石川祐希をレベルアップさせた武者修行 技術とメンタル、両面で増した安定感

柄谷雅紀

レセプションに大きな手応えを得る

石川が最も手応えを感じているのはレセプション。実戦でも多くの強烈なサーブを受けた 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 石川が最も手応えを感じているのはレセプション(サーブレシーブ)だ。日本代表では、慣れない外国人選手の強烈なサーブで狙われ、崩れてしまうことが多かった。しかし、セリエAでは強烈なサーブが日常的に飛んでくる。試合だけでなく、普段の練習中からだ。ラティーナにも強烈なサーブを打つチームメートが多くおり、練習中からそれを受けていた。チーム事情からリベロで出場した試合も3試合あり、実戦でも多くのサーブを受けた。

「常に速いサーブを受けていたので、(15年の)W杯では(サーブで狙われて)大幅に崩れることも結構ありましたが、そんなに崩れることはなくなりました」

 帰国後、大学リーグに出場した後にはこう口にした。

「ジャンプサーブは、球が遅く見えたりする。イタリアで(試合に)出ていた経験があったので、ちょっと変わったかなと思います」

 ピンチサーバーでの出場となった1試合を除き、レセプションに参加した12試合で受けた本数は205本。その1本1本が日本では得難い経験値となった。

石川を指導する中央大の松永理生監督は「メンタルに左右されなくなったと思います。前も頼もしかったけれど、さらに頼もしくなった」と技術面だけでなく、精神面でも成長したと話す。

 石川は変化の理由を、高いレベルで常にもまれてきたからだと言う。守備では速いサーブやスパイクを受け続け、攻撃では高いブロックを日常的に相手にしてきた。「『耐えて、耐えて、耐えて』というような感じなので、メンタルが鍛えられた。本来のポジションじゃないところもやって、さらに鍛えられました」。それは、試合でどんなことが起こっても動じない精神力となった。

「(精神面が)すごく変化したとは思わないけれど、『どうしよう』と思うことがなくなりました。しっかり構えられるというか、簡単にぶれない。安定感が増したと思います」

20年東京五輪の目標は「メダル」

東京五輪での目標を「メダル」と公言している石川。今後どんなプレーを見せてくれるのだろうか 【写真:アフロ】

 もちろん、課題も見つけている。高いトスの決め方や、フェイントや軟打などの技術の向上、レセプションのさらなる安定感、レセプションをこなしつつ、攻撃での存在感をもっと増すこと――。こうした取り組むべき課題を自分自身でしっかりと把握している。これまでは攻撃で目立ちがちだった日本代表では「ディフェンスが売りの選手になっていきたい」と進化を狙っている。

 セリエAとはレベルが異なる日本の、それも大学リーグで、いかにプレーの質を維持するかという課題もある。だが、2度目となったイタリアでの4カ月間の経験は、間違いなく日本のエースをレベルアップさせた。

 石川の目標は高い。今はまだ、世界の中で選手としての立ち位置は「真ん中あたり」だが「スパイク、レシーブなど全てがこなせるプレーヤー」になり、トップ選手になることを目指している。そして、20年東京五輪での目標を「メダル」と公言する。

 6月からはワールドリーグが始まり、7月には世界選手権アジア最終予選、そして9月にはワールドグランドチャンピオンズカップも行われる。イタリアでの武者修行を経て、どんなプレーを見せてくれるのか――。今季も石川から目が離せない。

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著者プロフィール

大阪府出身。中学からバレーボールに打ち込み、大学は筑波大でプレー。全国紙で5年半の事件記者を経た後、スポーツ専門の記者に。現在はバレーボールを中心に取材活動中。プロ野球やJリーグの取材も経験した。

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