【全日本プロレス】ドーリングが三冠V3 宮原が挑戦へ 勢い増す全日本 丸藤、藤田らも参戦

高木裕美

藤田登場で諏訪魔に暴挙 遺恨清算を要求

カシン、NOSAWAの呼び込みで“野獣”藤田が登場。諏訪魔を襲撃し、カマボコを口に突っ込んだ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 だが、そんなホンワカした空気が、次の瞬間に一変した。敗れて退場したはずの諏訪魔が、NOSAWA論外とケンドー・カシンによってリングに連れ戻され、新王者組はすぐさま退散。すると、カシンはペットボトルの液体を口に含んで諏訪魔の顔面に真っ赤な毒霧を噴射すると、NOSAWAが「目を覚ましてくださーい。おい、音響、藤田の曲かけろ、オラ」と要求。

 倒れた諏訪魔をカシンが踏みつけ、NOSAWAがイスで押さえつける中、藤田のテーマ曲と共に、鬼のお面をかぶった藤田が登場。リング上で諏訪魔とにらみ合った。するとそこに、若手の岡田佑介が飛び込み、藤田に殴りかかるが、藤田は一蹴。また、佐藤光留も諏訪魔を救出しようとするも、藤田はイスで諏訪魔の頭をブチ抜き 、顔面を踏みつけたままカメラマンにポーズ。さらには、倒れたままの諏訪魔の口の中にカマボコを押し込み、リング上でハイボール缶を空けて3人で乾杯した。

 諏訪魔と藤田は15年11.15天龍プロジェクト両国国技館大会でタッグマッチで初対戦を果たすも、まったくかみ合わず、試合後、諏訪魔は「スイングしなかった」と再戦を拒否。一方、藤田は「あいつはカマボコだ。煮ても焼いても食えねえよ」と諏訪魔の煮え切らない態度を糾弾していた。

 2年前、諏訪魔を「カマボコ」呼ばわりした藤田が、そのカマボコを持って、再び諏訪魔の前に現れたのは、まさに宣戦布告。秋山社長からの「絶対に来るな」という禁止通達も無視して来場した暴挙に、諏訪魔も「何しに来たんだよ、バカ。納得いかないよ、このままじゃ」と怒り心頭で、岡田、佐藤も対藤田のため団結する思いを明らかにした。諏訪魔はバックステージでも「3対3だっていいじゃん。オレはやりたいよ。ぜひ全日本プロレスで、藤田との再戦を組んでもらいたい」と、決着戦を要求。「とにかく、藤田、カシン、NOSAWA。ろくなもんじゃねえよ。もう完全にぶっ倒す」と、遺恨清算を訴えた。2年前はリング上で実際に対戦してもまったくスイングしなかった両者が、今後、どのように絡み合っていくのか。

青木がTAJIRIを破り王座返り咲き 新日本へのライバル心燃やす

青木が世界ジュニア返り咲き。新日本への対抗心を示した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 世界ジュニアヘビー級選手権試合では、ついにマスクを脱いだ青木篤志がTAJIRIを破り、王座返り咲き。試合後はジュニア戦士を呼び込み、新日本へのライバル意識をハッキリと口にした。

 青木は全日本を退団した鈴木鼓太郎の出戻り参戦が認められたことや、自分たちの知らない所で勝手にタイトルマッチを決められたことなど、溜まりに溜まった不満から、昨年11月に突然マスクマンに変身。素顔がバレバレであろうが、入場時から試合中まで、常に仮面をかぶり続けていた。

 この日も青木はマスクをつけたままで試合。だが、5分過ぎ、TAJIRIが強引にマスクを引きちぎり、仮面の下の表情をさらすと、青木もついに、自らマスクをはずし素顔に。TAJIRIは思わず、してやったりとばかりに笑顔を見せる。場外での鉄柵攻撃で青木が額から流血すると、TAJIRIはなおも鉄柱に顔面を打ちつけて追い込むが、青木もフロッグスプラッシュ、腕十字固めで反撃。TAJIRIもグリーンミストからのパイルドライバー、バズソーキックで流れを作るも、青木は2発目のバズソーキックをブロックすると、腕ひしぎ逆十字固めで鮮やかな逆転勝利を飾った。

 試合後、マイクを握った青木は、2.13後楽園ホールで開幕する12選手参加のジュニアヘビー級のリーグ戦「Jr. BATTLE OF GLORY」の出場選手をリング上に呼び集めると、「おまえら、新日本に負けたくないだろ。ジュニアはジュニアで面白い、ヘビーはヘビーで面白いことを証明してやろうぜ」と、相当の覚悟と気合いを持ってこのリーグ戦に臨むようハッパをかけ、自身も「ベルトの責任感はしっかりと感じながら、リーグ戦も優勝したい」と王者としてのリーグ制覇を誓った。

“アラフィフコンビ”秋山&永田がアジアタッグ戴冠

“アラフィフ”の秋山と永田がアジアタッグ戴冠 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 アジアタッグ王座決定戦では、秋山準&永田裕志(新日本プロレス)の“アラフィフコンビ”が、野村直矢&崔領二組を破り王座初戴冠を果たした。

 事の発端は昨年の最強タッグ公式戦。昨年12.9新潟大会で、アジアタッグ王者であった野村&青柳優馬組に、当時の世界タッグ王者組であった秋山&大森隆男組が敗北する大番狂わせが起きた。秋山組はリベンジするべく、今年の1.6大阪でアジアタッグ王座に挑戦するも、まさかの2連敗。その直後に大森が頸椎椎間板ヘルニアで欠場となったため、秋山は永田との同世代コンビで再挑戦することになった。だが、1.25新木場大会で青柳が右脛骨遠位骨折および右足関節内骨折の重傷を負い、王座を返上。青柳が負傷した試合の対戦相手であった崔が野村のパートナーに名乗りを上げ、今回、王座決定戦が行われることになった。

 秋山と永田は01年3.2 ZERO−ONE両国国技館大会で初遭遇(橋本真也、永田組vs.三沢光晴、秋山組)。団体の壁やタブーを破り、時代の扉をこじ開けたことで、同年10.8新日本・東京ドーム大会ではタッグで出陣(秋山、永田組vs.武藤敬司、馳浩組)。02年2.17日本武道館では小橋建太の395日ぶりの復帰戦の相手を務めた(秋山、永田組vs.三沢、小橋)。また、12年9.9新日本プロレス千葉・東金大会ではDRAGON GATEの望月成晃を交えた「アンチエイジングトリオ」を結成(vs.中邑真輔、オカダ・カズチカ、高橋裕二郎)したりと、同世代のライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)してきた。

 秋山は野村に対し、場外でのボディースラムや、エプロンに寝かせてのニードロップ、パイルドライバーなどの厳しい攻めを見せるも、野村も永田にノーザンライトスープレックスを決めるなど奮闘。永田が野村に白目式腕固めを繰り出すと、秋山もすかさず崔をワキ固めで捕獲。さらにはエクスプロイダーの競演も見せる。野村は秋山を山折りからのジャーマンスープレックス、フロッグスプラッシュでカウント2まで追い込むが、秋山もフロントネックロック、ニーパットをはずしてのヒザ蹴り、エクスプロイダーからのリストクラッチ式エクスプロイダーでフィニッシュ。20分を超える激戦を制した。

「久しぶりに自分を出せた戦いができた」という49歳の永田は、昨年、新日本の「G1 CLIMAX」卒業を宣言したことで、ファンから引退や「一線を退いた」と思われたことに対するメッセージを示せたことに安堵(あんど)。一方、永田とは逆に、卒業宣言したはずの「チャンピオン・カーニバル」への復活を決意した48歳の秋山は、永田とのタッグ結成に発奮し、背中を押されたと告白。今後の防衛ロードについては、上を目指す若い選手たちの奮起を促し、「こんな面倒くさいタッグチームが、全日本、新日本にいるこの2人が組んで、滅多に戦えることもないんだから。戦えるんだったら、やっておくべきだと思うし。経験になると思うよ」と、どんどん挑戦してくるようアドバイス。今回敗れた野村に対しても「パートナー変えて、何回でもどんどん来ればいいよ」と挑戦を呼びかけた。

 かつて秋山は16年8.11WRESTLE-1横浜大会で武藤敬司との約3年ぶりの対戦が実現した時も、互いの団体の若手選手を連れてのタッグマッチを要求。当日は野村、青柳を連れて参戦し、試合後はふがいない戦いぶりだった2人を報道陣の前で容赦なく叱責(しっせき)した。「若手の育成」を常に意識してきた2人がチャンピオンになったことで、今後のアジアタッグ戦線は若手の試練の場となっていきそうだ。

丸藤がCC初参戦 秋山はCC卒業撤回

ノアの丸藤がCC参戦。古巣の恒例リーグ戦に初登場となる 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日は4月7日に宮城・仙台サンプラザホールで開幕する「2018 チャンピオン・カーニバル」(CC)のブロック分けと出場選手が発表されたが、意外性のある顔ぶれに、会場が大きくどよめいた。

 Aブロックには昨年覇者の石川修司、現三冠ヘビー級王者のジョー・ドーリング、次期三冠挑戦者の宮原健斗らがエントリー。また、KAIENTAI-DOJOの火野裕士、DRAGON GATEの鷹木信悟が初出場する。

 Bブロックには08年優勝の諏訪魔、16年準優勝のゼウス、13年準優勝のゼウスに加え、一昨年「CC卒業」宣言をした秋山準が「(パートナーの)永田裕志に背中を押してもらった」と、2年ぶり14度目の出場を決意。また、新世界タッグ王者となったヨシタツ、元ジェームズ・ライディーンことディラン・ジェイムス、そしてプロレスリング・ノアの元GHCヘビー級王者・丸藤正道が初出場を果たす。丸藤は全日本出身であるが、在籍当時は若手で、ジュニアヘビー級だったため、CC参戦は今回が初。08年には全日本の世界ジュニア王座を獲得しているが、このCC参加がきっかけで、ヘビー級の至宝にも手を伸ばすのか。また、因縁浅からぬ秋山との対戦も注目だ。

<2018 チャンピオン・カーニバル 出場選手一覧>
【Aブロック】
・石川修司(2年連続2度目の出場/2017年優勝)
・宮原健斗(5年連続5度目の出場)
・ジョー・ドーリング(2年連続8度目の出場/2017年準優勝)
・野村直矢(3年連続3度目の出場)
・崔領二(3年連続3度目の出場)
・ボディガー(4年連続4度目の出場)
・火野裕士(初出場)
・鷹木信悟(初出場)

【Bブロック】
・諏訪魔(2年連続13度目の出場/2008年優勝/2006、2012、2015年準優勝)
・秋山準(2年ぶり14度目の出場/2013年度優勝/98年&2014年準優勝)
・ゼウス(5年連続5度目の出場/2016年準優勝)
・KAI(2年連続3度目の出場/2013年準優勝)
・吉江豊(2年ぶり6度目の出場)
・ヨシタツ(初出場)
・ディラン・ジェイムス(初出場)
・丸藤正道(初出場)

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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