錦織圭・独占インタビュー(前編) 冷静に見据える世界1位との距離

構成:スポーツナビ

“憧れ過ぎていた”フェデラーの存在

世界トッププレーヤーの一員となった錦織も、オフコートでは一転、自然体の青年に戻る 【坂本清】

 ロジャー・フェデラー。18回のメジャー優勝を誇り、35歳にして今なお世界を魅了し続ける“史上最強のオールラウンダー”は、錦織が幼いころから憧れてきた選手でもある。

 二人が最初にツアーで相まみえたのは11年秋のスイス・インドア。極東の小さな島国からやってきた当時世界31位の青年は、世界4位に果敢に挑むも1−6、3−6でストレート負け。2度目の対戦となった13年のマドリード・オープン、続く翌14年のマイアミ・オープンでは、ともにフルセットの末に金星をつかんだが、過去7度の対戦で錦織が勝利したのはこの2回のみ。直近の今年1月の全豪オープン4回戦では、第1セットを先取したものの、その後2セットを奪われる苦しい展開。最終セットまで持ち込んだが粘り切れず敗戦した。

 希代の天才と対等に戦うことは、どのプレーヤーにとっても容易なことではない。しかし、フェデラーを羨望(せんぼう)のまなざしで見続けてきた錦織にとっては、少し違った“難しさ”があったようだ。

憧れのフェデラー(左)と7度目の対戦となった1月の全豪オープン 【坂本清】

佐藤 1月の全豪オープンでフェデラーとフルセットで対戦したけど、その時はどう感じながらプレーしていたの?

錦織 最初は余裕で勝てると思ったけど、全然甘くはなかった(苦笑)。

佐藤 圭は16、17歳の若い時に(ラファエル・)ナダルやフェデラーのヒッティングパートナーをやらせてもらったりしていたよね。その人たちと実際に対戦するのはどんな気持ち?

錦織 最初の方はやっぱり気持ち的にすごく大変だった。“夢の人たち”に勝たないといけないというのがね。「勝ちに行く試合」と「ただやりに行く」試合はかなり大きな差があるから、「勝ちに行く」と自分に言い聞かせるのがちょっと時間はかかったかな。

佐藤 憧れ過ぎていた?

錦織 うん。

プライベートでも親交の深い二人。食事を取りながらの会話も弾む 【坂本清】

佐藤 ちなみに好きな選手は、ヒチャム・アラジ(※注)でしょ?

錦織 ハハハッ! よく分かっているね(笑)。

佐藤 だって、僕も好きだったよ。

錦織 うそ!?

佐藤 圭も好きだと知って、「わぁ、アラジが好きなんだ! 一緒だ!」と思ったもん。憧れの選手の中でも一番見ていた選手は? 

錦織 やっぱりフェデラーかなぁ……。今も(プレーを)見るしね。

 プロに転向して10年。今や“夢の人たち”と肩を並べるまでに成長した錦織は、どんな未来図を描いているのか。後編では錦織が見据える将来像に迫る。

(※注)90年代〜2000年代に活躍したモロッコ出身のテニスプレーヤー。変幻自在にボールを操る芸術的なプレーが特徴。07年に現役を引退。
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5月20日(土)〜6月24日(土)毎週土曜日AM10時配信

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