堂安律「充実した“アップ”ができた」 苦しかったオランダでの半年間を振り返る

中田徹

堂安「半シーズンは苦労すると思っていた」

歯車がおかしくなったという雪のローダ戦。試合の映像を見直したことが復調のきっかけとなった 【Getty Images】

「もちろん、チームの人には言っていなかったですけれど、ここ1カ月ぐらい、コンディションが悪い中、試合に出させてもらっていた。それでPSV戦、前半で代えられて、自分の中でストレスがあったからだと思いますけれど、すごい熱が出た」(堂安)

 さらに堂安は続ける。

「フェイエノールト戦ですごく良かった。続くADO戦は点を決めましたけれど、感覚がめっちゃ悪かった。“雪のローダ”で『サッカーってこんなだったっけ?』と完全に歯車がおかしくなった。その次のPSV戦で『何とかしたい』と思ったけれど、コンディションも落ちていって悪くなり、(練習を)1、2週間ほど休んだ」(堂安)

 そこで自身を整理し直そうと思って、試合の映像を見直した。とりわけ、マン・オブ・ザ・マッチに選ばれた11月19日の第12節・フィテッセ戦は「チームとしてのベストゲームも、俺にとってもベストゲームはフィテッセ戦だったと思います。(映像を見返して)楽しくやっているなと。今日の試合も楽しくできました。何か考えてやりすぎていたら、良くなかったので」と、フィーリングを取り戻すきっかけになった。

 こういう紆余(うよ)曲折を経た半年を振り返り、堂安は「本当に充実した“アップ”ができた」と言った。その“アップ”とは、シーズン後半戦に向けての“アップ”なのだろうか。

「はい。半シーズンは自分でも苦労すると思っていた。そのことを考えてみても、この半年は自分の想像以上にできました。だから、いい感覚のまま、残りの半年できるかなと思います」(堂安)

堂安がフローニンゲンを選んだ理由

 リーグ戦に13試合出場し896分間出場。カップ戦は2試合で121分間プレーした。足して1017分。

「自分でも出場時間を計算したんですが、この半年で1000分以上、試合に出ることができたのは良かった。(19歳という)若い年齢の自分がフローニンゲンを選んだのは、試合に出て、強い強度でプレーできるという理由があった。そういう意味では意図した通り。“自分次第の場所”に来れたので、後は残り半年、自分次第で何か、先が変わるかなと思いますけれど」(堂安)

“自分次第の場所”とは、結果を出しさえすれば、どんどんステップアップできる世界のことだ。

「こっちに来たことでヨーロッパに市場価値が乗る。やっぱり日本にいるころより、いろいろな話が来るので、こっちに来て良かったと思いますね」(堂安)

 スパルタ戦のゴールで、堂安のリーグ戦ゴール数は3。カップ戦を合わせても4ゴールと「前半戦で5ゴール」という目標には届かなかった。

「後半戦で二桁に乗せたい。二桁乗せたらだいぶ違う。二桁取ったらすごいですよね? 頑張ります!」

 この半年で付けた自信、来たる半年に対する決意、日本に一時帰国するのを待ちわびる思い――。その全てが弾ける笑顔に表れていた。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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