社会人ナンバーワン左腕・田嶋大樹の自覚 原動力は悔しさ、そしてチームのため

週刊ベースボールONLINE

戦う相手は「自分自身」

 ストイックなまでに腕を振る、その原動力は悔しさに尽きる。未登板だった入社1年目の15年の都市対抗は、三菱重工神戸に2対6で敗れて初戦敗退。翌2年目は、王子との初戦の先発マウンドに上がり9回まで無失点も、援護なく0対0のまま延長に入ると、10回裏にサヨナラ2ランを浴びて1回戦で姿を消した。

 中学、高校と全国舞台を経験してきた左腕も、いまだ全国の頂点に立ったことはない。だからこそ、「チームみんなで喜びを分かち合い、今年は最高の1年にしたい。特に都市対抗は2年連続で1回戦負け。『今年こそ』という思いは強いです」と新年を迎えた今年1月から、頂点を見据えて鍛錬を重ねてきた。

 まだ見ぬ“頂”へ。ただ、地に足を着け、戦う相手は「自分自身」と言い切る。昨年の都市対抗覇者、トヨタ自動車のエース・佐竹功年を「要所で絶対に打たれない制球力がある」と尊敬する投手に挙げるも、「ライバルはいない。自分がしっかり力を出せば上に行ける。常に自分との戦いです」。今秋のドラフトも「自分が結果を出せば評価は上がる。都市対抗で結果を出すだけ」と目先の一戦を見る。

都市対抗で実力を証明し、プロの道へ

 そのための課題も見つかっている。二次予選準決勝から中3日のNTT東日本との第1代表決定戦は最速151キロを計測するも、5回5失点。「高めに浮くケースが多かった。勝負所での制球力を磨かないと」と語気を強め、中1日でのセガサミーとの第3代表決定戦を7回1失点。出場権を手にしたが、「勝負はこれから。優勝するために成長していかないと」と振り返った。

 高卒3年目の弱冠21歳ながら落ち着き払った口調と、物怖じしない堂々たるマウンドさばき。常に口にする“チームのために”の思いが原動力なのは間違いない。そんなエースの自覚を象徴するのが、都市対抗で使用するグラブでもある。「これを使おうと思っているんです」と笑いながら指したグラブの色は会社カラーの“グリーン”。会社、チームを背負うエースの思いを胸に「どんな相手、どんな状況でもエースの役割を果たして、優勝をつかみとりたい」と鼻息は荒い。

 準々決勝から決勝まで3連戦の日程となる都市対抗に向けて、“投げるスタミナ”は万全。連投も辞さない覚悟で、追い求めるのは勝利の2文字だけ。前評判どおりの実力を証明し、プロへの道を切り拓く。

取材・文=鶴田成秀

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