「彼は宇宙人」意外性の男・多田修平 メンタルタフネスを武器に世界陸上へ
制御能力が光った日本選手権
悪天候の日本選手権でも力を発揮 【写真は共同】
興味深いのは、準決勝では対戦相手に気を取られて走りを乱しながら、決勝では立て直して勝負強い走りをなし遂げた制御能力だ。
6月23日の準決勝。先を急ぐあまりに60メートル付近で力みが生じ、オーバーストライドになってしまう。サニブラウン・アブデルハキーム(東京陸協)に次ぐ10秒10の2組2着という結果に、多田はこう振り返った。
「後半の内容が全然だめだった。前に人がいるとちょっと硬くなるくせがあるので、決勝は周りを気にせず、自分の走りに集中したい」
そして、これとまったく同じ見方をしていたのがほかでもない、花牟禮監督である。レース後、多田にメールを送る。
「気持ちで前に行こうとしないこと。重心を乗せることができれば、おのずから結果は残せる。勝ちを捨てること。自分の走りをすること。周りに惑わされずチャレンジャーであること。レースを楽しんできてください」
多田の返信は「ありがとうございます。これらの助言を生かして頑張ります」だった。
経験を重ねるごとに増すたくましさ
レース後、「後半もいい感じでスピードを維持できた」と手応えを口にした上で、「視点を真っすぐにして、自分のレーンだけを見つめて走りました」と初めて得られた集中の視覚イメージに言及した。持ち前のタフな精神力を発揮するための、新たなコントロール方法を獲得したということなのかもしれない。
初めての世界選手権の号砲のときが近づく。語った目標は「僕にとって最大の目標は東京五輪なので、100メートルでは最低でも準決勝に進みたいし、400メートルリレーのメンバーに選ばれたらリオ五輪の銀以上のメダルを取ってきたい」。これまでとは比べ物にならない世界最高峰のレースでどんな暴れ方をしてくれるか、多田からますます目が離せなくなってきた。