ランに必要な股関節の持久力を強化! キック系レッスンで力強い走りを

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片脚でキック! 軸足の踏ん張りが大事!

キックする脚ではなく、軸足の踏ん張りに気を付けよう! 【写真提供:内田英利】

 キック系のレッスンでは、片脚でキックする際、もう一方の脚である軸足で支える事が多くなります。膝を曲げたまま蹴る「膝蹴り」、膝を伸ばして脚を前方へ出す蹴る「前蹴り」、脚を横に出して捻るように蹴る「回し蹴り」なども、軸足の踏ん張りが効かないと、格好良いキックの形にはなりません。

 上げている脚は、ランニングをする時にも必要となる股関節の動き……曲げる・伸ばす等を大きく動かす事でキックすることになりますが、もう一方の踏ん張っている軸足は、股関節が本来持つ複数の動き……曲げよう! 伸ばそう! 内側に捻ろう! 外側に捻ろう!という、蹴る時に発生する様々な動きを「我慢する」事で踏ん張っています。その“踏ん張り力”を無意識にたくさん使う事が、股関節を支える大本の筋肉を刺激し、持久力をアップさせる事になるのです。

“踏ん張り力”が増す事で、走っている時に、身体が左右にブレずに、エネルギーロスをしない“省エネ走り”が出来るという訳です。

色々な角度で蹴る時には、上半身……胸周りの“捻り”を意識して!

胸回りの“捻り”を意識しよう! 【写真提供:内田英利】

腰は回らない! 【Getty Images】

 軸足の“踏ん張り力”を身に付けるのと同時に、気を付けたい事が、キックを打つ瞬間の上半身の安定です。様々な方向から蹴る時に、腕を振ったり、お腹に力を入れたりして、バランスを取ろうとしますよね。突っ立った上半身のまま蹴ろうとすると、上体が前に倒れてしまったり、左右によけるような恰好になってしまったりと、安定力に欠けてしまいます。そこで、上半身を上手に「捻る」事で、身体全体に安定感が生まれます。そのためには、上半身の“どこか”を捻る事で、ブレなく蹴る事が出来るのです。その“どこか”とは?

“胸回し”を身に付け、バテないランナーに! 【写真提供:内田英利】

 この記事を読んでいる皆さんの中で、野球やゴルフを経験している方も多くいらっしゃることでしょう。「バットは、腰を回すようにして振りなさい!」「ドライバーは、腰を回して手打ちにならないように!」等、監督やコーチから、アドバイスを受けた経験はありませんか?

 残念ながら、腰回りの骨(腰椎)は、左右に約5度ずつしか動く事が出来ず、左右を合わせても、約10度しか回す事ができないのです。しかし、胸回りの骨(胸椎)、特に腰に近い骨は、何と約30度以上も動き、左右併せて約70度も回す事ができるのです。

 キックの動きをする際にも、腰を捻るのではなく、胸を回すイメージで蹴ると、バランスが上手に取れて、キックする脚にも、支える軸足にも力を入れる事が出来ます。

 ランニングは、腕を振って前に進んでいるのですが、ただ単に腕を振っているだけでは、上半身が突っ立ってしまい、上半身で空気抵抗を強く受ける事で、エネルギーロスになります。しかし、胸を回すイメージで腕を振ると、風の抵抗が上手く左右に逃げて、エネルギーロスが少なくなります。また、肩が自然と前に出て、股関節を使ってスムーズに脚が前に出て、力強い走りに変わります。加えて、脚の疲労を上半身が助けてくれる事も少なくないのです。ですから、この“胸回し”が出来るランナーは、上りでもバテる事なく、スピードを一定に保ったまま、走れている事が多いのです。

膝蹴り 【写真提供:内田英利】

 キック系のレッスンでは、キックする脚ではなく、軸足の踏ん張りを意識して蹴る事で、股関節を支える大本の筋肉を刺激する事がポイントになります。また、腕を振る際には、胸を回すイメージを持って走る事で、肩が自然と前に出て、エネルギーロスの少ない、力強い走りに変わっていく事でしょう。

 それでは、ランニングのパフォーマンスを上げるための具体的なキック系トレーニングとして、3種類のキックをお勧めします。

 1種類目は、股関節を曲げながら膝を曲げたまま蹴る「膝蹴り」。

前蹴り 【写真提供:内田英利】

 2種類目は、股関節を曲げて膝を上げ、上げた膝を伸ばして脚を前方に出して蹴る「前蹴り」。

回し蹴り 【写真提供:内田英利】

 そして3種類目は、股関節を外側に広げながら脚を横に開き、股関節を捻るのと同時に膝を伸ばして蹴る「回し蹴り」になります。
 スピードは、「走る」スピードよりも、かなりゆっくりと、股関節や膝の関節を動かし蹴ってみましょう。

 回数は、左右それぞれ、20回を1セット行えば充分なトレーニングになります。トレーニングを継続していくと、股関節周辺の筋肉が強くなってきます。ランニングの時に、脚が運びやすくなってきたと実感できるようになれば、セット数を2セット、3セットと増やしてみましょう。

 次回は、ランニングのパフォーマンスを上げる、エアロビクス・トレーニング第3弾……ポールウォーキングのポイントを紹介しますので、お楽しみに!

内田英利(うちだ・ひでとし)

1971年生まれ。茨城県出身。日本大学卒業後、立命館大学に進学。立命館大学在学中に運動生理学などを学び、その後、米国の栄養学修士課程を経る。現在は、女性や高齢者向けの生活習慣病予防プログラムの開発、フィットネストレーナーの育成、生涯フィットネスに関する講演や運動指導などを行う。日本成人病予防協会認定講師、健康管理士一般指導員、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)認定講師、健康運動指導士。大相撲の貴乃花親方との共同開発プログラム「シコアサイズ」、テニスボールを使ったヨガ「テニスボール・ヨガ」を販売。専門分野は、陸上(中長距離)や打撃系格闘技のパフォーマンスアップ。株式会社フィットネス・ゼロ代表取締役。パーソナル・フィットネススタジオ「コア・フォレスト」運営責任者。現在は、実業団の陸上選手やプロ格闘家を指導。一般の方向けには、主に、グループでのランニング指導を行う。フルマラソン歴14年。ベストタイムは2 時間45分01秒。「グアム ココハーフマラソン&駅伝リレー」には、2010年から5年続けてツアー参加者のペースメーカーとして帯同。

取材協力 コアフォレスト

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著者プロフィール

習慣的にスポーツをしている人やスポーツを始めようと思っている20代後半から40代前半のビジネスパーソンをメインターゲットに、スポーツを“気軽に、楽しく、続ける”ためのきっかけづくりとなる、魅力的なコンテンツを提供していきます。

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