イチロー3000安打セレモニーの裏側 功績は手渡しサイズに収まらず

丹羽政善

少ないスタメン機会が続く今シーズン

セレモニーではソフトバンク球団の王会長もメッセージを寄せた 【写真は共同】

 さて、その日の試合では6回に代打で登場すると、イチローは四球を選んだ。それが、4月最後の打席となり、4月は27打数4安打、打率1割4分8厘と寂しい数字になっている。スタメン出場はわずかに3回。ジャンカルロ・スタントン、マルセル・オズナ、クリスチャン・イエリチの3人の外野手が好調で、けがもない。クリーンアップを打つ彼らを外す理由もなく、イチローは厳しい状況に身を置いている。

 皮肉なもので、イチローが今、先日対戦した古巣のマリナーズにいれば、おそらくレギュラーではないか。

 2012年7月にマリナーズからヤンキースへトレードされたとき、「20代前半の選手が多いこのチームの未来に、来年以降、僕がいるべきではないのではないか」とイチローは話し、世代交代を自ら受け入れた。しかし、それ以来、マリナーズは1番打者を固定できず、外野は毎年のように顔ぶれが変わっている。今はけが人もあって、レギュラーが定まらず、内野手を外野に回したりしながら凌いでいる状況だ。さすがにイチローも、そこまでは見通せなかった。難しいものである。

 もちろん、まだ4月が終わったばかり。マーリンズも今後、何があるかわからないが、3人のレギュラーが健在である限り、イチローがスタメン出場するのは敵地で行われる交流戦というパターンがしばらく続くのかもしれない。

 ところで、セレモニーがあった日の試合後、クラブハウスにひょっこり、球団売却問題で渦中の人となっており、メディアの取材を避けるためか、しばらく姿を見せなかったロリア氏が現れた。

 すれ違いざま、「いいプレゼントでした」と声をかけると、聞こえなかったのか、そのまま通り過ぎていったが、やがて振り返ったロリア氏は、「そうだろ?」とでも言わんばかりに、笑みを返した。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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