清宮幸太郎のファンタジーは最終章へ 最後の夏を「早稲田実の夏にしたい」

清水岳志

夏はセンバツの正捕手が背番号1番

清宮とともに1年夏の甲子園を経験している服部 【写真は共同】

 夏のメンバー発表で「おっ」と思わせたのは背番号「1」に2年生の雪山幹太が登録されたこと。大黒柱不在、懸案の投手陣は驚くべき決着を見た、というのは言い過ぎか。雪山はセンバツ、都大会はレギュラー捕手。関東大会でケガのため外野に回った。5月下旬の沖縄での招待試合で初めてゲームに登板。その後、強豪との練習試合に投げて安定した内容を残してきた。中学時代は神戸中央シニアでエース。どこでもこなす野球センスは抜群で、コントロールで勝負する。

 他の投手は1年の時に甲子園でも登板した服部雅生、3年になって頭角を現してきた今井佑哉、昨秋の都大会優勝の原動力になった2年生の中川広渡、左腕の赤嶺大哉ら。みんな経験は豊富だが、とにかく早稲田実は投手陣がどれだけ踏ん張れるか、にかかる。

 捕手には関東大会から雪山に代わって野村が座る。野村もシニア時代は捕手で、「当時のミットを急遽、ひっぱり出してきた」という。慣れたポジションで投手も投げやすそう。全体が引き締まった印象だ。空いたサードに1年の生沼弥真人、セカンド橘内俊治、ショート野田優人は変わらない。外野には福本翔、横山優斗、小西優喜が入りそうだ。

ライバル日大三は反対ブロック

「短かった」という高校生活を完全燃焼できるかは「最後の夏次第」と語る清宮。3度目の甲子園へ向けて、15日に初戦を迎える。 【写真は共同】

 第1シード。組み合わせは比較的、恵まれた感がある。秋、春と都大会の決勝を戦った因縁の相手、日大三は反対ブロック。決勝まで当たらない。日大三も全国トップクラスの戦力を有する。秋の決勝で清宮から5三振を奪った桜井周斗、春からたびたびマウンドに上がって、150キロ近い球速を出している金成麗生の両左腕はプロが注目する。

「できるなら日大三とは当たりたくない」と和泉監督も清宮も大会前に同じ表現で苦笑いだった。全国でも最も注目される、今年度3度目の大一番は実現するのか。1年のデビュー戦で既にスポーツ紙は大きな紙面を割いた。デビュー前からこれほど騒がれた高校生はいない、とベテラン記者は言う。そこから1年夏、今年のセンバツと2回、甲子園に出場。もう、最後の夏を迎える。

「高校野球、短かったです」と本人は言う。「どんなものか思い描いてましたが、今はいろんなことが頭の中をよぎっていくように時間が流れてます」

 高校野球、完全燃焼してきたのだろうか。

「この夏次第ですね。センバツの負けは今までにないくらい悔しかった。甲子園に行って勝ちたい」

最後の夏は野球の神様に愛されるか!?

 東西東京大会の開会式。

『野球の神様に愛されるように――』

 選手宣誓でのフレーズだ。動じないし、メディアのインタビューには慣れている。大人びた立ち居振る舞いが多いが、メルヘンチックだった。ファンタジーの最終章が近いから。その結末は野球の神様だけが知っている。

2/2ページ

著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント