イチローのマリナーズ復帰の可能性を探る 戦力的なニーズを超えた判断もある?

丹羽政善

マーリンズは主軸の放出を模索

マーリンズはイチローとの来季の契約オプションを行使しないことを発表。イチローはFAとなった 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 決められなかったから、決めた、というのが実情か。

 3日(現地時間)、マーリンズはイチローとの来季の契約オプション(200万ドル/約2.3億円)を行使しないことを発表した。

 編成部門のトップを務める元ヤンキースのデレク・ジーター氏は、チーム総年俸の削減に動いており、ジャンカルロ・スタントン(2500万ドル/約28.5億円)、マーティン・プラード(1350万ドル/約15.4億円)、ディー・ゴードン(1080万ドル/約12.3億円)のトレードを試みているなどと報じられている。

 スタントンをトレードした場合、外野が一枠空くが、そこには今季2A(サザン・リーグ)で首位打者を獲得し、4日に行われたアリゾナ秋季リーグのオールスターゲームにも選抜されたブラクストン・リーを起用するのではないか、というのが地元記者らの見立て。

 それでもまだ4番目の外野手が空いているが、スタントンらのトレードで別の外野手を獲得する可能性もある。そうなればイチローどころか、リーの起用法も不透明となる。

 スタントンらのトレードがどんな展開を見せるのか。そこが見通せない限り、現段階でイチローのオプションを行使するわけにもいかなかった――ここまでの経緯を整理すれば、ざっとそんな流れか。

補強が進まないと必要かどうか見えず

 よって、状況次第では再びイチローサイドに接触する可能性は残されているものの、それがいつになるかも不透明だ。

 もっともイチローにしてみれば、こうなることも想定内だろう。

 シーズン最終戦の試合後、オーナーの変更で去る人がいる――と振られると、「僕も去るかもしれないですけどね」と苦笑し、続けた。

「それは分かんないもんね」

 その時から変化は覚悟していた。2014年のオフ、イチロー獲得に動いた関係者はもう、マイケル・ヒル編成本部長を除いて、全員がチームを離れた。

 ただ、フリーエージェントになったところで、何かが劇的に動き出すわけではない。

 今年は、5月まで打率1割台に低迷した。7、8月は3割以上の月間打率を残したものの、大リーグの球団がイチローに求めるとしたらやはり、代打、主力休養時のスタメン出場、守備固め、代走、リーダーシップといった役割だろう。

 現時点で考えるなら、パドレスあたりは外野の控えとリーダーシップを必要としており、獲得を検討してもおかしくないが、イチローをあくまでも控え選手としか評価していないのだとしたら、どのチームもマーリンズと同じで、ある程度補強を進めてみないと、イチローのような選手が必要なのかどうか見えてこない――早くてもウインターミーティング(12月10日〜14日)が終わるまでは。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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