強い気持ちで、ACL優勝を誓う柏木陽介 「浦和レッズを強豪クラブにするために」

木崎伸也

ACLに生かされたCSの経験

ACLでは、年間勝ち点1位ながら鹿島に敗れた昨年のCSの経験が生きてる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――ACLノックアウトステージの浦和は、第1戦で大量失点してダメかなと思われながら、第2戦で爆発して逆転するという展開が続きました(ラウンド16の済州ユナイテッド戦ではアウェーの0−2からホームでは3−0の勝利。準々決勝の川崎フロンターレ戦はアウェーで1−3からホームで4−1の勝利)。諦めない戦いができている要因は?

 僕らが去年のチャンピオンシップ(CS)で味わった経験が生きていると思います。鹿島アントラーズ相手にアウェーで1−0で勝って「いけるな」となって、ホームで1−2で負けてしまった。今回のACLの相手は、僕らの去年の鹿島戦よりも点差が開いているわけじゃないですか。余裕を持ったまま、次に臨むという隙があったと思うんです。そこを僕らはうまく突けたのかなと思います。

――相手の油断を感じた部分はあったんですか?

 はい。余裕を持っているなと。「守備をすればいい」と思っているように感じました。済州も川崎も「守り切れば、勝ちだ」という気持ちがあったと思います。僕らの去年の経験で言えば、鹿島とのセカンドレグでこちらが先制したけれど、アウェーゴールのルールを考慮すると、向こうからすれば「2点取れば勝ち」という状況があった。こういう経験が生きて、ACLで苦しい展開になっても、強気でいこうという気持ちになれています。

ACL優勝に対する気持ちはすごく強い

ACLは「これ以上ないタイトル」という柏木。優勝への思いは強い 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――ACL優勝への思いを聞かせてください。

 Jリーグでやっている限り、これ以上ないタイトルだと思います。浦和にとっては10年ぶりだし、ここまで来られることはなかなかありません。Jリーグでも3位以内を諦めないという気持ちを常に持っていましたけれど、ACLのタイトルを獲るためにコンディションを(ACLを優先して)持っていく部分も、すごく重視していました。ACL優勝に対する気持ちはすごく強いです。

――Jリーグで3位以内を意識しながらも、それを徹底できなかったということですが、それだけサッカーはメンタルのスポーツだと思いますか?

 サッカー選手は下手でも「自信」と「気持ち」があれば、結構いいプレーができたりするんです。僕の感覚では、ある程度のレベルになれば、日本代表までいくことはそれほど難しくはないのかなと。ただ、そこに残るのが難しい。自分は残れなかった選手。本当に気持ちが強い人たちが今も代表に残っている。代表を経験して、チームでも2部に落ちそうな経験をして、あらためて(サッカーは)メンタルなスポーツだなと感じます。

引退したら、フロントに入りたい

将来は浦和のフロントに入りたいと語る柏木 【撮影:大崎聡】

――ACLで優勝すれば、クラブワールドカップ(W杯)に出場することができます。勝ち上がって、欧州王者のレアル・マドリーと対戦してみたいですか?

 それはもちろんありますね。去年のクラブW杯では、できれば鹿島との試合は見たくなかったんですけれど(笑)、あれだけ(決勝まで)勝ち進むとどうしても見てしまう。レアル・マドリーはある程度遊びでくるとは予想できました。でも、鹿島は本気にさせた(延長戦の末2−4で敗戦)。鹿島の抜け目のなさを感じました。

 もしうちがレアル・マドリーと対戦できたら、守備でどうにかしようという戦いではなくて、ボールを保持したチャレンジするサッカーで臨みたいです。

――将来の話も聞かせてください。この先、柏木選手はどんなストーリーを描いていますか?

 僕はレッズを強豪クラブにしたい。ぶっちゃけ、今は強豪ではないと思う。強豪って鹿島みたいなチームだと思うんです。軸がしっかりしていてブレない。チームの戦い方も、どの監督でもどの選手が出ても変わらず、一貫したチーム作りができている。それはクラブの組織がしっかりしているからだと思います。

 レッズはこれだけのサポーターがいて、お金もあって、素晴らしい施設もある。これだけそろっているクラブは、日本になかなかない。2年に1回くらい優勝するチームでなければいけないと思います。

 もし自分が浦和で現役を終えることができたら、クラブの中に入りたい。選手からフロントに入って、クラブの軸をしっかりさせる人間になっていけたらと思っています。

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著者プロフィール

1975年、東京都生まれ。金子達仁のスポーツライター塾を経て、2002年夏にオランダへ移住。03年から6年間、ドイツを拠点に欧州サッカーを取材した。現在は東京都在住。著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『革命前夜』(風間八宏監督との共著、カンゼン)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)など。17年4月に日本と海外をつなぐ新メディア「REALQ」(www.real-q.net)をスタートさせた。18年5月、「木崎f伸也」名義でサッカーW杯小説『アイム・ブルー』を連載開始。

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