送りバントは“消えゆく戦術”なのか!? MLBで激減する理由を探る
強打者を2番で起用
スタントンらの強打者を2番打者として起用するチームが増えたことも送りバント減少の要因に挙げられる 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】
昨年、カブスが15年の新人王、クリス・ブライアントを夏場から2番に据えると、彼は39本塁打、102打点でリーグMVPとなり、チームは108年ぶりにワールドシリーズを制覇。ブルージェイズは15年に主に2番打者として打点王、リーグMVPに輝いたジョシュ・ドナルドソンを昨年も引き続き2番で起用し、2年連続のポストシーズン進出を果たしている。
今年もナ・リーグ西地区の首位を行くドジャースは、昨年は主に2番で26本塁打を放って新人王に輝いたコリー・シーガーを、同じ打順で起用し続けている。現在、ナ・リーグの本塁打王争いを独走中のスタントンも、5月下旬からは2番が定位置。ヤンキースもジャッジを2番で使ったことがある。
彼らは2番打者であっても「つなぎ役」ではなく、あわよくば長打で走者をかえすことを期待されるため、送りバントをすることはまずない。だから、11年にはメジャー全体で計296個あった2番打者の犠打は昨年は93個まで減っており、今年はさらに少なくなりそうなペースである。
バント下手も要因の一つ?
「彼ら(選手たち)は練習しないからバントができない。バントの仕方も分かっていないんだ。私に言わせれば、バントは練習さえすれば、世界中で最もたやすいことだよ。でも練習しなければ、世界で一番難しいことなんだ」
そう語っているのは、現役時代にシーズン最多犠打をマークしたこともあるフィリーズのラリー・ボーワベンチコーチ。確かにメジャーリーグの試合を見ていると、お世辞にもバントがうまいようには見えない選手も多い。サインが出ても、簡単には決められないこともしばしばである。それならベンチが送りバントのサインを出すことをためらうのも、仕方のないことかもしれない。
NPBでも2015年にセ・リーグ優勝した東京ヤクルトが首位打者の川端慎吾を2番に据え、その後も横浜DeNAの梶谷隆幸、東北楽天のペゲーロ、巨人のマギーら、「バントをしない2番打者」が目立つようになった。それでも、今シーズンも1試合平均0.74犠打と、依然として送りバントは作戦として重用されている。
一方、メジャーリーグでは今季の1試合平均犠打は0.19で、昨年をさらに下回るペースである。華やかなホームランブームの陰で、送りバントはこのまま「消えゆく戦術」になってしまうのだろうか。
※文中の今季成績はMLB、NPBとも9月12日(日本時間)時点