大阪桐蔭を支えたエースの矜持 ある言葉を信じ続けた2年半

沢井史

練習は嘘をつかない――

「練習は嘘をつかない」という言葉を信じ、日ごろの練習からとにかく“やり切る”ことを心掛けたという 【沢井史】

 その秋から“正真正銘”のエースとしてマウンドに立つことになるのだが、徳山が最も大事にしてきたことがある。それはエースとしての立ち居振る舞いだ。

「試合だけではなくて、普段の練習から自分が先頭に立つ気持ちで取り組まないといけないと思いました。例えば、ランメニューで1本走ることを怠ったら、大事な場面での1球の失投につながってしまう。練習はとにかく“やり切る”ことが大事。野球の神様は絶対に見ていると思っていました」

 苦しい時期も、とにかく練習をして自信をつけるしかないと思っていた。

 練習は嘘をつかない――。

 その言葉を信じ続けた2年半でもあった。そんな徳山の姿に現エースの柿木蓮も感銘を受けている。柿木のいる現2年生は能力の高い選手たちがひしめき、2年生から試合に出ている者が多いが、「自分は1年長く(大阪桐蔭で)やっているし、負けないという自信はあった」と普段の積み重ねを糧に、最後までエースとしての指標となっていた。

大学で実績作ってドラ1でプロへ

 実は徳山は当初はプロ入りを志望していた。今春のセンバツで優勝したことでさらに自信はついたが、同時に一抹の不安もあった。

「結果を残せたとは言っても、自分は体がまだまだ細いし、やっていけるのかなと思いました。西谷先生(監督)との面談の時も“今行くよりも、大学で自信をつければドラフト1位で行ける力はつけられる”と言っていただいて。大学で4年間、実績を作って評価をしていただいてプロに行きたいと思っています」

 U−18野球W杯日本代表でともに戦ったメンバーも続々とドラフト指名を受けたことも刺激になった。それらをモチベーションに変え、大学では「与えられたチャンスをものにできるように、今から体を作っていきます。いずれは大学でもエースになりたいです」と闘志を燃やす。

 年が明けるといよいよ大学へ向けて本格始動する。来春、徳山は果たしてどんな表情で大学野球のマウンドを眺めているのだろうか。そして4年間の歩みは――。名門のエースとしての自信を胸に、徳山はエースへの頂上をまだまだ登り続ける。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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