DeNA今永が目指す真のリベンジ 昨年の悔し涙から今年「幻想」の涙へ

日比野恭三

広島が成し遂げられなかったからこそ

今永は日本シリーズで地元のソフトバンクと対戦できることを「夢だった」と語る 【(C)YDB】

 試合後、記者に取り囲まれた今永は「リベンジはできたか」と問われた。その答えは、予想を超えるものだった。

「去年やられた時は自分自身のリベンジだと思ってたんですけど、そうじゃなくて。チームがどれだけリベンジできるか。リベンジするってことは、広島が達成できなかった日本一になること。それがいちばんの目標だと思う」

 個人として、ここ広島でのCSで好投すればリベンジが成立するわけではない。

 チームとして、広島にCSで勝てばリベンジが成立するわけでもない。

 昨年の広島が成し遂げられなかった日本一になってこそリベンジは成立する、と今永は答えたのだ。

 翌日のゲームにも勝ったDeNAは、4勝2敗でCSファイナルステージを突破し、19年ぶりの日本シリーズに進出することとなった。今永の考え方に従えば、真のリベンジを果たす舞台への挑戦権を得たのだ。

ソフトバンクとの対戦は「夢だった」

 戦いをひとまず終えた今永が「幻想じゃないですか」と落涙を否定した時、筆者がふと思い出したのは、2日前にテレビで見たボクサーの姿だった。ダイレクトリマッチに勝利し、WBA世界ミドル級チャンピオンとなった村田諒太。勝利の瞬間、感極まった表情を見せていた新王者は、リング上でのインタビューで「泣いてません。(インタビュアーが)幻覚を見てただけです」と笑って否定していた。

 そして、高校の恩師が教えてくれたこととして、こんな話を披露した。

「ボクシングで試合に勝つってことは、相手を踏みにじって、その上に自分が立つということだ。だから勝つ人間は責任が伴うんだって言ってました。だから彼のぶんの責任を伴って、これからも戦いたいと思ってます」

 野球もまた勝負である以上、同じことが言えるのではないか。

 リーグ3位からの日本シリーズ進出には、異論を唱える人もいる。独走のリーグ優勝を果たした広島の選手たち、ファンたちはなおさら、煮え切らない思いを胸の奥底に抱えているに違いない。

 だからDeNAは、広島の責任をも伴って日本シリーズを戦わねばならないだろう。今永が言っていたのは、きっとそういうことだ。

 去り際に、福岡出身の24歳はこう明かした。

「口には出してこなかったけど、地元の福岡ソフトバンクと日本シリーズで戦うことはぼくの一つの夢だったんです。なんか、わくわくしますね」

 セ・リーグを代表するチームとして、強者ぞろいのソフトバンクと激突する頂上決戦。

 運命のゴングは、まもなく鳴る。

(取材協力:横浜DeNAベイスターズ)

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著者プロフィール

1981年、宮崎県生まれ。2010年より『Number』編集部の所属となり、同誌の編集および執筆に従事。6年間の在籍を経て2016年、フリーに。野球やボクシングを中心とした各種競技、またスポーツビジネスを中心的なフィールドとして活動中。

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