球場の特徴がわかる「パークファクター」 初めてのセイバーメトリクス講座(6)
得点が入りやすい球場、入りにくい球場は?
得点が入りやすい神宮球場を本拠地とするヤクルトだが、2017年は得点力不足に泣いた。写真は山田 【写真は共同】
カネシゲ:もちろんそうです。
鳥越:なので、「得点のパークファクター」というのも出すことができます。さっきは「ホームランが出やすい球場、出にくい球場」でしたが、今度は「得点が入りやすい球場、入りにくい球場」というのを見てみます。得点なのでホームランだけではなくヒットなども関係してきます。それらをひっくるめて、得点のパークファクターです。
得点パークファクター={(本拠地球場での得点+本拠地球場での失点)/本拠地球場での試合数}/{(他球場での得点+他球場での失点)/他球場での試合数}
カネシゲ:こっちのほうが実用的かもしれませんね。
鳥越:そうです。実はこっちのほうが重要で……なんと驚愕(きょうがく)の事実、ヤフオクドームを見てください。
【資料提供:鳥越規央】
鳥越:はい、ヤフオクドームはホームランのパークファクターでは1.25だったのに、得点のパークファクターでは「0.881」と、他球場に比べて点が入りにくいんです。これは前年オフに人工芝を貼り替えたため、ボールが転がりにくくなってヒットが出にくくなったためではないかという考察があります。
カネシゲ:なるほど。得点の場合はヒットの出やすさも重要ですもんね。それでもやっぱりZOZOマリン(0.896)は点が入りにくいのか……。
鳥越:ファウルグラウンドが広いので、フライがアウトになりやすいというのもあります。
カネシゲ:たしかにファウルグラウンドが広いほど投手有利ですもんね。
鳥越:では次にセ・リーグの得点パークファクターを見てみましょう。
地の利を生かせなかった燕打線
【資料提供:鳥越規央】
鳥越:他球場より1.4倍点が入りやすい、と。これはかなり極端です。それでも今年のヤクルトは12球団最下位の得点力だったじゃないですか。余計に深刻な得点力不足だったというのがわかりますね。やっぱりケガ人が多すぎた。
カネシゲ:横浜スタジアム(1.035)や東京ドーム(1.061)は、ほぼ「1」に近い数字。そして甲子園(0.853)よりも得点が入りにくいのがナゴヤドーム(0.850)。ほんのちょっとの差ですが。
鳥越:やっぱり西の球場は0.8台と点が入りにくいですね。
カネシゲ:これなぜでしょうか。たまたまですかね?
鳥越:うーん、ホームランが出にくいのもあるし、球場の広さ狭さもあるし……。
カネシゲ:確かに東の球場の方が狭い。ということは西のほうが土地が安いってことかな?
鳥越:そういう話じゃないと思いますよ(笑)。 ちなみに余談気味ではありますが、パークファクターは「ホームラン」や「得点」だけではありません。いろんなものがパークファクターとして計算できます。
カネシゲ:いろんなものが?
鳥越:たとえばBABIPとか、単打、二塁打、三塁打が出やすい球場とか。「三振が出やすい球場」などのパークファクターも導き出せます。
カネシゲ:三振が出やすい球場? それはマウンドの影響ですか?
鳥越:風だと思います。特にZOZOマリン。三振パークファクターが「1.12」。三振が出やすいんですよ。
カネシゲ:そういえばアンダースローの渡辺俊介投手も、強風を利用して変化球を投げていたと言っていました。
鳥越:あと1995年、野田浩司投手(オリックス)が日本記録となる19奪三振をマークしたのもマリンでした。めちゃめちゃ風吹いていました。
カネシゲ:なるほど、ZOZOマリンで得点が入りづらい理由がわかってきました。
鳥越:あと「四球が出やすい球場」としては神宮球場と京セラドームがあげられます。原因はなんでしょうね?
カネシゲ:京セラはやっぱり、後ろの「マダムシンコ」の看板じゃないですか?
【イラスト:カネシゲタカシ】
鳥越:あははは、じゃあ神宮はガラス越しに記者席が見えるからとか?(笑)
カネシゲ:美人の局アナが来てるぞ! 緊張してきた、みたいな(笑)。