ディープ超えた春盾、武豊「本当に強い」 異次元キタサンブラックにサトノ陣営白旗

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ルメールお手上げ「キタサンが強かった」

早め先頭から影も踏ませぬ推し切り勝ち、驚愕のレコードタイムと合わせてまさに異次元の競馬だった 【スポーツナビ】

 この馬だから耐えられる――天才ジョッキーが絶対の自信を持って挑んだ超ハイペース戦。2ハロン目から6連続で1ハロン11秒台のラップが並んだ後、さすがに2週目の2コーナーからいったんはペースが落ち着いたが、それでも1ハロン13秒台は1度だけ。12秒台のラップが続く依然として厳しい流れの中、3コーナーの下りを利用してさらにペースアップさせ、レースを再び激流へと変えたのが武豊だ。

 バテたヤマカツライデンを早々にパスし、4コーナーから直線入り口手前では堂々の先頭。早過ぎる仕掛けとも思ったが、これは“来るなら来い! それでも俺たちは勝つ”という、武豊の絶対的な自信に裏打ちされた他馬への挑戦状。もちろん、このまま指をくわえてばかりいられない後続勢は一斉に襲い掛かるが、これほど息つくヒマもないペースの中で、体力を削られていったのはむしろ中団から末脚にかけていたグループだったのだろう。キタサンブラックは影も踏ませず、これをすべて返り討ちにしてみせたのだった。

「本当に強い」武豊も舌を巻くレースだった 【スポーツナビ】

「今日は本当にタフだったと思います。各馬がいっぱいになってしまうようなレースでした。その中で粘り通してくれるんですから、本当に強いなと、心から思いましたね」

 超ハイペースを2番手から押し切った内容に加えて、このレコードタイムはまさに異次元。完勝、というひと言では到底片付けられないほど、キタサンブラックが恐るべき強さを見せ付けたレースだった。武豊が「本当に強い」と、言葉に力を込めたのも頷ける。

「相手が強すぎた」サトノダイヤモンド陣営もこの日ばかりは白旗を上げるしかなかった 【スポーツナビ】

 そんなキタサンブラックを最大のライバル、サトノダイヤモンド陣営はどう見たのか? 返ってきた言葉はルメール、池江調教師ともに「相手が強すぎた」という、潔い完敗宣言だった。今回は枠順の内・外で有利不利もあったと思うが、「枠がどうこうではなく、相手が2つも3つも上」と池江調教師は白旗を上げ、ルメールも「内なら2着はあった」と言うにとどめたあたり、どう転んでもこの日のキタサンブラックには勝てなかったということだろう。2人の言葉が、この日のキタサンブラックがいかに強かったか、そのことを鮮明に浮かび上がらせている。

凱旋門賞へまた前進も、まずは宝塚記念

歓喜のガッツポーズ! 北島三郎オーナー(中)は「フランス語を勉強しようと思います」、左は清水久詞調教師 【スポーツナビ】

 こうなると、ますます現実味を帯びてくるのが凱旋門賞(10月1日、シャンティイ競馬場2400メートル芝)への挑戦であり、期待が高まるのが世界一の芝レースにおける日本馬初の勝利だ。北島三郎オーナーが改めて、凱旋門賞挑戦への思いを語った。

「本当は、自分の可愛い“息子”を遠くの知らない空の下へ連れて行くのはつらいんです。でも、武さんが乗ってくれるなら、そして皆さんが応援してくれるのなら、フランスへ行ってみるのもいいんじゃないかなと思っています」

 だから今日からフランス語を勉強しようかな、と冗談も交えながらさらに一歩踏み込んだ凱旋門賞挑戦への可能性を明らかにしたサブちゃんだったが、その一方で「夏までの状態を見て、良い状態だったら」とも付け加えているように、まだ正式決定ではない。清水調教師も、次の目標は宝塚記念であり、凱旋門賞は秋シーズンの数ある選択肢の1つ、と述べるにとどめている。そこは武豊も思いは同じだった。

「当初の予定通り、夏が終わってから秋のことを考えるのかなと思います。まだまだ色々な選択肢があると思いますし、その中の1つにフランスがあるんだと思っています」

凱旋門賞へ期待が高まるキタサンブラック、だがその前に宝塚記念を目標に 【スポーツナビ】

 この天皇賞・春であまりにも強い競馬を見せてくれたために、むしろこちらの方が前のめりになってしまいそうだが、陣営はいたって冷静。この人間側の自然体の姿勢こそがキタサンブラックの強さにもつながっているのだろう。

 サトノダイヤモンドへのリベンジを果たした今、次なる目標は昨年3着に敗れた宝塚記念の借りを返すこと。名実ともに文句なしの現役最強馬がさらに勲章を加えていざフランスへ――そんなシーンを2カ月後の阪神で期待したい。

(取材・文:森永淳洋/スポーツナビ)

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