堂々とW杯行きを決めたスペイン代表 世代交代を実現し、本大会でも優勝候補に

“フリア・ロハ”の時代に終止符

難しい状況の中でも、ロペテギ監督(右)はチームを結束させた 【写真:ロイター/アフロ】

 現役時代はGKだったフレン・ロペテギ新監督は、デルボスケの信念を受け継ぎ、ビジャールのスキャンダルが生じた際のような難しい状況でもチームの結束を固めることに成功してきた。

 カタルーニャ自治州の独立を問う住民投票を支持したジェラール・ピケが一部ファンから誹謗中傷を受ける事態が生じた今回もそうだ。バルセロナのセンターバックは投票する権利を主張しているだけで独立を望んでいるわけではないと説明した上で、今は引退を表明していた来年のW杯以降も代表でプレーし続けることまで検討していると明かしている。

 U−21、U−19代表を率いて、欧州選手権を制した経験を持つロペテギの指揮下で、スペインは望み通りの世代交代を実現してきた。アラゴネスが“フリア・ロハ(激情の赤)”と呼ばれていた時代に終止符を打ち、テクニックに優れた選手たちを集めて確立したショートパス主体のポゼッションスタイルに、台頭してきた若い世代が新たな風を吹き込んだのだ。

南アフリカ大会の再現は十分にありえる

優勝候補の一角となったスペイン。南アフリカ大会の再現は十分にありえる 【Getty Images】

 以前のスペインはバルセロナの選手たちが主軸を担っていたが、今ではピケ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツ、アンドレス・イニエスタの4人を残すのみとなった。一方でプレミアリーグ勢(ダビド・シルバ、ペドロ・ロドリゲス、ナチョ・モンレアル、先日アトレティコ・マドリーに復帰したジエゴ・コスタら)を中心とした国外組が増えてきている。

 ジネディーヌ・ジダンの指揮下で確固たる自信を身につけ、2年連続でチャンピオンズリーグを制したレアル・マドリーからは、キャプテンを務めるセルヒオ・ラモスに加え、ダニ・カルバハル、今夏チェルシーに移籍したアルバロ・モラタ、2人の新たなスター、イスコとマルコ・アセンシオらが台頭してきた。そしてGKはカシージャスの理想的な後継者となったダビド・デヘアが世代交代の象徴的存在となっている。

 とりわけ中盤から前線にかけて多くの人材に恵まれている現在のスペインは、中盤の底に構えるブスケッツを中心に、常に3人のオーガナイザーが長いボールポゼッションを通したゲームコントロールを担い、創造性溢れる攻撃で相手ゴールを陥れる。さらに過去にも増して激戦区となった前線では、モラタ、アリツ・アドゥリス、ジエゴ・コスタ、そして必要とあればビジャもゴールをもたらしてくれる。

 W杯予選では好チームのイタリアに3−0で圧勝し、最終節を前にグループ首位の座を確定させたスペインは、本大会でも優勝候補の一角と見られるようになった。このまま順調にいけば、10年に南アフリカで成し遂げた成功を再現できる可能性は十分にあるだろう。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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