素人にも意見求める“素直”な新大関 高安が見据える角界の頂点

荒井太郎

勝ちパターンを確立、手に入れた自信

勝ちパターンを確立したことで、揺るぎない自信を手に入れる。2度目の大関取りはプレッシャーに押しつぶされることなく、白星を重ねていった 【写真は共同】

「初日からリラックスできていたし、良い流れで取れた」

 立ち合いのかち上げで相手をはじき飛ばし、そのまま突っ張って前に攻める“勝ちパターン”を確立したことで、揺るぎない自信も手に入れた。プレッシャーに押しつぶされて出直しを余儀なくされた大関候補は過去、枚挙にいとまがないが、高安の相撲ぶりはそんなケースとは全くの無縁だった。それもそのはず。2度目の大関取りの場所を迎えた本人の意識は、別のところにあったからだ。

「周りは大関、大関と言っていたけど、そこに意識を置くのではなく、星勘定を考えないで全部、勝つんだという気持ちでやってきた」

 場所前から「全勝優勝が目標」と公言し、初日から快調に白星を積み重ねていった。6日目、玉鷲の強烈な突き押しに屈して目標達成はついえ、最終盤は連敗に終わった。大関は手中に収めたものの、悔しさも残る場所だったに違いない。

心身ともに強力な武器を携える

 大関取りが懸かった場所前、高安自身からこんなことを聞かれた。

「僕のかち上げ、どこか直すところはありますか」

 6日目の玉鷲戦は一瞬、立ち遅れ、10日目の白鵬戦は立ち合いで右に動かれ、それぞれ“必殺技”は不発に終わった。今後、夢の初賜盃、さらにはもう1つ上の地位を目指すには、若干の“マイナーチェンジ”も必要となってくるだろう。

 大関昇進伝達式の会見で、先代師匠(元横綱隆の里)の教えで一番大事にしていることとして、「常に素直でいること。そういう気持ちは今でも持っています」と答えた。

 一度も本場所の土俵に上がったことのない“素人”にさえ意見を求める、平成生まれ2人目の新大関。稽古場で培ったかち上げが“必殺技”であるならば、先代師匠にたたき込まれた「素直な心」は精神面における、まさに最大の武器ではないだろうか。

「現状に満足しないで向上心を持って上を見たい」

 心身ともに強力な武器を携える27歳の新大関は、角界最高位をもすでに見据えている。

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

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