チェルシーに勢いを与えたFA杯準決勝 ディテールの差を見せ、トッテナムを撃破
得点は両チームともスーパーゴール
精度の高いクロスでゴールを演出したエリクセン(白) 【写真:ロイター/アフロ】
後半7分の2点目もすごい。中盤の右サイド、低めの位置でエリクセンがボールを受け、アーリークロスとスルーパスの中間のような鋭いボールをGKとDFの間へ。ボールはくくっと曲がり、ファーからデル・アリが飛び出し、難しいショートバウンドに滑り込みながらゴールネットを揺らす。ファーに流れるデル・アリは警戒されていたが、それでもこじ開けたスーパーゴールだった。エリクセンに対しては、マティッチがゆっくり寄せていたが、まさかこの位置でこれほどの脅威になるとは、思っていなかったのだろう。とんでもないクロスの精度だ。第20節のリーグ戦を含めて、トッテナムがチェルシーから挙げた4点は、すべてエリクセンのクロスだった。
チェルシーがしっかりと対策しても、こじ開けて2点を奪ったトッテナムの攻撃力は目覚ましい。一方のチェルシーも、1点目のウィリアンのFK、4点目のマティッチのロングシュートはファンの腰を浮かせた。お互いに2点ずつのスーパーゴールだ。
勝負を分けたのは小さなミス
リーグ残り6試合を「ファイナル」と位置付けるコンテ。トッテナムを破って勢いを得た 【写真:ロイター/アフロ】
前半43分のPKにつながるシーンでは、トッテナムは左ウイングハーフに入ったソン・フンミンが、間に合わないタイミングで軽率なスライディングを、ペナルティーエリア内で仕掛けてしまった。モーゼスの転び方には意図を感じるが、しかし、接触があったのは事実で、PKでも仕方がない。FWが最終ラインで守備をすれば、このような事故が起きるリスクはある。トッテナムは、ソン・フンミンのサイド起用が裏目に出た。
後半30分のチェルシーのCKでも、こぼれ球に対し、ペナルティーアーク辺りで蹴り込んだアザールに寄せ切れなかった。トッテナムのCKの守備は、前線にカウンター要員を置かず、フィールドプレーヤー全員で守っていただけに、この守備は漏らしたくなかったところ。この時間帯に迎えた1本目のCKで、お互いに選手交代もあり、すきが生まれてしまったのだろう。
頂上対決と呼ぶにふさわしい、スーパーゴールの応酬に舌鼓を打ったが、最終的に4−2の差を生んだのは、小さなミスだった。
トッテナムを破り、FAカップ決勝進出を決めたチェルシー。ターンオーバーを成功させ、ライバルをたたき、この大一番をモノにした価値は大きい。コンテはリーグ残り6試合を「ファイナル」と位置付ける。取りこぼしが許されない終盤戦に向け、貴重な勢いを得た。