シーズン終盤に見えた吉田麻也の「変化」 武器を身に付け、アジアを代表するCBに

田嶋コウスケ

筋力トレーニングで体もプレミア仕様に

イブラヒモビッチ(赤)については「守備はほとんどしないけれど、その分、スイッチが入る時は恐ろしい」と舌を巻く 【写真:ロイター/アフロ】

 試合に出られなかった時期に筋力トレーニングに励み、12年の加入時に比べると体重は7、8キロも増えた。動きが重くならないように岡崎慎司のパーソナルトレーナーを務める杉本龍勇氏(法政大学経済学部教授)の指導を受けながら、アジリティー(俊敏性)を高めるトレーニングも同時進行で行った。おかげで、接触プレー時には力強く、敵の突破には軽快なディフェンスで対応できるようになった。

 また、在籍5季目となるプレミアクラブへの対応力もついた。

 今季、リーグ戦2試合+リーグ杯・準決勝2試合と「合計4試合」を戦ったリバプールについては、「何試合もやっているから、相手の出方や戦い方は理解している」という。3−4−2−1の前線3人が流動的に動き回るトッテナムについても、「1人の選手に付きすぎると、ほかの選手にスペースを与えてしまう。だから自分が動くのではなく、『マークを受け渡すように』と。自分のポジションから離れないようにしました」と守備のコツをつかんだ。

 もちろん、ズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・U)やアレクシス・サンチェス(アーセナル)、セルヒオ・アグエロ(マンチェスター・C)といったワールドクラスのストライカーと対峙(たいじ)した経験も、財産として蓄積されている。

 なかでもイブラヒモビッチについては、「守備はほとんどしないけれど、その分、スイッチが入る時は恐ろしい。時間帯によってエネルギーをセーブし、最後の最後で出力をマックスにしてくる。その使い分けがベテランらしい」と舌を巻いた。

 そして、こう続ける。

「イブラヒモビッチのような勝ち方を知っている選手とどんどん対戦して、彼らとの戦いに勝っていきたい。そうすれば、成長できる。ああいう選手たちとやれるプレミアリーグは素晴らしいなと思う」

W杯での連戦を見据え、「タフさ」を身に付ける

吉田の経験はW杯で上位進出を目指す日本代表でも、間違いなく生かされるはずだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そんな吉田に「今シーズン、一番足りないと感じたところは?」と尋ねてみた。すると日本代表DFは、ウインターブレイクのないプレミアリーグをフルに戦うために「連戦でも動けるタフさを、もっと身に付けたい」と答えた。リーグ戦とFA杯、そしてリーグ杯──。たしかに、ハードスケジュールが続くイングランドのサッカーにはタフさが必要だ。

 タフさを身に付けたいと語る、その視線の先にはワールドカップ(W杯)での日本代表の戦いもあるという。

「W杯も連戦になりますから。予選(グループリーグ)は3試合で、そこからベスト8に行くためには、さらに2試合に勝たなければいけない。5試合を連戦で戦うので、良いパフォーマンスを継続して出せるようにならないといけない。そういうところは意識しています」

 プレミアリーグに身を置く吉田は今、アジアを代表するCBへと成長した。そして、彼の経験はW杯で上位進出を目指す日本代表でも間違いなく生かされるはずだ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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