武井壮お薦め! パラバドミントンを100倍楽しむ方法

スポーツナビ

車いすバドミントンに挑戦した武井壮さん 【スポーツナビ】

 2020年東京パラリンピックから正式競技となるパラバドミントン。昨年11月に行われた世界選手権では立位SU5クラスの鈴木亜弥子が世界女王となり、ダブルスでも外国人選手と組んだ杉野明子が優勝(SL3‐SU5クラス)を果たすなど、東京での金メダルが期待されるパラ競技である。特徴はクラスによって異なるコートの広さ。車いすクラスや下肢に重い障がいのあるクラスでは健常者で行われるバドミントンのコートを縦に半分にした広さで試合が行われる。

 スポーツナビは、陸上・十種競技の元日本チャンピオンでタレントの武井壮さんがパラバドミントンに挑戦するNHKの取材現場に同行。今回、車いすバドミントンを体験した武井さんに競技の魅力や奥深さを聞いた。

挑戦して分かった「高度な技術の応酬」

前方への対応に苦労していた武井さん。体が先に反応し、なかなか車いすを動かせなかった 【スポーツナビ】

 バドミントンの難しさは、シャトルの落下地点に、正しいポジションで入るということだと思います。車いすバドミントンでは、さらにそれを車いすを正確にコントロールして行わないといけない非常に高度なテクニックを必要とします。

 シャトルが放たれてから、自陣に届くまでがあっという間なんです。しかも車いすテニスと違ってノーバウンドで返さないといけないので、相手がシャトルを打つと、どうしても車いすを動かすよりも身体が先に反応してラケットを構えてしまうんです。すると、車いすは動かないから、ラケットの届く範囲でしか対応できず失点につながる。だから、まず相手がシャトルを打ったら前後左右正しい方向に車いすを動かすことが最優先。そう理解はしているんですが、シャトルが飛んでくるとつい、ラケットで拾いにいってしまうんですよね。

 テニスと比べてコートは10分の1くらいの広さなので、簡単そうですが、車いすを動かせなければ絶対にシャトルを返せない場所があって、さらに反応しきれないスピードでシャトルが返ってくる。エリアが狭いから楽だと思ったら大間違い。選手たちとプレーすると、非常にハイレベルな技術を駆使していることがよく分かりました。この狭いコートには、マリアナ海溝みたいな深い技術が隠れていますね。パラバドミントンは、毎秒毎秒がその応酬なんだと実感しました。

 自分の身体で、脚を使ってプレーをしている時とのギャップが一番のポイント。自分の足で動けば余裕で届く場所に、シャトルがポーンと上がって「返せるな」と思ってラケットを構えますが「車いすだとここは返せないんだ」というエリアが如実にあるんです。特に前方。普段は前にシャトルが来たら自分の足で踏み出せるから、2メートルくらい前のシャトルは「届く」と感じてしまうんです。しかし、車いすに座っていると手を伸ばしても全然届かない。そのギャップを、実際に車いすを動かして埋めないといけない。そこが1番難しいポイントでした。

車いす操作の練習に多くの時間を割いた。この時点で武井さんはパラバドミントンの難しさに気づいていた様子だった 【スポーツナビ】

 基礎練習で、車いすを動かすトレーニングが多く、「こんなに狭いエリアなのに、そんなに車いすを動かす基礎がいるのかな」と思っていましたが、2回漕いで車いすを進ませてからラケットを振る、というのが基礎練習、これが正確にできないとゲームの中ではまったく対応できないんです。 余裕で届きそうなシャトルに全くラケットが届かないってことがゲームをプレーして初めて分かるんです。もし先にそれが分かっていれば、基礎練習もう少し熱心にやってから挑戦したんですけどね。笑

 車いす競技はまず正確に、より素早く車いすを操作することが求められますが、狭いコートに少し油断してしまいました。狭いからと手を抜くと苦しい体勢を強いられて、シャトルを返せる場所が限られてくる、そうなると対戦相手はシャトルの行方を予測するのも簡単だし、シャトルにパワーが伝えられないから、イージーに拾われてしまう。まずは動いてコートのどこにでもシャトルを返せるポジションにいち早くたどり着く、それが第一歩であり、最強の技術。そこが僕とトップ選手との決定的な違いでしたね。

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