた三浦は、まだまだCBとして成長する余地を残している。

 昨年12月の中国戦で念願の代表デビューを果たしても謙虚な人柄に全く変わりはないが、その口ぶりには自らへの自信と、代表への強い決意がにじみ出る。

背番号「5」は覚悟の表れ

今季はガンバのディフェンスリーダーたちが背負ってきた5番を背負う(写真は17年シーズン) 【(C)J.LEAGUE】

 移籍1年目だった昨年の今頃、「開幕ベンチ入り」を目標に掲げていた男は、今年新たに背番号5を託された。

「ディフェンスリーダーとしてガンバでは偉大な背番号。より、ガンバのリーダーとしてやっていきたいという思いもあって選びました」

 宮本恒靖(現G大阪コーチ/U−23監督)や山口智(現G大阪コーチ)らチームの象徴でもあった偉大なディフェンスリーダーのみが背負うことを許された「5番」をつけることは、三浦の覚悟の表れだ。

「W杯に行きたい思いは当然ある。ロシアのことは頭にありますけれど、まずはチームでのプレーが評価されてから」

 ロシア大会はもちろんだが、4年後のカタール大会以降でも、日本代表の躍進に欠かせないのは世界と戦えるCBの存在である。

 レヴィー・クルピ監督の就任で攻撃サッカーの再確立を目指すG大阪。「攻撃的なサッカーは楽しみ。個人の対応や、最終ラインだけで守る形も去年より多くなりそう。楽しみだし、やりがいもある」と頼もしい言葉を口にする三浦は3月1日で23歳になる。ロシアの空気を吸わせるだけでも、カタール大会以降につながると思うのだ。
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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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