オリックス安達、覚悟を決めた男の強さ
「同じ病気の人の励みになりたい」

自然とわき起こった安達コール

17年は打撃不振に陥るも、広角に長打を放てるパンチ力も見せるなど、勝負強さも発揮した
17年は打撃不振に陥るも、広角に長打を放てるパンチ力も見せるなど、勝負強さも発揮した【写真:BBM】

 まぶしい照明が降り注ぐ場内、割れんばかりの拍手に、自然とわき起こる安達コールは、夢のようだった。「7番・ショート」でいきなり先発出場。打席に立つと詰めかけたファンが待ってましたとばかりに大声援を送った。


「力になったし、泣きそうになりました。野球ができる喜びをすごい感じた1日でした。声援がうれしくて、もう引退するんじゃないかってぐらい」


 試合には負けたものの、2安打の活躍で存在感を示した。それまでチームはショートを固定できずに苦しんでいたが、安達の復帰によって守備面での安定を取り戻した。


 その後は遠征や連戦を経験する中で、体調を見ながらの起用が続く。特に週末、ナイターの翌日にデーゲームがある日は十分な休息時間が取れないため、試合前練習を欠席し、いきなり試合に臨むことも。時には顔を真っ青にしながら、ギリギリの状態で戦う日もあった。トイレの心配もあり、長距離のバス移動の際はチームから離れ電車で移動したこともあった。そんな安達に福良監督は毎日欠かさず「大丈夫か?」と声を掛けた。安達もそんな指揮官になら、素直に今の体の状態を話すことができた。


「気にかけてもらえているのでうれしいですよね。あんな監督いないですよ」


 体力的に少し余裕が出てきた7月には30安打、打率3割8分で堂々の月間MVPを初受賞。


「いろんな方にサポートしていただいて、こういう賞が取れた。感謝したい。一時は野球ができるか分からなかった。同じ病気の人を勇気づけられるよう、プレーで頑張っていきたい」


 たくさんのフラッシュを浴びながら、笑顔がはじけた。


 8月28日の東北楽天戦では、シーズン初本塁打も記録。「いろんな人に感謝しながら走りました。特別な一発」とかみしめるようにダイヤモンドを一周した。病と闘いながらも16年は118試合に出場。打率2割7分3厘、34打点としっかりと爪痕を残した。「応援してくれた皆さんがいたから頑張れた。ファンのありがたみ、応援って力になるんだって思いましたね」その戦いぶりは記録にも、そして記憶にも深く刻まれた。

17年シーズン終盤には再び入院

 17年は順調に自主トレ、春季キャンプを消化し開幕スタメンにも名を連ねた。しかし、試合を経るごとに、明らかに様子が変化していく。名手と呼ばれる守備で足元がふらつき、打球に追いつけない。普段なら捕れる当たりをあきらめる姿も何度も見られた。顔色は悪く、覇気もない。5月に入り、日程が過密になると体力は限界に。打率も1割台と低迷し14日に登録を抹消。チームも連敗が続く中で、福良監督も苦渋の決断を下した。


「疲れやすくなっているんですかね。もう年かなあ……。そのせいにしちゃったほうが楽かなって」


 普段は決して口にしない弱音を吐くほど、心身ともに弱っていた。それでも再び1軍の舞台に舞い戻り、6月2日の巨人戦では、延長11回に決勝のアーチ。両軍合わせて27安打が飛び交った4時間37分の熱戦に、終止符を打つ印象的な一発だった。


 8月に再び体調を崩し、2度目の登録抹消。9月には昇格して出場を続けたが、長期の遠征もあり徐々に崩し始めていた体調が26日に悪化した。


「そこまでも自分としてはきつかったんだろうけど、必死にやっていたから分からなかった。ただ、この日の夜はお腹が痛くて眠れなくて、朝まですごく長かった」


 翌日、病院に行った結果、潰瘍性大腸炎の再燃が発覚。入院が決まった。


「そうだろうとは思っていた。絶対これはなっているなって。シーズンも終わる直前だったので悔しかったですね」


 その日、病床から観戦した試合でうれしい出来事があった。1つ歳下で仲の良いロメロが本塁打を放った。いつもならそんな盟友をベンチ前で出迎え、2人でヒジを合わせるダンスのようなパフォーマンスを披露するが、この日は違った。安達がいないことを受けて、ロメロがカメラの前で一人だけで同じ動きを始めたのだ。病気が再燃したことを知った助っ人が、早く元気になってほしいと願いを込めて行った魂のパフォーマンスに、思わず胸が熱くなった。


「うれしかったですよ。申し訳ないなというのとうれしさと。人がいいんでね、ロメロも」


 これまで自分の力を発揮できずに日本を去る外国人選手を見るたび、複雑な思いに駆られてきた。一緒に戦う仲間だ、少しでもチームに溶け込んでほしい。英語は話せないが積極的にコミュニケーションを図ることで、プレーしやすい環境をつくってきた。言語は違っても心でつながることはできる。ロメロとの絆がそれを証明した。

目標は1年間、試合にフルで出続けること

 6日間の入院を経て、現在は再び18年シーズンに向けて動き出している。この2年、体調不良で思うようにプレーできないことも多かった安達だが、それを言い訳にすることは決してなかった。


「見ている人がいる場では、やっぱり見せたくない。きついだろうなっていうのを見せたら、同じ病気の人が心配するだろうし。そこは常に意識はしていますし、ずっと貫いています」


 自分が野球をすることで誰に何を届けることができるか、考えるようになった。これまではスタンドからの心ない言葉にも敏感に反応していたが、それも病気になってからは変わった。


「前はヤジを言われたら『お前やってみろよ』って感じでしたけど、今は素直に自分がしっかりプレーすればいい、と。病気の人に自分が頑張っている姿を見せられたらいいかなと思ってやっています」


 実際に同じ病気の人と会って話す機会もあり、同じ境遇のたくさんの人が自分を応援してくれていることを知った。そういった人たちの希望の星となりたい。背負うものが増えたからこそ、より輝けることに気が付いた。


 今季の目標は1年間、試合にフルで出続けること。


「周りは難しいんじゃないかって言うんですけど、そこを頑張って同じ病気の人の励みになりたい」


 覚悟を決めた男は強い。自分のため、そして人のため。野球人生を、そして命をもかけた安達の挑戦が始まろうとしている。


文=筒井琴美(報知新聞)

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